モココより放たれた雷玉は、他の雷玉へと向かって一直線に飛んでゆく。

「──えっ?!なに!?」

ティアは慌てて雷玉の行く先を確認する。
そして状況に気づき、防御壁を展開しようとしたときにはもう遅い。

「うわぁ!?いたい!!」

防御壁の発動より早く、雷玉が彼女の身体を捕らえていた。
モココから放たれた雷玉は、他の雷玉に当たると同時にまた明後日の方向へと向かって飛んでいった、当たられた雷玉もまた同じである。
弾かれたものから、弾かれたものへ、岩壁内にあった十数発の雷玉が連鎖的に動き、弾き合い、予想外の角度からティアを襲ったのだ。
それもただ弾かれただけではなかった、まるで意志を持つかのように曲がったり、止まったり、当たるものと当たられるもので不規則な動きをしていたのだ。
どれもこれもが最終的にはティアに向かって動く、高速の雷玉。

「このっ!!」

「──なっ!?」

しかし、直撃したのは最初の一つのみ。
一つ大きな声とともに、ティアが左腕一つで床へと杖尻を突き落とすと、彼女の周囲に石の棘が突出し、迫るモココの魔法をかき消す。
彼女のなんてこともないアース=リジェクト一発で、モココの唯一にして最大の切り札がかき消されたのだ。
そもそもの魔力、マナの含有量がティアとモココでは圧倒的な差があったのだ。
そう、ライラの魔法ならば、流れ弾が直撃した程度でティアの右腕の自由が奪われるほどの威力があったが、モココの魔法は直撃したところで文字通り『いたい』で済むものでしかなかったのだ。

モココの魔法は未だに解除されず、より広い範囲でティアの周囲には雷玉が浮いていた。
そして彼女がそれを見逃すはずもなく、その全てをかき消さんとさらに杖に魔力を送り続ける。

「アース=リジェクト=フロア!!」

ティアの杖先より、水面に投げられた小石が広げる波紋のようにアース=リジェクトが広がってゆく。

「──モココ!」

「──えっ……!?」

ティアの魔法が床一面を埋め尽くしかねない勢いで広がり続け、それがタマの手前で止まった時、モココの姿は魔法範囲外にあった。
代わりにそこにあったのはライラの姿。
彼は慌てて彼女の元へと転移魔法で移動し、その手で彼女を魔法範囲外へとはね飛ばしたのだ。
半端な防御壁では彼女を守りきれないと踏んだ、ライラなりの苦肉の策だったのだろう。
彼自身も咄嗟にその身に鎧魔法を纏っていたものの、もちろん無傷とはいかない。

ティアの魔法は、彼に突き刺さるとまではいかずとも、彼に片膝を突かせるには十分な威力だった。
一つむせ込むと、ライラは床へと膝から崩れ落ちる。

「……ぐ、だから、お前ではかなわないと言っただろう…バカたれ……」

「──だ!大魔導師様!?
どうして私なんかのために──!?」

「…邪魔だ……早く、帰れ……」

「──!?」

モココの中で、何かが崩れ去った。
完全な足手まとい、邪魔者、役立たず。
大好きな人を守るどころか、守られ、深い傷を増やしてしまった。

悔しさが、音もなく、彼女の目から溢れ出す。

「……うっ……」

それを目の当たりにしてしまったティアはひどいやりにくさを覚えた。
なにもできない自分に対する悔しさ。
サウスパラダイスでティアも同じ涙の味を知った。
そしてそれ以上に見てしまった。
ライラも、モココをどれほど大切に思っているのかを。

「どうして……私はただ……!!」

彼女の口からこぼれたのは、力のない疑問だった。
またも雷玉がその場を埋める。
モココにはそれしかできなかったのだ、魔法はもちろんのこと、状況下に迫られる行動選択もだ。
少しでも役に立ちたい、できることをやるしかない。
半ばヤケクソにも近い行動選択だが、それは彼女がどこまでもティアに近いことを証明していた。

「私はただ……!!」

「いけない!」

駆ける。
光る。
振り抜く。

モココがロザリオにまた魔力を溜め始めた時、彼女のみぞおちにさんごの杖が埋まる。
どうしても退かない彼女を気絶させるために、一気に距離を詰めたティアが勢いのままに杖を振ったのだ。
カエルの鳴き声のような、息の詰まった女性の声と共に、雷玉が姿を消した。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー 小説へ
読んだよ!

スポンサーサイト



コメント
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 

トラックバック
トラバURL:  
この記事へのトラックバック