──────

帰り道、俺はずっと考え事をしていた。
言い訳というか、なんだ、あいつとどんな顔を合わせればいいのかわからなかったんだ。

青紫と黒だった月夜の森は緑や黄色の目立った朝焼けの姿を現し、生を実感させる。
心地の良い小鳥のさえずりや、昼型の獣や魔物の鳴き声も、澄み切った面白味もない空気には立派な飾り付けだ。

結局というか、やはりというべきか、俺は死ななかった。
そりゃそうだよな、魔法はむしろ呪われる前より調子いいし、通りすがりのハンターのおっちゃんに見てもらった結果、首のあざは綺麗に消えてるみたいだし……おっちゃんからもらったマナ水もよく効いたしな。
しかし愉快なおっちゃんだったな、それにあの魔導弓、普通の仕様じゃなかったけど使いにくくないのかな?
てか、なんであのおっちゃん魔導弓使いのくせにあんなにムキムキだったんだよ、引くのだって魔力が大きいウェイト占めるのに、あんな筋肉要らねえだろ。
そういやおっちゃんに魔物の最後の一匹を横取りされたよな…。
あの魔法……術式変だった。
でも、術式云々以前にやっぱり媒体って大事だよな……今までは杖か指輪か魔導書以外を媒体にする奴なんてみんな変態だと思ってたけど、おっちゃんの弓魔法の威力は凄まじかった。考え改めさせられる。
遠距離に関しては多分俺の魔法とは比べものにならない破壊力だったもんな、おっちゃんの魔法。
……それだけにな、やっぱり剣使ってたタマジローさんはわりと変態だったと思うけどな。あれははっきりいってあんまり必要ねえだろ。
タマジローさんは剣より杖をアイリさんにつくってもらうべきだよな、そうしたらきっともっと強力な、直接攻撃に使えるような風魔法使えるだろ、あの人。
なんだよ、あの見た目で踊り子って。
風で補助してたのはわかるし、たしかに速くて強かったけど……わかるけど。うん、そんなスタイル選ぶからビーストウォーリアなんて変な発想でてきてあげくは獣になんてなるんだよ。

おっちゃんの屈託無い笑顔を思い出しながら青空と葉っぱの下を歩いていると、気がついたときにはすでに街の目の前だった。
こんなときに限って道に迷うことはないんだよな、結局おっちゃんとタマジローさんへの考察が深まっただけでティアに用意すべき顔と言葉を考えることは出来なかった。
一瞬時間稼ぎと検証、説明係にと、ライラさんの家に向かってみるって案も浮かんだけど、あの小憎たらしい微笑みを思い出すにすぐさま薄ら寒さが背中を抜けきり、俺の足先を貸しだし住宅の方角へと向けた。
モココさんが調子に乗ってまだライラさんのとこに泊まってたらまたややこしい話になりそうだしな。
『ホッ…!ホモさんの亡霊!?大魔導師様には指一本触れさせません!実際触れることができるかはわかりませんけど!!アァアメェエエン!』ってな。知らんけど。
案外あの人、聖職者のくせにお化けとか怖がるかもしれねえしな。聖職者にあるまじきモココさんだし。
……つーか、そもそもティアに殴られた時に呪いが解けましたー、なんて、憶測であってもそんな話をあの人にしたら、次はどんな『実験』を用意されるかわかったもんじゃねえ。
メイプリルクールキャンディーやらメイガスエッジやら、今回はたまたまティアの気遣いが味方してくれただけでおそらく次はもうねーぜ。ふざけんな。

……考えはまとまらない。
一歩一歩、止まらない足は確実に貸しだし住宅へと向かう。
どうせわかってるんだ、あいつと─ティアと会うのに作った顔や考えた言葉なんて意味がないのは。
あいつは気にしないだろうし、見抜くしな。
きっと言うんだ、生きてたんなら何だっていいって。

………

……それでもやっぱり申し訳ねえよ。

朝支度でせわしい街を右へ左へと、朝っぱらからきゃいきゃいやかましい子供をみると、なんだか昔を思い出してほほえましく感じる。
今までなら俺たちも朝になったらああやって森の入り口に向かって…手合わせして……喧嘩して、バカやって。
それがあんなに大きくたくましくなってな……まさか俺のために数百年ものの生粋の魔法使い相手に魔法勝負挑むなんてな……ほんとバカだよ。
成長したんだか、変わらないんだか…。

慣れっていうのは怖いよな、俺は結局あいつにとれるべく態度を見つけることもできてなくて、なんか、顔合わせるのも申し訳ないはずなのに“堂々と帰って来ちまった”んだから。

ドアを開け、居間をのぞき込んでみると、そこには肩を震わせて食卓に突っ伏してるティアがいた。
いつもの元気なアホ毛は見る影もなく、やる気のなさそうに食卓へと垂れ落ちていた。

時々聞こえてくる嗚咽に、俺はやはりかける言葉を見つけることが出来なくて、そのまま動けなくなる。

そっとこちらへと向かって来たタマに、胸元に鼻先を押しつけられた。
やっぱりタマはなんだかんだいってもしっかりしてる。

ティアの隣へと戻ったタマは、そっとその肩に前足を置き、鼻先で、ふるえるピカピカ頭をつついた。
鬱陶しそうに起きあがった相棒に、ほっとしたような、訝しむような不思議な喜びが見えた。


──ユウが死ぬ夢をみた──


だっさい顔から放たれた、いっちょ前に洒落てる『お帰り』。

また、後で振り返るべき『今まで』が増える。
俺は生涯、この日のティアを忘れることはないだろう。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー 小説へ
読んだよ!

スポンサーサイト



コメント
ひーちゃん、読ませていただきましたがや~!

ユウ、よかった…・゜・(ノД`)・゜・
よかったねえ、ティアっち~~…゚(゚´Д`゚)゚
タマもよかったねえぇ~~ヽ(;▽;)ノ

『「今まで」が増える』って表現、ステキ!
ユウとティアにぴったり!(←あくまで私のイメージなのでお気になさらず(*´∀`*))
前に、今回の話引っ張りすぎてる感あるってひーちゃん言ってたけども、主人公サイドの生き死にのお話だし、引っ張りすぎなんてことはないと思いますです、ひろ隊長(`・ω・´)ゝ



おっちゃんはもしや、次話(次ステージ)へのフラグ…!?( ´艸`) ←スルーしてくだされw
2015/01/04(Sun) 22:58 | URL  | のん #-[ 編集]
Re: タイトルなし
のんちゃんこんばんはー!

やはり感想意見要望その他諸々、読者様の声はうれしい。+゚(*ノ∀`)
書いててよかったと思えるよね!声をいただけると!
ありがとうございます!

関係のない文章(大体は後述のつじつま合わせ)ズラーーーっからの、なるべく飾り気の無い落としを今回は意識してるよ!
そこに人物の精神状態を意識した!
ユウさんが関係ないことを考えつつも、何気にいち早くティアのところへ戻るのと、結局泣いてるところ見ちゃうとフリーズしちゃうとこ。
なんだかんだ、タマが潤滑剤として出張るところ。
各に行動をとらせるのに少し悩んだよ……(´`:)
ユウ視点だからね、戻ってきてからあんまり二人の行動とか味付しちゃうと、お芝居感というか、蛇足感というか…うん。よくないから最後めっちゃ薄味にしました!

『今までが増える』はあれね、書きながら読み返してて、唐突にユウが昔思いにふけってたから、ダジャレというか、前振り的感覚でぶち込んだww
即興だったけどうまくいってよかったよ(*´ー`*)

おっちゃんねー…。
迷ってる。いつも通りの『後で使えそうなもんとりあえずばらまいとけ』作戦だから、フラグと言えばフラグだし、ひょっとしたら使わないかもしれないし……現状未定です(笑)
それと余談だけど、今回、魔導弓っての急に出してみたはいいけど、以前にユウが『魔法使いったら杖、指輪、変わってても魔導書!』みたいなことすっぱり断言してたような気がしたから、つじつま合わせ必死だった(笑)
唐突にタマジローさん引っ張ってきたのも必死の結果。
ましてや、自負するほどに魔法に詳しいって豪語する主人公が、それっぽい魔法武器知らないってのもあれだからかなり無理矢理つじつま合わせした……。
余談も含めると、おっちゃんはほんとにわからないわwwwww

まあ、おっちゃんみたいな自由に動かせるの置いておくと後々詰まった時に楽だよね(ゲス)
ランスとリリーナも自由に動かせるたちいちだけど、物語の進行との都合上、全く別方向に向かわせたから、早い段階での再会はあまりにも不自然だしねぇ…。

と、保険って大事だなぁって思った今日この頃でした!
ありがとう!(´▽`)ノ

あとはボーナスステージ。
せっかく今回の話でメインで動いてくれたわき役さんが二人もいらっしゃるので、その人たちの軽い後日談であと1~2話とります!
そのうち書くからまっててねー(笑)






2015/01/04(Sun) 23:29 | URL  | 柚希 ひろ #-[ 編集]
また来ちゃった(*´д`*)
ひーちゃん、おばんどすえ。
またまたお邪魔させていただいておるでよ~w

>何気にいち早くティアのところへ戻るのと、結局泣いてるところ見ちゃうとフリーズしちゃうとこ。
そう! そうなの! そこ良かった!
等身大の男子っていうか、「ああ、ユウとティアだなあ」って思った!

>最後めっちゃ薄味にしました!
これも、本編読んだときにうまいなあと思ったよ~。
お話によりけりなんだろうけども、ユウとティアの場合は、ここはひーちゃんが言うとおり、濃い味付けはいらないと私も思う!
さすが生みの親だねえ、分かってるぅ~(゚∀゚)b

コメントお返事に更にコメントして、ごめん(笑)
今日(もう昨日か)は、仕事始め?ですかな?
お疲れさまでした。
続きは楽しみにのんびーり待ってるから、ひーちゃんのペースで、無理はしないでねん(●´ω`●)

また遊びにくるねー(´∀`*)ノシ 
2015/01/06(Tue) 00:22 | URL  | のん #-[ 編集]
Re: また来ちゃった(*´д`*)
おはよー、のんちゃん(*´ー`*)
昨日から仕事始めでしたよー…布団に入ってからあんなに秒でコテッたのは久しぶりでした……。
また一年が始まっちゃったねorz

物語から多くを感じてくれてありがとう!
そこは逆にさすがのんちゃんだなぁ!って思うよ(´▽`)

変に格好良くなくて、鈍いほどに気が利かないのも私はユウのウリだと思ってるからねぇ……あそこで格好いい台詞吐いたり、あんまりティアにキュンキュンさせるのもなんか違うと思ったんだよね(笑)
こっそりティアの前から姿消す前にしても、黙って戻ってきた時にしても、ユウの視点の外から客観したらあの人ただ黙ってどっかいったり黙って戻ってきて突っ立ってただけの残念野郎(心情を除けばね)だからね(;¬_¬)
でも、それもふまえて理解できるのはやっぱり長く一緒にいたもの同士の思いやり合いというか、二人のそういう部分に私は物語の魅力を感じます( ´艸`)

本当はもっとガッツリ更新したいけど、昨日もまさかの年始めからさも当然のように残業だったせいで折れちゃった(´;ω;`)
また安定して更新出来るまで、もうちょっとまっててね、きっと、あと1~2ヶ月で地獄の残業期間も終わると思うから!


…………あと1~2ヶ月もあんのかよ………orz



ありがとう!ぜひまた遊びにきてください。+゚(*ノ∀`)
2015/01/06(Tue) 07:44 | URL  | 柚希 ひろ #-[ 編集]
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 

トラックバック
トラバURL:  
この記事へのトラックバック