普段から超長距離を歩いて旅する私たちにとっては、街から山までなんて散歩道の延長程度でしかない。ので、そんなに疲れないで到着っと。
今現在、私たちの眼前に広がる、草木が雑然と生い茂る坂道は秋の食料庫。
その入り口に私たちはいる。ここまで来たらもう、あとは駆る、苅る、狩る!
松茸椎茸ぶなしめじ!なめこにタケノコ銀杏も!柿梨に獣も山菜も!全ては私の籠の中へ!……おっと、栗も忘れちゃいけない。あと、川魚もきっとおいしい!……塩焼きね……!!
……でも、籠に魚入れるのってどうなんだろう……鮮度を保ちたかったら、ユウの魔法で即冷凍がいいかもしれないね。

で、冷凍要員の女々しき買い物かご、ユウはというと、私の隣で軍手とタオルバンダナを装着しなおしている。
普段は前髪に隠れがちな無駄に凛々しい眉毛がもこもこ動いてて、なんだかギャグだ。
いつにないどや顔で腰に手をあてたと思いきや、最高の笑顔で声を張り上げる。

……テンション、上がってきた……!

「いよぉーし!ついたな!ティア!ちゃんと全員いるか!?おら!点呼だ!
番号!いち!!」

「に!!」

「………」

「………」

「「……………」」

……まぁ、そりゃ全員いるよね…。
タマはまだ籠から出れないみたいだし、迷子になりようがないもんね……かわいそうに、さっきからカリカリカリカリ籠の内側を掻いてる。

「……で、どうする?ティア?」

隣で腕を組んで、山のてっぺんの方を睨んだまま、ユウが動かない。
心なしか、その表情には開き直りの色が見える。
ユウの得意技……かな?
ユウって、なんか問題起きるとまず最初に開き直る癖があるからなぁ……。
嫌な予感に、顔に力が入った。
あんまり聞きたくないけど…聞いてみよう。

「……どうするって、なにが?」

「……俺、山で秋の味覚狩りなんてしたことないんだけど…」

「え!?自信満々で準備してたくせに!ユウも初心者なの!?」

案の定、ユウはもう開き直ってたみたい。

──てか、いや、言い出しっぺがそれはないでしょ!!
そしたらなに!?キノコや山菜の判別もできなければ、タケノコの掘りかたも…それどころかどこに食べ物があるかも知らないってこと!?……そんなの…そんなんだからそんな女々しい籠を用意するようなことになるんだよ!?

「か!籠は関係ねえだろ!?」

「あっいや、籠はどうでもいいけどさぁ……」

声に出てた。
うん…早速出鼻を挫かれたわけだけど、打つ手が無いわけではない。ユウが気づいてるかはわからないけど……。

よくよく思い返してみれば当たり前か、そもそもアリエスアイレスの近くに秋の味覚を気軽に狩れるような山がなかったよね……ユウも同じ街に住んでたんだし、ましてや毎日のように顔を合わせてたけど、そんな遊びもした覚えはない。
あったのかもしれないけど、結果はこれ。それはそれ。
だから、こうなったら

「……まぁでも、私たちには心強い秘密兵器がいるでしょう?」

「秘密兵器……?」

ここで用意するべき作戦1。
そう、今、私の背中でカリカリしてる鼻の女王。

タマ。

この子なら、食べ物の匂いを見つけて案内してくれそうだ。

「……タマよ……!」

「………ん?
……おお!なるほど!」

やっと気づいたんだね。
全く、ほんとうに鋭いんだか鈍いんだか……

「さ!それじゃあさっそく行きますか!
タマを強化して!!ユウ!
賢いタマの『ここ掘れわんわん!』
さっそくお願い!!」

「おう!任せろ!!
……てか、タマ、吠えねえけどな……」

「いや、そこはさ『タマ、人語は話さねえけどな』じゃない?」

「……どっちにしても大人しすぎるよな……」


その後、無事にタマは強化され、私は無事に尻餅をついた。
そりゃそうだよね。タマ、ずっと籠の中にいたのにさ、籠の中で急に大きくなられちゃそうなるよね……。
幸い、籠は壊れなかったけど、籠の口から申し訳なさそうに頭を出した大きなタマに、私はユウと苦い笑みを合わせた。

私たちが、山にきて一番最初に感じた秋の味覚だった。


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