やった!アルマちゃんの出した人形の繰り出した大振りな攻撃を避けることもいなすこともままならないままに、かけてきたゴブリンたちがいとも簡単に激戦区へ弾き返される。

「……すごい!あれ!アルマちゃんの言うことを!?」

「はい…ゴーレムたちが守ってくれる内は安心です……。
あ!それよりティアさん!どうしてここへ!?
さっき降ってきた人影は……ユウさんでしたよね…?」

依然として、集落の人たちとユウ達は暴れ回るゴブリンたちを片づけようと暴れ回っている。
どう見ても優勢。タマとユウもいるんだ、心配する必要はないとはおもうけど、アルマちゃんは苦いような、困ったような顔で激戦区をちらちらと見ている。

「そ、さっきの黒いのと氷の魔法はユウ!
それから、あの白い狼はタマだよ!」

「え!?タ!タマちゃん!?うそ!?」

至極素直でふつうな反応だね、私もあのタマを初めて見たときは森の神様の類のなにかと勘違いしたぐらいだし……ね。
相変わらずタマはぐるぐると激戦区のなかで暴れ回っている。
海賊退治の時のように、不思議なほどにゴブリンだけが弾き飛ばされている。
ユウはというと、集落の人が急に動けるようになったことに困惑しているのか、魔力をためては杖を降ろし、キョロキョロしてはまた杖に魔力をためたりと、全く役に立っていない。
私といえば言うまでもない、もう突っ立ってるだけだ。

「うん、かっこいいでしょ?タマ!
なんでここにいるか…だっけ?
そう、遊びに来たよ、アルマちゃん!」

「え…?遊びに……?って、こんなところまで!?朝、街まで降りたのにすぐに!?
はやい!」

きらきらとしたまん丸な目が大きく、私へと向けられる。
相変わらず素直な反応が可愛らしいわね……連れ去っちゃいたい……と、いいたいところだけども……ね。
現状、アルマちゃんの魔法とゴーレムでもって守られている集落。
さっきのゴーレムをだしたタイミングの完璧さ、それから、今こうして私と普通に話していられるほどの余裕。

「なにもないけど……ぜひゆっくりしていってくださいね!」

そう、この余裕。
合点がいったね、長老がアルマちゃんを集落から放したがらなかった理由はさっき私が感じたものと同じ。
それから武器の様子と集落の人たちの様子からしてもやっぱり──そうだ。
ゴブリンの襲撃は日常茶飯事。そして、その集落の要塞になっているのがこのちいさなちいさな魔法使い──アルマちゃん──ってことね。
現に私たちが街まで降りてから戻ってくるまでの短い間にでも集落はゴブリンに襲われている、私たちが今朝アルマちゃんを街まで降ろしていたら、きっといま集落はこのゴブリンたちに苦戦を強いられていたでしょうね。

なんて考えている内に、またもゴーレムが全て破壊された。
慌てた様子で声を上げてバタバタと魔力をためはじめたアルマちゃんを制した。
この状況でああも簡単にゴーレムを破壊できるのなんて……決まってる。

ほら。
ゴーレムの破片の中から巨大なタマが顔を出した。
背中にはユウが乗っかっている、その様子は焦ったような、あわてたような、食器を落として割ってしまった時の様な顔で激戦区を見つつ、ゴーレムの破片を払っている。
そして突っ立っている私とアルマちゃんを一瞥しつつ声を上げた。

「──っおい!なんだよこれ!てかティア!なんだよこれ!?おっさんたち強えぞ!?」

「はい。お疲れさま」

戻ってきたユウにも事情と考察を説明した。
相変わらず集落の人たちはゴブリンたちと交戦中だけど、日常茶飯事ならば特別私たちが助太刀しなくてもどうにでもなりそうだ。
私たちはアルマちゃんに会いにきただけだし、ここで無理に力を振るってもかえって邪魔になりかねないしね、見守ることにしよう。
私の話を聞くなり、ユウは納得したような、驚く様子も見せずにただ生唾を飲み込んでいた。

「……そっか……強化魔法はともかく……あのゴーレムたちもアルマが…な……」

ユウがここまで神妙な様子で声を漏らすなんて珍しいほどだね……どうしたのかな?

「……アルマ……?
あのゴーレムたちって、今、アルマが『操っていた』のか?」

「……?
いいえ?ゴーレムたちは一度お願いしたら自分たちでがんばってくれますよ!」

「……ははっ……マジかよ……」

一瞬、ユウの顔から余裕の色が抜けた笑いが漏れる。
困ったような、信じられないと言った様子で私とアルマちゃんを交互に見やり、タマから降りた。
ついでタマの魔法も解いて、杖をしまいつつ、まずそうな顔ででこに指を置いて語る。

「……そっか……。
まさかな……。
結論から言うと、あの程度のゴーレムなら俺だって召還できる。しかももっと強い奴をな」

「なぁに?ユウ?負け惜しみ?」

いつになく抜けた様子のユウを、私は茶化して笑ってしまった。
でも、いつものユウなら呆れて首を振るなり反論するなりしてくるけど、今日のユウは違った。
ため息を一つと、首を振りつつ吐き出された言葉は惜しみのない賞賛。私も驚いた。

「……けど、俺の『出来ること』とは根本が違う。
俺が出来るのは、魔力で作った人形を操るだけだ。
けど、アルマのゴーレムは全く次元が違う……なにせ、一時とはいえど無機物を生き物に変える魔法だ……単なる人形劇じゃねえ。
魔力から生命を生み出すなんて……並みの魔法使いじゃ……ましてやその幼さで出来るわけがねえ……」

「……え!?なに?……どういうこと……?」

「………アルマは……『本物』だって言ってんだよ……下手したら、お前以上のな……」

「……まさか……!?」

きょとんとした様子でユウの顔を見上げて首を傾げたアルマちゃんに、今度こそユウは本当に小さな笑い声を上げた。
……ユウが……焦ってる……!めずらしい!
……嘘じゃないって……ことだね……。
私とて、昔は天才と呼べる魔法使いだったみたいだけど、それは特別魔法の知識やなんかがなかった人たちがすごいすごい言ってただけで、私もピンと来てなかった。
でも……アルマちゃんについては、この魔法バカなユウが……ちゃんとした知識と根拠をもった観点から吐き出した『天才』。
なるほど……なんか、すごそうだ……!

「……勘違いしてるかもしれねえけど、お前も相当あり得ねえけどな、ティア。
お前以上かもってのはあくまで可能性さ、俺だってお前以上に魔法を扱える人間の存在なんてお姉さん以外には認めたくねえよ」

付け足されたその言葉は今度は自信がなさげだった。

私たちが到着してからしばらく経つ。
もうすぐゴブリン達が折れそうだと感じた時だ──

──ゲヒガギャギゲギャギゲー!!!

みたいな、一際大きな声があがった!
いや、ほんとに。

弾かれるようにして、私もユウもアルマちゃんも、声が上がった方を見た。
その方向は激戦区だった方向だ。声が上がった直後から、急速に戦乱は勢いを無くし、武器がぶつかり合う音や大声が次第になくなる。
肩や手を互いに貸し合い、パタパタと退いて行くゴブリンたち。
集落の人たちは、そんなゴブリンたちを追うことも、駆逐する事もなく、ただ武器を構えたままその様子を眺めていた。

退きはじめたゴブリンたちは、十メートルほどで撤退を止め、またも武器を構えたままで集落に向き合った。
……まだやるつもりなのかな?

立ち止まったゴブリンたちの奥からは、なんだか怒ったような、喋るようなゲヒャゲヒャが聞こえてくる。
そのゲヒャゲヒャの主にヘルメットを叩かれたゴブリンが頭をこくこくと下げてもう一歩下がる。

怒鳴り散らすようにゲヒャゲヒャ言いながらゴブリン達の先頭にたった、一際頭の大きなゴブリンは、ほかのゴブリン達よりも見るからに良い武器や兜を装備していて、それが醸し出す様子からしても、どうやらゴブリン達の中でも上位の存在らしい。

──隊長?
イメージとしてはそれがしっくりくる。

集落の人たちの表情や、所々からあがる困惑の声から察しても……これは日常茶飯事ではないようだ。

一つ、風が吹き抜け、山の落ち葉が流れぬけたとき、それは確かに『喋り』はじめた。

「……ヒッヘヘ、すんませんね……!
今日はアンタらと争いに来たわけじゃなかったんすが、勘違いしたウチのヤツが……ヒッヒ!」

ゴブリン特有の甲高い声が耳に障ったけど……間違いない、あのちょっと偉そうなゴブリン、人語も扱えるゴブリンだ……!!

「今日あっしらがここにきたのは……『再契約』をしようと思って来ただけっしてね!
……契約内容は……言わんでもわかりますよねっ!」

『契約』という言葉に私が意外性を感じたのと同時に、明らかに集落がざわつきはじめた。


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