「……どうするの?まさか正面突破とは……いや、い、いけるかもね……?」

「タマもいるからな。多分いけるだろうけど、何があるか分からねえし……あまりリスキーな行動は選択したくねえ」

「……そっか」

「今回ばっかは、お前のその秘密道具の数々も日の目をみるかもな」

「夜だし、多分日の光みたいなのをみるのは私たちだと思うけどね」

「冗談吐ける余裕あんなら大丈夫だな」

ティアがリュックをひっくり返すと、いつもの爆竹、煙玉、癇癪玉が転がり出る。
そして、ティアにしては珍しく、使い捨ての魔導書も数冊出てくる。簡易ヒールの書、マナ水が利かなくなってからはこれがないと傷を癒すことができない。
それから、魔力吸収の書、おやつをはじめとする食料などなどが顔を出した。

「お前が魔導書なんて珍しい……てか、そんなのいつの間に?」

「ユウの分だよ。私は使うつもりはないよ。
ユウの魔法は殲滅用としては燃費が悪いじゃない、基本オーバーキルだから」

「心配いらねえよ!……と、言いたいところだけど、ありがたいな。初っぱなから大火力が必要になりそうだったからな。
……作戦がある」

「あると思ってた」

ティアのリュックのサイドポケットからメモ帳とペンとマジックフェアリーを取り出したユウが、ゴブリンの砦の適当な見取り図を描きつつ説明を始める。

「まず、あの砦、入り口?出口?……まぁ、どっちでもいいけど、それが一つしかないだろ?」

メモ帳に、大きくC型の外壁が描かれ、Cの丸が切れてる部分に矢印が書き入れられる。

「つまり、進入はそこからのみ……?」

「とはならないだろう?俺には風魔法があるし、もっと言うと、土魔法で足場も作れる。
それにお前なら砦を囲ってる丸太をぶっ壊すぐらいも難なくできるだろ?
入ろうと思えば、どこからでも入れるよ」

「なるほど」

「でも単純にそうすると騒ぎが大きくなって面倒だ。俺たち側としては、あまり労力をかけずにできる限り多くのゴブリンを殲滅したい」

「となると、やっぱり……あまり多くのゴブリンを相手にしないために…戦闘の中心はここ?」

ティアがユウからペンを取り上げると、ユウが書いた矢印をまるで囲った。
砦の入り口は規模の割には狭いため、出てくるゴブリンを確実に仕留めていけば囲まれたりする可能性は減る。
が──

「そうだな。しかしそれじゃ俺たちは少しも油断ができない。なんでだと思う?」

「なんで?」

「……櫓」

「そっか、櫓があるってことは、そこに弓とか魔法の遠距離攻撃を担当するゴブリンが配置される可能性が高いって事だもんね……!」

「おう、そうだ。
入り口にとどまってちんたらちんたらゴブリン狩りをしてたら、俺たちは弓や魔法の雨で狙い放題。
だから、あえて内部から攻めようと思う」

今度はユウがCの中に、いくつか櫓に相当する□を描き入れ、Cの閉じてる方から矢印を書く。

「内部って!そんなの、囲まれちゃうじゃない!
それとも何!?ユウが囮にでもなるつもり!?だめだよ!」

「ちょっ…落ち着けよ!
乱戦を避けようっつう基本方針は一緒!やるべきは相手の戦力の分断だ!」

「分断って……?」

「いいか、まとめるぞ。
乱戦を避けつつ、弓兵をしとめつつ、一匹も逃がさず、且つ内部から!」

「うん、そのために?」

「そのために、ここにタマを配置する」

Cの切れ目の入り口に、雑な獣の絵が描き入れられた。

「タマを囮に!?」

「大丈夫だ、入り口から流れ出る程度の数のゴブリンならタマでも……つか、タマは囮と言うよりも蓋だ。ゴブリンが一匹も逃げ出さないようにするためのな。
入り口に視覚的にも最も威圧感のあるタマを置いて、ゴブリンが逃げ出さないようにする。
万一逃げ出されても、タマの鼻と脚があればすぐに追いついて潰せるからな」

ユウがタマに一言「できるか?」とだけを確認をとると、タマは一つ、鼻息を噴いて、ユウの顔面を鼻先で殴る。

「ぶへっ。大丈夫そうだな」

「じゃあ……私たちは……?」

「そうだな、入り口でタマが暴れてくれれば、当然ゴブリンたちの意識はそっちに向いて、入り口付近にゴブリン達は集結するだろう?」

「うん」

「そこで裏から入ったお前が、内部で混乱しているゴブリン達をさらに攪乱するんだ」

「ふむ、それなら……ユウが使うって言ってた大火力の魔法は……」

「そう、ランスオブリリーナ。
本当は、ゴブリン達にバレねえ距離から一匹ずつこいつで焼くだけの精度があればいいんだけど……残念ながら俺はそこまで射撃に自信はねえ。
あともっと言うと火炎魔法が一番楽なんだろうけど、山火事なんてごめんだからな、火気厳禁で」

「……ランスオブリリーナで櫓を一度に全部ってこと……?
できるの?ユウ……」

「やるしかねえだろ!
……なるべくゴブリンが全部櫓に集まってから落としたい。且つ、弓もできればほとんど撃たせたくはないからな、準備が出来次第、全ての櫓を同時に一度で落とす。
お前は櫓の下敷きになったり、ランスオブリリーナそのものに当たらないように気をつけながら動いてくれよ」

不安そうな瞳が、マジックフェアリーの明かりに照らされて揺れる。
作戦は、タマが入り口を塞ぎ、ティアが攪乱と殲滅を担当し、ユウが櫓や遠距離攻撃を担当するものを破壊するという形に落ち着いた。
しかしそこで問題が出る、ユウの魔力の限界だ。
櫓を一撃で落とす破壊力のランスオブリリーナを同時に櫓と同じだけの数で放つ。ユウの魔力の放出量を知るティアからすれば、少しばかり彼の提案は無謀であった。

「……そんな顔すんなって、少なくともメテオール乱発よりかはマシさ。なるべく低燃費で櫓を落とした上でお前の魔導書もありがたく使わせてもらうよ、魔力切れに関しては心配要らん、工夫するから」

「そう……」

「作戦はここまで!あとは各自アドリブで頼むぜ!
弓兵は櫓が崩壊後最優先で殲滅……っても、ゴブリン程度なら、櫓が崩壊した時点で虫の息だと思うけど……まぁ、あれだ、妙な情けはかけるなよ。生きてるヤツがいたら全部トドメを刺せ。
そうすれば、残りは接近戦だけで済む!俺も櫓を破壊した後は殲滅に移る!
……それじゃ、健闘を祈るよ!」

ティアが頷いた。
タマも頷いた。
そして、ユウが頷いて、二人と一頭は崖を降り、遠くに聳えていたゴブリンの砦を目指した。
──人間達による、亜人種の虐殺が始まる。
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