朝だ。
ふと目が覚めたときにはカーテンの隙間が白く光っていた。
右手に感じた暖かさがアルマちゃんの手だと気づいたときには私もさすがに驚いた。私は一晩中アルマちゃんの手を握っていたようだ。
その手をそっと離して起きあがろうとすると、布団の中で何かが引っかかった。
私のパジャマを引っ張っている、どうもアルマちゃんも一晩中私の服を掴んでいたようだ。かわいいなぁ。
アルマちゃんには服を掴ませたままにして、私は洗濯乾燥済みの鬼コーチジャージに着替えた。

────

私は打算的なできる女だからね!
今日はユウにわがままを言うために、『食』というユウの弱みにつけ込むことにした!

「……おはよ。
……お?なんだ?今日は朝から豪華じゃん……!」

私が台所で鬼コーチ特製朝食を鬼のように作っていると、早速右小脇にタマを抱えた平凡魔法使いローブが顔を出した。
左手をシャカシャカとせわしく動かしながらブクブクの口元のまま洗面所へと消える。そして戻ってきて、タオルでそのそばかす顔を磨きながらのぞき込んでくる。この鬼の調味料さばきをみるといい!

「……っはぁ……!
これは……!
味覚祭りの二次会!って感じだな!いつもあんがと。食卓周りは俺が準備しとく!あと、食器も洗う!」

「ありがと!
アルマちゃんも食べるからね!しっかりつくらないと!」

食いつきよし!
ユウはぽいっと床へとタマを降ろすと、ぱたぱたとタマ用の皿を用意して、自分の魔法で凍り漬けにしていた獣肉を火の魔法で炙っている。
涎を垂らしながら延々と尻尾を降り続けるタマに『まて』をしつつ、私の背中越しにユウは話しかけてくる。

「アルマは?」

「まだ寝てるよ。私ね、お母さんみたいだって!
よっぽど安心したみたいね、ぐっすり寝てたよ!」

「そっか、お前はお母さんっていうよりも、近所のドジなお姉ちゃんって感じだけどな…」

タマが待ちきれずに肉にかぶりついた!
へふんへふん!とか声みたいな咳?を出しながらばたばたしてる。どうやら炙りたての肉はタマには熱すぎたみたいだ。
ユウはため息を一つつくと、マナ水を取り出してそのまま炙り肉にぶっかけた!……男の料理……かな?悔しいけど、私以上に『鬼の調味料さばき』だと思う、それは。
というか、マナ水は調味料じゃない。

それにしても『お姉ちゃん』かぁ……やっぱり悪くない無いなぁ、ふふん!

「そうでしょう?お姉ちゃんっぽいでしょう?」

「なにどや顔してんだよ、誉めてねえよ」

「…………」

マナ水で濡れた肉をぺちゃぺちゃと必死に食べるタマはやっぱりかわいい。
変身してたら熱かろうとなんだろうと、あんな肉切れぺろんと食べちゃうからね…普段は小さいタマは無反応だけど、こういうときは小さいタマの方が表情豊かだ。

雰囲気はいい。
私はやる。ユウにわがまま言う!
………やるなら、今だ。

「そうだ、ユウ?」

「どうしたい」

「……あのね……?」

「おう……」

「……私ね……?」

「うん……」

「アルマちゃんと遊びたい!!」

「……おう。
その前に荷物取りに戻ろうぜ。荷物を街から回収したあとまたここに戻ってくる方向で!」

杞憂だった。
ユウは特に驚く様子もなく、反対する意思も見せず、ニコニコでタマの頭を撫でながら肯定した。
私は無意味に張り切って作った料理の数々を眺め、何となく損した気になる……豪華なのには越したことはないし、アルマちゃんも食べるからこの方がいいんだけどね。
ともあれ、もう少しここにいることができるってことは決まりね!
できればアルマちゃんも麓に降ろして街を連れ回したい!
………この件に関しては、長老に相談だね!

「どうせ降りるならさ、アルマちゃんも連れて行こう?
長老に許可とってさ!」

「……お、そうだな!
ここよりも街の方が遊べそうだもんな!
じゃあそうするか!きっとアルマもよろこぶぞ!」

そうして私とユウはこれから訪れるであろう楽しい一時へ向けて、期待を膨らませながら朝食の準備を進める。
せっかくだからサプライズにしようということで、長老からの許可を得るまではアルマちゃんには内緒にしておくことにした。

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