眉尻をつりあげ、下顎をつきだし、ローブの袖に腕を通した魔法使いは言う。

「……っ!……お前は…ほんとに……。
とりあえず食え!!
要はこれから動くってんだろ!?『腹減ってました』で足引っ張って見ろ!ぶっ飛ばすぞ!」

「……ユウ……!」

「お前が理由もなく駄々こねたりする事なんてそうそうねえからな……聞くよ。
ただしだ、今のお前はどう見ても冷静じゃねえ!
落ち着いてから話せよ!それに──

「アルマがせっかくつくってくれたんだもんね…!」

──そう、それだ。俺はとりあえずカレー温めてから準備にかかる!食いながら簡単に吐け」

びっ!とひとつティアを指さし、台所へと向かったユウがカレーを温め始めて、ティアは食卓について一息つく。
室内にこもっていたスパイスの香りがより一層濃さを増し、ティアの判断力を戻していく。同時に空腹感もかき立てる。
数分ほどでその匂いの元は彼女の目の前にコトリと置かれ、向かいについたユウも冷めたカレーをかき込む作業に戻った。

「それで?何で急にそんなに慌てたんだ?
契約がふざけてるってとこまでは聞いた。それからキノコはそもそも存在してねぇ。いいな?
もぐもぐ」

「あぁ…ごめんね、わかってる。
もぐ……おいしい……!!あ、人参が星の形になってる!」

「おい…わかったから食いながら話せよ…」

「そうだ…!
……それがね……──

ティアが聞いた話──契約の内容──は『集落で最も力を持つ者を生贄としてゴブリン側へと差し出す』というあまりにも非人道的なものであった。
ここまでを民家の外で聞いたティアは、真っ先に『アルマ』と『契約』の点を線で結んでしまい、耐えきれずに突撃してしまったのだ。
血相を変えて怒鳴り込んできたティアにたじろいでしまった民家の人間は、無言の殺気に半ば脅される形で彼女へと全てを話した。
民家の人間が言うには、実は以前にも契約は結ばれたものの、その契約は集落側によって破棄されたという。ティアは前回の契約についてさらに詳しく聞き、愕然とした。
以前の契約によって生贄に出された集落の人間が『アルマの母親』だったのだという。さらにおぞましいことに、アルマの母親を生贄としたことを長老をはじめとする集落の人間はアルマとアルマの父親には黙っていたという。はじめは神隠しだとか、事故だとかで嘘を押し通そうとしたものの、ふとしたことで嘘がアルマの父親に見破られ、真実を知り、激昂したアルマの父親は仇をとりに単身でゴブリン達の巣へと攻め込んだ。
結果は惨殺。アルマの父親はゴブリン達に手も足も出ずに殺され、後日、契約の解除を言い渡しに来たゴブリン達によって遺体は集落へと『返された』という。例により、集落の人間はこの一連の出来事をアルマには隠し通して今に至るようだ。

──……ってのが、私の聞いた『契約』について……だよ」

ユウの手が止まっていた。
手だけではない、豆鉄砲を食らった鳩のような、または金魚鉢を泳ぐ魚のような表情のまま、ユウはゆっくりと息をのんだ。
ただ静かにスプーンの先を見つめたユウは、ただ静かに事実の確認をティアへ。

「じゃあお前……その話が本当なら……次の……生贄って……!!」

神妙な面もちで、少女は頷いた。
長く共にいるからわかる。嘘をついていないティアの様子に、ユウは歯を食いしばる。
長く共にいるからわかる。ユウの現実逃避を潰すための言葉をティアは落とす。

「確認したよ。
明日、アルマはゴブリン達に……いや……『集落の人間に』殺される……!」

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