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子供みたいに泣きじゃくってたティアをなだめてからしばらく経つ。

部屋に戻ってくるなりいきなり泣き出すんだから流石に困ったよ。俺はこいつの泣き顔泣き声、苦手だ。
今はやっと落ち着いて普通に話してくれてる様子だけど、時々思い出したかのようにぐっと顔のあちこちに力を入れて目元に涙を溜めたりする。
──ほら、また。
こらえるようにむぎむぎとチャーハンを口に突っ込んでは、また思い出したかのように笑顔を作って見せる。

「ごめん……ちょっとしょっぱかったかもね……もぐ……」

「いんや、今までのチャーハンで一番の出来」

さっき、俺は最期のわがままをティアへと伝えた。
チャーハンが食べたい
ただそれだけ、それだけだったけど、そのわがままを言ったとき、驚いて、泣きやんで、やっと笑ってくれた。

泣き始めてすぐのこいつは、本当に見てるこっちがつらかった。
「なにもできなかった、なにもできなかった」って自分を責めるようにして傷ついた右腕を抱いて震えていた。
そんなことはない。
こいつは今日、人類滅亡の危機を救ったヒーローだ。
今日もしティアがライラさんを止めなかったら、俺は魔獣を倒していたところで結局あの人に殺されて、黒の魔力の肥やしにされ、いずれあの人の計画は実行に移されてたと思う。
モココさんはそうなったときにどう動いてたかもわからんしな、今回は…いや、今回もこいつが駆け回ってくれたおかげですべてが丸く収まった。

大切な者を守ろうとする少女が、わるーい魔女をやっつける話。そういえばこいつから聞いたっけか。
すこし前までは、本当にちょっと頼りないの妹みたいなやつだと思ってたけど、旅に出てから俺はこいつを見直した。
すごいところにたくさん気づかされた。
昔からすごい奴だとも思ってたけど、そんなんじゃなくて、なんだ。もっと、俺の持ってないものを持ってる感じがした。
知ってたけどな。再認識だ。

こいつは頑張った。頑張りすぎてくれた。
なにもできなかったなんて俺は思っちゃいない。
仕方がなかったんだ、呪いなんて致死率100パーな不治の病にかかった、これは事故だ、お前が自身を責めたりする必要なんてない……っていってやりたい……けど、言ったらまた絶対に泣くから黙ってる。

今は、最期は、どうせなら泣き顔よりも笑顔がいい。

「……今までで、一番頑張って作ったから……!」

「……ありがとな」

ほんとに……こいつは……。

「ユウ……?
これから……どうするの?」

まるで口内炎を気にしているような渋い面だ。
タマみてえな目ん玉しやがって、少しはタマを見習いやがれ、タマなんてさっきから泣きそうな様子も見せずにサラミ食ってるぞ!
……タマは……どう思ってるのかな。理解できてる……よな、俺が、死ぬって……。

しかしどうするんだって言われてもなぁ……死ぬのを待つだけだ。なんて言えない。
たとえそれが脊髄から発せられた嘘だったとしても、俺はこいつに絶望を与えたくなかった。

「呪い……の、研究?かな……?
やれるだけやる」

そうしてまた、脊髄から嘘をついた。
また、涙をこらえている。
それから口元をもごもごさせて、チャーハンをのみこんで、なんか言おうとしてる。
……内心諦めてるの、バレてるのかな。

わかりやすいよな、言いにくいこと言いたいときのティアだ。
ティアは困るとすぐに真面目な顔をする。

俺は結局言葉をみつけることもできず、真面目な顔をするティアからの言葉のみをただ待つことにした。

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