「……再契約……?
って言ったよな……今……」

うん、言った。
あれは人語に似た響きのゴブリン語だったりはしないでしょうね、まさか。

「再契約ってことは、前になにか契約をしてたってことかな?
……アルマちゃん?」

それはそうだ。私は当然のようにアルマちゃんの方を見ながら問いかけてみた。
私とユウから熱視線を受けるも、アルマちゃんは小難しい眉毛で唇を尖らせて虚空を仰いでいる。
心当たりがないらしい……。

そうなれば、あとは黙ってゴブリンたちと集落とのやり取りを見守るのみだ。
集落の男の人たちの一人が鉄仮面をそっと……ってあれ!長老じゃないの!
あの人いい歳してゴブリンと戦ってたわけ!?
いや、いい歳っていっても、私は長老の歳知らないけどさ……。
鉄仮面を降ろした長老が、集落の人たちの中から一歩前へ出、ゴブリン達と向き合って、あごひげを撫でながら人語型隊長ゴブリン(仮)に言った。

「……内容は……?」

長老の声は、悟っていた。
声だけじゃない、ここから見える後ろ姿からですらも感じられる仕草や様子からしても、そこに見えたのは理解と覚悟。
長老は、きっと内容を知っていながら聞いてるみたいね……確認……か。

「前回と同じさ!
この集落で一番……」

歪んだ笑みを浮かべた隊長ゴブは、長老からの問いに対してさも当然だとでも言いたげに下顎を持ち上げつつ、集落の人々を左から右へと視線で撫でる。
そして最後、通り抜けた視線が少し戻り、私とユウの間、アルマちゃんで止まったところで続ける。

「……フェイクは受け付けねぇからな。
まさかあれだけ俺たちとやり合ってながら隠そうなんて思ってねえっすよねぇ…───長老さんよ?」

その声に一瞬、長老の肩が強ばったように見えた。
それから長老は額に手を当て、落胆した様子を見せた。
集落の人たちは、ゴブリンの言う『契約』という言葉に反応して以来、ただただ、静かにざわめいている。
ここまで長老の舌打ちが聞こえる、ずいぶん大きな舌打ちをしたみたいね……。
みんな、なにをさっきからそんなに……不気味……。

「……三日後。それまでに結論を出す。
もし、お前等がいいというのならば『次善策』を我々の方からも──

「おっと!次善策!?本気かよ長老さん!
わりぃけど、あっしらはそんなのに乗せられる気はねえでっせ!?
いいか!契約の内容は前回と一緒!それ以外は認めねえ!!
契約が結ばれたら俺たちはここを縄張り内に置いておくことを許そうってんだよ!」

「……この……貴様等は……!!」

「勘違いしねえで欲しいねぇ、あんたらは生かされてんだよ。俺たちゴブリンに。
そんな立場なんだ、俺らに交渉を持ちかけようなんざ、ちょっとボケが過ぎるんじゃないすかねぇ?
……決まりだ!三日後!またこうして出向いてやる!
三日後、契約の締結がされたら実行は五日後!こっちにも準備ってもんが必要だ!詳しくは契約締結後にゆっくり話そうぜぇ!
話すっても、てめぇらに文句は言わせねえぜ!?
それじゃ、いい返事を待ってますぜ?長老さん?
ヒッヒハ!」

ひとしきり、なんだか感じの良くないことを吐いていくと、ゴブリンたちはまたゲヒャゲヒャいって、ぞろぞろと集落を出て行った。
……え……なに、この空気は……?
契約の内容はよくわからないけど、契約さえ結べば集落の安全が約束されるって話だったんでしょう……?
それのなにがこんなに重苦しいわけ?
集落の人たちの様子がおかしい。長老はいまだ、ゴブリン達の背中を眺めているし、その後ろでは若い男の人達がなんだか怒ったり悔しがったりしてる……。

「……ねぇ、ユウ……?」

思わずユウを見ちゃったのはきっと、ユウの反応が欲しかったというか……安心したかったからなのかもしれない。
今集落にあふれる雰囲気がちょっと、それぐらいにアレだし…

「……ふーん。
みんなの様子見る限りじゃ、相当集落側に損な契約らしいな……。
ともあれ、とりあえずゴブリンは追い払えた……?
いや、勝手に帰っただけか……」

意外とユウの方はあっさりしている。
思惑通り、私はちょっと安心できたよ!

「……この辺の問題は集落とゴブリン族との問題だろ?
俺たちが心配するこったねえよ。
だからとりあえずその残念顔やめろよ、せっかくアルマに会いに来たんだからさ」

……もっともだ!
そう、ユウのこういうところ!
相棒で良かったと思えるところ!

「──そうね!ごめん……。
こんにちは!アルマちゃんは怪我は……なさそうね。
ごめんね、ゴーレムいっぱい壊しちゃって」

「いえ、それは……」

少し困った感じが残ってはいたものの、アルマちゃんはもじもじしながらうれしそうにしてくれた。
よしよし、お姉ちゃんが可愛がってあげよう!

──その後、私たちは再度長老宅へ招かれて、再度お話出来る機会を得ることとなった。
小難しい長老の話はユウに任せるとして……っていっても、ユウも集落の問題には深く首を突っ込む気はなさそうだし、真面目に話は聞かないかもね!

うれしそうなアルマちゃんに手を引かれるままに、私と、タマを抱き上げたユウは長老宅へと向かう。
テンション上がっちゃったのかな?ナチュラルに握られた左手に感じた重みに、少し耳が熱くなる。

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