その集落の入り口は、本当に山の一部をそのまま利用してみたかのように、木々との境目が曖昧で、木々の中の開けた場所に不規則に家々を並べた結果、それがたまたま集落になったみたいな印象だった。
言ってみると、雰囲気は妖精の村やグリーンヴィレッジをぎゅーーっと地味にした感じかな?
山の中でも、この辺りの一帯はなだらかなみたいだね。ライラさんの家みたいな少し凝った木造住宅もしっかりまっすぐ建ってる。
そしてそんなまっすぐ建った家々の窓は、内側からの灯りで白黄色に光っていて、すでに日の落ちきった山中の中では際だって明るい。
間違いなく人が住んでいるみたい。……いや、人とは断言は出来ないのかな、まだ……。

「うっわぁ……まさかねぇ……こんなところが特定危険区域に……」

断言できない理由はもう一つ。うん……誰もいない……。
時間が時間だし、みんなご飯でもたべてるのかな?
とにかく集落は静まり返っていて、不気味とも、幻想的とも言える雰囲気でひっそりとたたずんでいる。
夜の暗さでそろそろ顔の判別もつかなくなりつつあるユウの方を見てみる。
ユウも驚いてるみたいだ、無意識にタマの頭に左手を置いたまんまで固まっている。

「おぉ、びっくりしたなー…普通に住んでんじゃん、人。
あの煙があがってたのは……あれは……え?武器屋……か?いや、鍛冶屋か?」

「え?武器屋さん……って、こんな特定危険区域の山奥に……?」

ユウの視線の先を追ってみると、そこには少し大きめの建物。
造りは入り口が異様に大きくなっいて、その入り口近くの壁や、窓の横なんかに大きめの剣や斧、弓、鈍器などか雑然と立てかけられている。
それから、建物の頭についてる大きな煙突がもこもこもこもこと煙を吐き続けていた。
なんとなくその様子からアイリの武器工房を思い出す。
想像されるのも、考えられるのも武器工房。でも、そんなのはどう考えても不自然だ、だってこんな山奥でしょう?
衛兵さんの話を聞いた限りでも、ここまで足を運ぶ人間なんてほとんどいないんでしょう?
商売は需要のあるところに成り立つ。需要のあるところには人がいる。人がいないと商売は成り立たない。
つまり、この集落に武器工房なんて置いたところであんまり意味はない。
わからないことがあったら、恥ずかしがらずにちゃんと人に聞く。これは大事なこと。
だから、私たちがこれからやることは──

「ユウ?なんか、この集落についての話ならあの武器工房?で話を聞くのがいいんじゃない?
あの建物だけ不自然だし、きっとあそこに住んでる人はここのこと詳しく知ってるよ」

別に私たちは集落について調べなくてはならないことなんてない。けど、せっかくこんな時間まで歩き回って見つけたんだし、好奇心を満たすぐらいのご褒美は欲しい。

だって、ねぇ……今、私とユウがなにより一番恐れているものは

「……そうだな、このまま帰ったらくたびれ儲けだしな。骨折り損。
よし、さっさと気になることは片づけて貸し出し厨房いこうぜ!」

そ!骨折り損のくたびれ儲け。それそれ。
だから、ここでくたびれ以外の、そうね、衛兵さん辺りへのお土産話ぐらいは儲けて帰って、気持ちよく秋味祭りだ!
煙の正体が秘湯だったりしたら嬉しかったのになぁなんて内心思ったのは内緒……!
秘湯じゃなかったのはちょっと残念だけど、集落ともあれば、多分秘湯よりも面白い話の一つや二つはあるよね!

「うん!魚の鮮度が落ちない内に済ませちゃおうね!」

歩き出したユウの白い背中と、タマの白いお尻を追って、集落の奥へと進んでいく。



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