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「でもよ、なるべく痛めつけないように気絶させるなんて・・・」

「わからないけど、やるしか・・・
なにがあそこまであの子を突き動かすのかな・・・」

「さあな。
どっちしろ簡単にあきらめてはくれなさそうだぜ。
・・・剣、使うのか?」

「・・・剣なんて使ったら本当に怪我じゃ・・・魔法で対応するよ。」

確かに悔しかったのかもしれねえけど、あいつはティアに対して恨みがあるわけでもティアが何かの仇であるわけでもなかろうに、どうしてそんなにティアに突っかかるのか・・・
「負けましたーごめんなさい強いですねー」
で片付かない何かがあるのか?
でも、俺はあんな女の顔に心当たりがある、つい最近みたよな。
リリーナは今、あのときの・・・あの夜、俺を引き止めようとした時のティアと同じような顔をしてやがる。

「はぁ、はぁ・・・さぁ、第2ラウンドよ・・・!」

「だめだ!だってお前もうボロボ───

「心配してくれてありがとう・・・でも、私はここで引けないの・・・ここで引いたら・・・私・・・」

「リリーナ・・・」

「ごめんね・・・ランス、私・・・可愛くないよね・・・
そんなこと・・・わかってる・・・わかってるけど・・・!
・・・っ!」

リリーナがランスから離れてロッドを構えたな・・・どうしてもやる気なのか・・・

「おい、ティア」

「うん、わかってる。
油断はしない。」

「ならよし。
ああいうヤツは・・・強いぞ!」

「うん、行ってくる。」

ランスと俺はお互いの相方から離れ、ティアとリリーナは再び向き合った。
なにか秘策があるのか・・・単に根性でごり押しするつもりか・・・
どちらにしてもリリーナに『逃げる』という選択肢はないらしい。
追い詰められたらヤツは何をするかわからねえからな、油断はしないにこしたことはねえ。

「行くわよ!!」

「っ!」

始まった!
リリーナは早速さっきと同じ様に砲台を用意した、あれがティアに通用しないのはリリーナもわかってるはずだからな、きっと、なにかやるつもりだろう。

「そんなワンパターンな攻げ───っ!?」

「うああああ!!」

───なるほど・・・接近戦か。
よろつく足取りながらも、勢いは死んでねえな。

「くっ!?」

リリーナの払ったロッドがティアの顔をかすめた。
意表を突かれてティアも少しは焦ったみてえだが、あんなド素人な武器の使い方じゃティアは捕まえられねえだろうな。

「きゃあ!!?」

なに!?ティアに魔法が直撃した!?
ティアの背後の砲台か!!そうか!
さすがに接近戦で意表を突かれた上に背後からの攻撃までされりゃあマジックキャンセリングなんて簡単には使えねえよな・・・それに・・・

「もらった!」

「うぐっ!」

魔法でティアの動きの邪魔さえ出来れば、あんなロッドでも当たるか・・・でも───

「フロスト=リジェクト!!」

「うぐあっ!?」

威力不足。
ティアはほとんど無傷だが、リリーナはフロスト=リジェクト一発で数メートル吹き飛ばされてる、着眼点と作戦は悪くねえがあれじゃあティアは倒せねえよ。

「もいっちょ!」

追撃を入れる気か・・・やりすぎるな───!?


「させない!!」

「あっぐ!!」

また砲台か!
そうだな、魔法を使おうとしてるときにはティアもマジックキャンセリングは出来ねえもんな!
やるじゃねえか!

そして接近、ロッドと砲台のコンボ・・・なんだこれ、ほとんどダメージにはなってないものの、ちゃんとティアに攻撃が当たってる・・・!

「うっ!・・・このお!!」

「うぁあああっ!?」

「っやあ!」

「・・・っは・・・!!?」

けど、ティアも馬鹿じゃねえからな・・・今度はあえて吹き飛ばさないようにして砲台を封じつつ連続魔法を入れたか。

「・・・ぁ・・・かはっ!」

リリーナが腹をおさえて膝から落ちた。
どうやら2発目の土魔法がうまいこと入ったみたいだな。

「おねがい!
フロスト=スフィア=レイン!!」

氷玉の雨がリリーナの上から降り注いだ。
あんなの食らったら俺だって・・・!
今度こそ勝負あった!

「っうあああああっ!!?」

リリーナの悲鳴だけが聞こえる。
そして、氷玉の雨が止んだ。
冷気の魔法の作用でリリーナは著しく体力を奪われたみたいだな。
あれだけまともに冷気の魔法を食らえば体のいたる機能が低下しているはず。
もううまく動くこともできないだろうし、もしかしたら痛みも感じていないかもしれねえ。

「っは!、ふっ!・・・っ!
はぁっ!!はぁっ!!」

「リリー・・・ナ・・・」

「おえっ!・・・っげほっ!かほっ!」

ランスも唖然としている。
リリーナはあまりの疲労と苦痛からか胃の物を戻してしまっている。
みてるこっちがつらいな・・・もう、終わりでいいだろ・・・

「まだっ!・・・えふっ!まだよ・・・!!ぐすっ!!
私はっ!えぐっ!まだ!負けてない!!
ぐすっ!ぜっだいに!まけられないのよ!!!」

リリーナ・・・泣いてるのか・・・?
うつむいたまま芝生を握りしめるリリーナの表情は俺の位置からでは伺えない。


「やめろ!リリーナ!もう終わりだ!
ティアさんもやめてくれよ!ほんとに!本当にリリーナが死んじまう!!」

「えぇ、わかってる・・・!
リリーナ!もう終わりよ!あなたの負け!これ以上は・・・」

「・・・っ!!
ぐすっ!いやよ!!!私は!負けてない!まだ!闘えるんだから!!」

っ!?なに!?立ち上がった!?
やめろ!無理しすぎだ!死ぬぞ!?

「っ!?
なんで!?どうしてそんなに!?
私にはわからないよ!本当にちょっと私が気に入らないぐらいでそこまでできるの!?
おかしいよ!!」

「はぁ・・・はあ、・・・あんたには・・・わからないでしょうね!!げほっ!

持って産まれてきた人間には!私の気持ちなんか!!」

「持って産まれてきたって・・・!
それだけ!!?そんな嫉妬だけで!?命を無駄にするようなことをするの!?そんなの───

「はぁ・・・はあ!
ほら!っ!わかってないじゃないのよ!
『そんな嫉妬』ですって!?
あなたに!あなたに今の私の気持ちがわかるの!?
ずっと!ずっと好きだったランスが!ぽっと出のあんたなんかに!!!
私はずっと!ずっとランスがすきだったのに!努力だっていっぱいして!いつだって一緒にいて!それなのに!!」

「!?」

「っ!ぐす!笑いなさいよ!
可笑しくてしかたないんでしょう!?
私が!私がずっと思いを寄せていたランスを目の前でかっさらって!
売られた喧嘩も余裕で征して!
挙げ句私にランスの目の前で嘔吐までさせて!本当は笑いたくてしかたないんでしょう!?
持ってるあんたには!私の気持ちなんて絶対にわからないわよ!
私にはもう後がない!!だから!!ここで負けを認めてランスを渡すぐらいなら・・・!!
いや!!
たとえ死んでも・・・笑われても・・・あんたなんかにランスは───

「笑わない!」

───え・・・?」

「・・・ごめんなさい。
私は、勘違いをしていた。
あなたは、自分も、最愛のものも、全てをかけて私に挑んできてくれていたのに・・・私は・・・!
私は・・・恥ずかしい。
自分の力に酔って、自惚れて、自分と同じ女の子の気持ちを踏みにじった!
あなたの・・・本気の覚悟を無碍にした!!
許してもらえるとは思わない、けど・・・私は!今更だけど、あなたの気持ちに応えたい!
・・・そうじゃなきゃ、私は・・・あの日の自分を否定することになる・・・!」

───っ!?
ちょっとまて!ティア!なに剣なんて構えてやがるんだ!?
もう勝負はついてるだろ!?

「ティア!お前!なにやって───

「ごめん、ユウ・・・でも・・・
ここで全力をださないと、リリーナに失礼だよ!」

・・・マジかよ・・・

「ティア・アルノーティス
私の名前よ。
あなたは?」

「っ!?
・・・リリーナ・ストラード」

「そう・・・。
リリーナ・ストラード!先の非礼をわびるわ!
あなたからの『決闘』!
改めて申し受けさせてもらいたい!」

「もちろんよ!!
・・・やってやる・・・!」

これで今度こそ間違いなく決着がつくな。
クソが、ランスの野郎、なんて顔してやがる。
覚悟が出来てねえのはお前だけだぞ。

あの女達は、男じゃ止められねえよ。

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リリーナがズレたメガネをかけ直した。
しかしすでに右のレンズは割れてなくなり、左のレンズにもひびが入っている。
あれ、かけ直す意味あるのか・・・?
ティアはそんなリリーナを真剣な眼差しでジッとみつめている。
依然としてティアの周囲は砲台が回っていて、ティア本人もそれを気にしつつリリーナの動向を伺っているようだ。
辺りに緊張が走り、リリーナが動いた!

「っやあああっ!!!」

っなに!?どこにあんな力が!?
流石にこれは驚いた・・・リリーナのヤツ、さっきあれだけ痛めつけられて立ってるのもやっとなはずなのに、最初より動きが格段によくなってやがる!
・・・火事場の馬鹿力ってやつか・・・本当に死ぬ気なのか!?

「たあ!!」

リリーナが砲台の発動と同時にロッドをティアへと振り下ろした。
ティアはそれに対して下から弧を描くように剣を振り上げ、いとも簡単にリリーナのロッドをはじき、ついでそのままの勢いで体の後ろまで剣を振り、砲台からの攻撃まで無力化した。

「───っふ!」

「っぐ!」

そして身体をよじってすぐさまがら空きのリリーナの腹へと一太刀、リリーナから血が噴き上がる。
やっぱり無茶だ!あんな状態で本気のティアを相手にしようなんて自殺みてえなもんだろ!
そこからティアの切影の連撃が入り、ついでと言わんばかりの───

「砲剣撃!!」

───ぶっ飛ばし専用剣技。
リリーナが一瞬でティアの前から後方へと弾き飛ばされる。

「───飛爪っ!轟槌っっっ!!!」

っまじかよ!?吹っ飛ぶリリーナに向けて問答無用の追撃!!?
やりすぎだ!!あいつ!ほんとの本当に本気で攻撃してやがる!!

「っああっ!!」

全撃直撃!
やばい・・・このままじゃほんとにリリーナのヤツ!

「おい!!ティア!!それ以上はだめだ!!本当に殺す気か!!?」

「・・・」

~~~っ!!!
あいつ!聞いてねえ!
ティアは俺の声を無視して吹き飛ぶリリーナにトドメをささんと言わんばかりに剣を構えて走り寄る。
だめだ!止めなきゃ!このままじゃリリーナが死ぬ!
ランスの野郎はティアの動きを目で追うので精一杯みてえだ!止めになんて入れそうにねえ!
俺が・・・やらねえと・・・!

俺がリリーナに向かって走り寄るティアに狙いを定めて魔力を溜めた時だ、目を疑う状況が俺の目に飛び込んでくる。

リリーナが───

───地に足をつけて芝生をすべり踏みとどまった!
それだけじゃない、そのままリリーナは走り寄ってきたティアを完璧なタイミングでロッドで殴り返し、ティアを数メートルほど転がしやがった・・・!!
流石にこんなの・・・根性だけじゃ説明がつかねえだろ・・・。

「・・・っ!ぐ!
やるじゃないの!リリーナ!」

ティアは起き上がりつつ、口端から垂れる一筋の血を拭っている・・・俺の見間違いじゃねえ・・・あのクソ頑丈なティアが・・・あんな弱っちいリリーナのただのロッドで───血を流している───!!

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・まだ!
・・・私は!まだ倒れるわけには・・・!
うわああああ!!!」

「来なさい!」

俺は・・・今、凄い光景を目の当たりにしている・・・
リリーナはティアへと駆け寄っていって、ロッドを振り抜く、当たった。
負けじとティアも剣を振る・・・これも当たる。
そしてティアは次のロッドをかわし、剣をはずす。
リリーナは砲台をうまく利用してティアへと連撃を入れる。
ティアが一瞬───よろめく。

リリーナのヤツ・・・あのティアと・・・接近戦で互角以上にやり合ってやがる!!
しかもティアにダメージまできっちり与えてやがる!?

「───っ痛?!」

「てやぁあ!!」

「───!?させない!!」

「うぐっ!?」

一進一退、なんだよこれ・・・リリーナが・・・急に強くなった・・・!?嘘だろ!?
互角以上に渡り合う2人に俺とランスは黙って息をのんだ。
しばらく、見ていることしかできなかった。
リリーナが・・・いや!ティアも!
あんなに強かったのか・・・!?
あんなに怒涛なティア・・・俺だって初めて見た・・・!

いつまでも続きそうな攻防がしばらく続いたが、ここでとうとう異変が現れた。

「くらいなさい!───っ!?」

「てい!!」

「うあっ!?───っく!」

リリーナの砲台が不発した。
リリーナの魔力が底を尽きつつある証拠だ・・・このまま魔法を使えなくなれば、やはりリリーナに勝ち目はないな。

「───終わらせる!!」

ティアがリリーナの隙をついてばっさりとリリーナを斬った!
やばい入り方・・・だったんじゃねえのか・・・リリーナ・・・生きてるのか・・・?!

「っ!・・・かっは・・・!」

リリーナが、よろめいて血を流し、倒れ込むようにティアへと身体を預けた。
終わりか・・・と、俺はその時は思った。

「リリー・・・なっ!?えっ!?
ちょっ!離して!」

「っ!はぁ・・・はぅ・・・まだ・・・私・・・ランス・・・」

がっちりと抱きついた状態でリリーナがティアの動きを封じた!
あんな状態で何を・・・!?

「っ・・・!絶対に・・・逃がさない・・・からね・・・!」

「───なっ!?」

驚いた・・・。
リリーナはティアに抱きついたままロッドに魔力を込め、空間魔法を使ったらしい・・・
2人の頭上に、リリーナが魔力を振り絞って転送した巨大なフラスコが現れた。

「私の・・・つくった・・・特製『大爆薬』・・・食らいなさい・・・!!」

「えっ・・・うそ!?やめっ───」

最後の一撃と言わんばかりに火球砲台が2人の頭上へ向かって加速する、そこへ召喚された大爆薬入りの大フラスコが落下を始める。

「っやべ!!ティア!!!」

「リリーナあああああっ!!!」

フラスコに火球が直撃、直後───

───ティアとリリーナを中心に、草原に小さな太陽が生まれた。

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「っう!!うおおおわあああ!?!?」

んなっ!なんっちゅう爆発!!?
ボケーっとしていたタマを抱きかかえつつ、俺は爆風に合わせて風魔法と魔法障壁でうまいこと逃げ切る、ランスもいい感じに吹き飛ばされてて爆発には本格的には巻き込まれていない・・・問題は・・・

「っくそ!ティア!!!おい!ティア!!?」

「・・・うそだろ・・・リリーナ・・・」

2人だ。
爆発の真ん中にいた2人の安否が全く確認できない・・・
ランスはただ放心状態で爆発地点を眺めている。
爆発もおさまり、煙が辺りを漂い始めた頃だ、俺はひとまずほっとした。

「ぬぅわあああっ!?痛っ!?げほっ!死ぬ!!?私!いやあああ!!
私!死っ!!ぬあああ!!!」

ティアの元気な声が聞こえてきた。
煙がはけると草の一つも生えていない焦げた土の上でうずくまり、1人パニクるティアが確認できた。
ジャージが焦げてボロボロになっていることと、なぜかうずくまったまま動かないこと以外は特に変わった様子もない。
・・・あいつ、自分がどれだけ頑丈なのか自分でも理解できてねぇらしいな。
大爆発=死ぬ。
みたいな考えで頭が埋まってパニクってるらしい。
・・・確かに大きなダメージはあったのかもしれねえけど、見た目ほとんど無傷じゃねえかよ。クソ、心配して損したぜ。
それより・・・リリーナが・・・いない!?

「あああ!!!お花畑なんてうそだぁ!!土しかないじゃないのよ!こんなのあんまりだあああ!!!」

「おい!ティア!!落ち着け!お前余裕で生きすぎだっ!
も少しダメージ受けろよ!どんだけの爆発だったと思ってやがんだ!?」

「・・・リリーナ・・・?
リリーナ・・・」

ランスの野郎はまだ放心状態かよ!リリーナはどうしたんだ!?まさか・・・さっきの爆発で跡形もなく・・・まさかな・・・

「ふっ!はふっ!わたっ死!!・・・あ、生きてる。」

ティアが落ち着きを取り戻したみたいだ、芋虫みたいにうずくまりながらもぞもぞ喋ってるのがかろうじて聞こえる。
俺はティアの元へと駆け寄った。

「おい!ティア・・・リリーナは───

「あっ!ユウっ!生きてたんだね!?」

一言目から笑えない冗談を飛ばしつつ顔を上げるティアの下を確認し、俺は安堵のため息をもらした。
気を失ったリリーナがすやすやと倒れていた、どうやら爆発の寸前にティアが無理やりリリーナを押し倒して爆発から守ったらしい、ナイスファインプレー、ティア。

「・・・リリーナも無事か・・・ははっ!お前・・・ほんと頑丈すぎだな、よくやった!」

「・・・はは、うん・・・人間、やれば出来るもんだね・・・
出来すぎてちょっと混乱してるけど・・・」

ティアが服の汚れを払いつつ立ち上がると、ランスからもリリーナの無事が確認できたらしく、ランスが駆け寄ってくる。

「っ!リリーナ!リリーナっ!!・・・っは、良かった・・・リリーナ・・・ぐすっ!このバカヤロー!!ふざけんな・・・!!」

なんだよこいつ、泣いてんのか?
へにゃへにゃ膝から崩れやがって・・・なんだかんで言って、こいつもリリーナのこと大好きなんじゃねえのか・・・?

「・・・ユウ・・・」

「ん?どうした・・・?ティア。」

「・・・ごめん、負けた。
私、リリーナほど強くないよ・・・
なんか・・・すごくくやしい・・・」

・・・言ってることがよくわからん。
・・・けど、なんとなく言いたいことはわかる・・・
ティアは俺と手合わせなんかをしても滅多に負けを認めねえ、こいつは冗談やお情けなんかで『負けた』なんて口にしないんだよな・・・普段は。
俺もちょっとくやしい、くやしいけど・・・今回は確かにティアの負けだ。
そう思う。

「今回は、相手が強すぎただけだ。
ほら、さっさと応急処置してヒール屋に運ぶぞ。」

「・・・うん。」

その後俺たちはリリーナを街のヒール屋へと運んだ。
闘技場もある街だからヒール屋は大盛況らしく、人で溢れかえっていた。
しかも、需要ありきで値段設定してやがるから治療費がぼったくりだった、確かにリリーナはひどい怪我だったが、1人の治療費で完治コース698000F・・・一度・・・いや、二度ほど桁を見直したぜ。
流石にそんな法外な治療費は払えないから、とりあえず『ひどい怪我だけヒールコース』で170000Fに抑えた。
その後はホテルのティアの部屋でリリーナの様子を見ることにした。

「もういいよ、入って。」

ティアが部屋のドアから顔を出して、廊下で待っていた俺たちを部屋へと入れた。
部屋に入るとリリーナがベッドでティアのパジャマを着て眠っていた。

「全身マナ水で拭いてあげたからもう傷もないよ、あとは目をさますのを待つだけ・・・」

「そうか。
良かったな、ランス!」

「お!俺は別に・・・」

なんだよこいつ、ヒール屋の時点では泣きながらリリーナの手握って名前呼んでたくせに・・・素直じゃねえな。
ランスはベッドで眠るリリーナの髪をそっとなでる、三つ編みがほどかれてウェーブがかかったみたいになっているその髪は、少しばかり濡れていた。
どうやらティアは気を失ってるリリーナを風呂にまで入れたらしい。
ついでにティアも風呂上がりみたいになってる。

「ティアさん、リリーナをありがとな・・・」

「どういたしまして、ランスさん。」

「あ!ランスでいいよ。」

「そう、じゃあランス。
お話があるの、聞いてくれない?」

「お話?」

訝しげにランスはティアの顔を見つめる。
ティアは少し怒った顔をしてリリーナのベッドの奥の椅子を指差し、ランスを座らせた。
ベッドで眠るリリーナを挟んで、ティアとランスは向き合った。
話って、なんだろうな。

「ランス。
リリーナのほっぺ!触りなさい!」

「はぁ!?ティアお前!何言って───

「ユウは黙ってて!!」

「!?・・・」

・・・なんだよ・・・ちょっと恐いじゃねえかよ・・・。
ティアが唐突に人差し指でリリーナのほっぺをぷにぷにとつつき始めた。
おずおずと、ランスもティアと同じように逆側のリリーナのほっぺをつつく。
リリーナが寝ながらしかめっ面になってうなっている。
・・・なんなんだよ、この状況。

「柔らかくて、張りがあって、みずみずしくて・・・白いでしょう?綺麗でしょう?」

「・・・?・・・うん。」

「あなたは、これを当たり前だと思っているかもしれないけど、リリーナはこのお肌を維持するのにどれだけ苦労してると思う・・・?」

「・・・」

・・・?
ティアのやつ、いきなりなんの話してんだ?

「次!髪!」

ティアが、そっとリリーナの髪をなでる。
光に当てるように持ち上げてみたり、手をクシのようにして髪の中を滑らせたりしている。
例によって、ランスもティアと同じようにリリーナの髪をいじり始める。

「しっとりしてて、さらさらで、指通りもよくて、枝毛もパサつきもない!
こんな理想的な髪の毛の女の子なんてそうそういないの!
並の努力じゃこんな髪の毛は手には入らないよ!」

「・・・?
・・・うん・・・。」

「次!目!
ランス、聞きたいことがあるの!
リリーナって、目が悪いの!?」

「・・・さあ?メガネをしてるくらいなんだから、悪いんじゃないのか?」

ランスの言葉を聞いて、ティアは落胆したようすで肩をがっくりと落とし、大きなため息を吐いた。
なににそんなに落ち込んでるんだ?ティアのやつ。

「・・・ランス・・・あなた・・・」

「へ?なに?ティアさん。」

「リリーナの前で、メガネをかけた人が好きだとか、メガネをかけた人に見とれたりとかしたことあるんじゃなくて?」

「・・・あ、ああ、一回だけ・・・薬屋のメガネのお姉さんに・・・あった、かも?」

「もうっ!!ダメよ!ランス!あんまりふざけてると怒るわよ!ほら!見なさい!」

ティアはランスにリリーナのメガネを手渡す。
ボロボロでぐにゃぐにゃ。
ひびの入ったレンズをみて俺はティアの言いたいことに気がついた。

「あぁ、ランス、それ!
伊達メガネじゃねえか!?度が入ってない!!」

「えっ!?あ!ほんとだ!リリーナのやつ!伊達メガネだったのか!」

「・・・もしかして、リリーナがメガネをかけ始めたのはその頃あたりからだったんじゃないの?その、薬屋のお姉さんがどうとか。」

「・・・いわれてみれば・・・」

「『いわれてみれば・・・』じゃない!
私もう怒ってるわよ!!次!!これ!」

ティアはボロボロになったリリーナの服を取り出し、その服にある、ある刺繍を指差す。
・・・この刺繍、なんだ?
リリーナの着てた服全部のどっかしらにあるな。

「この刺繍はね!ブランドなの!
戦う可愛い女の子を目指す子ならみんな読んでる月刊誌『ヴァルキリー』一押しの可愛い系ブランドなのっ!!!
『ラブハートブレイド』っていう今戦う可愛い女の子達の中で一番流行ってるブランド!
私だって本当はラブハートブレイドの剣士服が着たいけど、すぐボロボロになって買い換えることになっちゃうから買いたくても買えないの!
着たくても着れないの!
それでもあえてリリーナがこのブランドにこだわる理由はなんだと思う!?ランスだけじゃない!ユウも答えなさい!!」

っえ!?俺も!?なんで怒られてるんだ!?

「え・・・っと、やっぱり、丈夫とか・・・」

「いや、単純に可愛いからじゃねえのか?
俺には理解できねえけど。」

「そうだよ!可愛いからだよ!ユウでも出てくるのになんでランスはわからないの!?」

お、正解か!
俺も乙女だぜ。うふん。

「次よ!ランス!リリーナと一緒にいて気がついたことはないの!?
というよりいつも一緒にいて心地良いことがあるでしょう!?答えなさい!!」

「っえ!?心地良い!?
・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・」

悩み続け、言葉をひねり出すこともできねえらしいな、ランス。
よし、ここは本日かぎりの大サービス、乙女な俺がズバッと答えを───

「匂いだよ!」

───ティアに譲ろう!くそ!答えられなかった!乙女なのに!
・・・いや、そもそも答えわからなかったけど。

「へ・・・?匂い?」

「『匂い?』じゃないわよ!もうっ!ほんとに!!!
ユウですら私が香水つけた時には気がついてくれたのにランスはなんなの!?リリーナのことなんだと思ってるの!?」

「いや、その・・・」

「女の私でもさっきリリーナに抱きつかれたり押し倒したりしたときはドキドキしちゃうぐらいいい香りじゃないのよ!リリーナは!!」

・・・こいつ、闘いながらそんなこと考えてたのかよ・・・

「しかも香水にはたよりすぎないナチュラルな女の子の香り!
これもかなりの努力をしないとなかなか維持できるもんじゃないのよ!?わかってるの!?」

「っは!はいっ!!」

ランスのやつっ!はははっ!なに敬礼しながら立ち上がってんだよ、バカだろ!

「ユウ!笑い事じゃないよ!」

「っは!はいっ!!」

・・・クソ。

「とにかく、私が何を言いたいかってね。
ランス、もう一度リリーナのことを女の子として見てみなよ、いつも一緒にいるからってあなたはリリーナの魅力を見落としすぎてるの。
私が知る限りね、こんなに可愛い女の子はいないのよ?
さっき聞いてただろうからあなたももうリリーナの気持ちには気づいたんでしょ!?
これを機に、1からリリーナとの付き合いを変えてよ!
余計なお世話かもしれないけど、こんなに健気にがんばってる女の子の恋・・・私からしたら他人事じゃない!!
約束して!」

「・・・うん・・・」

「話はこれで終わり。
ユウ、私はもう一度タマと特訓してくるからリリーナのことをよろしくお願いね。
ランスがこんなんだから、今はユウの方がよっぽど頼りになるよ!
・・・ランスは、リリーナと長く一緒にいるなら・・・いるつもりならさ・・・
いや、なんでもない。行ってくるね。」

「おう、わかったよ。
リリーナが起きたら伝えとくぜ、今回の勝敗。」

「うん、お願いね。
『次は負けない』って、伝えておいて!」

そう言い残し、ティアは部屋から出て行った。

「・・・」

「・・・」

「・・・おい、ランス。」

「・・・」

「なにティアにちょっと怒られたくらいで泣いてんだよ、みっともねえ。
わりいが言わせてもらうと俺から見てもさっきのリリーナへの対応は最低だったぜ。
可哀想だ。」

「・・・えぐっ」

「・・・バカヤローめ、居なくなってから・・・気づいても遅いんだぞ。」

目元を拭いながらこくこくと頷くランスに、俺はあの夜の自分を重ねた。
・・・俺もな、あの時まではティアの大切さに気づいてなかったのかもな。

・・・

───今度、一緒にメシ食いに行ったら、あいつにはその店一番のパフェを奢ろう。
そんなことを考えつつ、俺は泣き続けるランスを横目に適当な魔導書をひらく。

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ティアがタマトレの再開のために出かけてから早二時間が経とうとしている。
俺は相変わらず魔導書に視線を落としつつ、先ほどのリリーナの魔法の秘密を探る。
俺も砲台とかレーザービームとか、砲台からレーザービームとかしたい!

「お前、さっきから何読んでるんだ?」

なんだ、ランスのやつ。
リリーナと一緒にいるくせに魔導書すら見たことねえのか?
ほんとにリリーナのやることなすことに興味がなかったらしいな。

「・・・魔導書。」

「ほぉ!それが魔導書か!
リリーナのやつ、口には出すけど実物は見せてくれなかったからな!
どれ、みせてくれよ!」

みせてくれなかった?
もしや、リリーナのあれらの魔法は秘術の類だったのか!?
それなら・・・
とりあえず俺は椅子の背もたれの後ろで騒ぐランスに後ろ向きのまま魔導書を手渡した。
視線は天井だ。

「へぇーこれが!全然いみわかんねぇ!
なんだよこのマーク!文字!これ、なんの魔法なんだ!?」

「んあ?それは魔法を圧縮、凝縮させる類の術式が載った魔導書だ。
リリーナのレーザーが気になってな、秘密を探りたくて。」

「ふーん。
まあ、俺もリリーナの魔法についてはよくわからねえからな。
俺が剣の練習を始めてから二年くらいたって突然使えるようになってたからなぁ・・・」

ん!?なんだと!?突然使えるだと!?

「あ!?どういうことだよ!?突然って!
俺は最初に魔法を発動させるまで二年くらいかかったんだぞ!?うそだろ!」

「いや、俺もわかんねぇ、実は俺が剣を練習し始めたあたりからリリーナも魔法研究を始めてたのかもしれねえし・・・」

ん?なんだこいつら、てっきり俺とティアみたいな仲なのかと思ってたんだが・・・

「わかんねぇって、2人で手合わせとかして強くなったんじゃねえのか?
少なくとも俺とティアは毎日のように・・・まぁ、手合わせってほどじゃなかったか、最初は・・・
あれだ、じゃれあって強くなったんだけど・・・」

「それなら別だな・・・俺とリリーナはこんなにちっさい頃から───

ランスが床から20㎝くらいの位置まで手を落としている、嘘付け。

「盛るなよ、そんなにちっこい人間がいてたまるか。」

「まあまぁ、あれだ、物心がつく前から一緒だったんだよ。
リリーナはいつも気弱で自信がなさそうに俺の後ろをついてまわっててな、妹みたいなもんだったんだ。」

はぁー、なるほど、それで。
確かに妹みたいな存在相手にそんな性的意識は持たんわな。
よくある話だが、こうやって聞くとさっきティアに怒られてたランスがちょっと気の毒だ、まぁ、それにしてもコイツは無関心すぎるけどな・・・

「それで、いつも2人で大人しく街で遊んでたんだけどさ、俺が剣をはじめるきっかけがあって以来───

「きっかけ?」

「───ああ、そりゃ後で話すよ。
俺が剣を始めてから、俺はリリーナと遊ばなくなってな、ずっと剣の練習をしてたんだ。それである日な、俺が人生初の害獣退治に出かけようとしたときだ、リリーナが『ついていく』ってごねたんだ!
びっくりするだろ!?魔法使いのカッコしてさ!
俺はもちろん反対したさ!
俺だって初めての害獣退治!その当時、鍛錬を積んでたつもりだった自分の命だって危ういのに、いきなりでてきたリリーナなんて連れていけるわけないだろ!?」

「ああ、そうだな、その段階ではリリーナが魔法はおろか闘えるかどうかすらわからなかったんだろ?」

「おう、あのとき俺はリリーナはまだただの女の子だと思ってたからな!
だだをこねるリリーナを押し切って俺は1人で害獣退治に出かけたんだ。」

「ふーん、ちなみにその害獣って?」

「ビッグワーム。」

ああ、ただの雑魚だな、芋虫がでかくなっただけのやつか。
俺が親父に連れられて近くの森で初めて剣を握ったときに10匹狩ったやつだ。

「それで俺はビッグワーム相手に大苦戦してな、ヤツの糸で剣を絡め取られてもうだめだ!
ってなったときだ!」

ふむ。

「突然上空から無数のレーザーが降ってきて、次々にビッグワームを焼き切った!
それが俺が初めてみたリリーナの魔法さ。
どうやら心配したリリーナがこっそりついてきてて、案の定ピンチになった俺を助けてくれたんだ。」

「・・・ふーん。
だからリリーナが魔法を使えるようになるまでの過程はお前も知らないと。」

「そうなる。」

なるほどな。
話だけ聞いてると俺よりリリーナのほうがよっぽど魔法のセンスはありそうだな、悔しいけど。
コツを掴んでからは俺もかなり成長したけど、コツをつかむまではそうとう苦労したもんな。

「で、きっかけは?」

「あぁそうだな、きっかけ。
リリーナがさっき自己紹介のときぼやいてたと思うけど、俺たちの街に来てた行商人に噂を聞いてな!」

「噂?」

「ああ!話を聞いたのが六年前で・・・当時の行商人が二年くらい前って言ってたから・・・今から八年前くらい?か?」

「ふむ」

八年前?俺がちょうどティアと会って、魔法を練習し始めた頃か。

「大陸の東の街でな!当時の俺とそう大差ない歳のガキが!なんと新人衛兵を剣で圧倒したっていうんだよ!」

・・・え?まて、まさかな。

「ほ・・・ほう、ち、ちなみににっだ、そ、その、が、ガガキの、、、な名前・・・は?」

「なんだ?なに急に慌ててんだよ?
すごいぜ、偶然にもお前と同じ名前なんだ!ユウって言うんだぜ!そいつ!
まぁ、お前は魔法使いだから剣士のユウとは関係ないと思うけどな!
俺の憧れなんだ!今頃きっと剣士のユウは世界で見てもかなりの腕の剣士に・・・!」

・・・うわぁ・・・
いや、まて、まだ他人の可能性が!

「それだ、その行商人がそのガキをみた街の名前は?」

「街の名前・・・は、よく覚えてねえ・・・な・・・
アキナスアイデス?アリエヌハイエス?そんな響きの・・・おい、ユウ、なに固まってんだ?」

アリエスアイレス・・・俺とティアが出てきた街の名前だ・・・
そして、周辺には似た名前の街など存在していなかったはず・・・だ。
確定だ。
コイツ・・・ランスの、剣をはじめるきっかけになったガキ・・・行商人が噂をばらまいているユウ・・・

俺だ・・・俺のことだ・・・
言えない!まさか言えない!
お前の憧れのユウくんは今魔法使いをやっているんだよー!なんて言えない!!
・・・夢は・・・壊しちゃいけない。

「ふ、ふーん、そんなすげえやつがいるんだなっ!ははは!
あとでティアにも教えてやろっと!ははは!」

そうだ・・・ティアにどうするべきか相談するか。
俺は慌てて話を終わらせてランスから魔導書を取り返してごまかした。
それからすぐのことだ

リリーナがそっと、目を覚ました。

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「う、ううん・・・ここは・・・?」

「あ!リリーナ!?起きたか!!良かった!
馬鹿やろう!!あんな無茶しやがって!次にやったら俺!!・・・ぐす、もうするんじゃねえぞ・・・」

「・・・え?ランス?・・・えっ!?私!服!?え・・・まさかあなたたちが・・・?」

まだ寝ぼけてるみてえだな・・・まぁ、それもそうか、魔法とか薬やらで無理やり体力を回復させるのもそれはそれで体力を使うからな。
矛盾してるような気もするけど、実際マナ水で傷を治したりするとなんだか身体が弱くなった気分になる・・・だから戦闘中はマナ水使いたくねえんだよな・・・
タマジローさんが言ってた『マナ』とかいうのに秘密があるのか?
それとも俺の考え過ぎか?

顔を真っ赤にして布団で胸元を隠しつつ、リリーナは俺とランスを交互にみやっている。
そうだよな、気を失ってる間に野郎2人に着替えさせられたかもしれないと思うと・・・
状況説明もかねてティアからの伝言だな。


「おう、起きたか、リリーナ。
そうだ、お前は最後の爆発で気を失ってその後ヒール屋に運ばれたんだ。
安心しろ、着替えさせたのも綺麗にしたのもティアだ、俺たちはなにもしてない。
それとティアとの決闘はお前の勝ちだよ、ティア本人も負けを認めた。

『次は負けない』ってさ。

・・・あいつに負けを認めさせるとは大したもんだとおもうぜ。」

「・・・っぐ・・・でも、私・・・ぐすっ。」

あれ?逆効果?
なんかすげえ悔しそうにしてる。

「ああそうだ!すごかったぜ!リリーナ!
お前最後の方はあのティアさんと互角だったもんな!見直したぜ!
ティアさん、爆発のあとは『死ぬーー!』って言ってたし!」

「え・・・?ぐす、ほんと?ランス・・・?」

「ああ!ティアさんも悔しそうだったな・・・
なんでか、よくわからねえけど・・・」

「・・・そっか、そうだったんだ・・・」

そうだ!ランスのくせによくやった!

「まぁ、そういうことだ。
とりあえずリリーナも目を覚ましたし、時間もあれだから俺はティアを連れ戻しにいってくる!
お前らは部屋で待ってろよ。
もっと細かい状況説明は頼んだぜ、ランス。
それと、あれだ!依頼!俺が戻ってくるまでに羽根の生えた虎の依頼のことも考えておけよ。
受けるならいつにするのか、キャンセルするなら今後どうするか、その辺はまかせる。」

「お・・・おう、いいのか?」

「なにがだよ?」

「一応俺たちはまだ部外者だろ?
ティアさんの部屋なのに・・・関係者が空けていいのか?」

なるほど、確かにそれもそうかもしれねえけど。
・・・ま、いっか。適当にごまかそう。

「リリーナも起きたばっかだし、変なこともできねえだろ。
それにほんとになんかするつもりなら初めからそんなこと聞かねえで笑顔で俺のこと送り出すのが普通だろ?
もっというと、この部屋になにかが起きたら真っ先にお前らが犯人ってことになるわけだ、疑われたくなかったらむしろ必死で部屋番してほしいぐらいだな。
つか、そもそもお前らが俺らに近づいてきたのは仲間になるためだろ?
それならお前らがティアの部屋荒らしなんてするメリットもないだろう。
どうだ?この条件なら別に俺が部屋にいなきゃいけねえ理由もないだろ?」

「そ・・・そっか、なるほど。
ユウ、お前頭いいな。」

いや、コイツ馬鹿だろ。
これだけ馬鹿ならかえって安心だ、むしろ部屋番にはもってこいだろうな。

「だろ?ここがよくないと魔法使いは務まらねえんだよ、覚えとけ。」

ちょっと小馬鹿にする意味もこめて俺は自分の頭を人差し指でつついてみる。
ふふふ、なんかこれ、気分いいな!

「な・・・なるほど!
ユウ・・・魔導書借りて良いか!?
俺も・・・頭・・・」

「勝手にしろよ、それじゃ、後は頼んだ。」

どうせランスには理解できねえだろうよ、俺が机に置いといたのはそこそこ難しい魔導書だしな。
それよりあいつ、魔導書読んだら頭が良くなると思ってんのか・・・
それならそれでほんとに心配すべきレベルの馬鹿だな。

戻ってきてからのランスの魔導書への感想に少しばかり期待しつつ、俺はティアを連れ戻すために夕方の街にでた。

生温い潮風が頬を撫でる・・・暑い。
俺はローブを脱いでシャツの袖を捲る。
さっさとティアのヤツを見つけて帰ってメシだな、腹も減ったし。

相変わらず賑わい続ける街の中を、1人で歩き続ける。
なんだろうな、この気持ち、焦燥感、浮遊感・・・
闘っていた時のリリーナと、あの夜のティアの顔を思い出す・・・重なる。
早くティアに会いに行かなきゃいけないような、そんな気分になる。
クソ、なんだよこれ・・・

少し駆け足で俺は街の外へと抜け出した。

耳に障るガヤガヤが離れてゆき、しぼみ、背後に感じる。
黄色く光る草原の上で、小さな太陽が一瞬光った。
ティアの頭だ。

ティアはうつ伏せになり、左手で顎を支えつつ、右手でタマとじゃれ合っていた。
その笑顔になぜか俺は途方もない安心感を覚えた。

「ほら!タマ!ジャブジャブ!」

ぺしぺしとタマは前足でティアの右手を叩いている。

「今!ストレート!」

ティアのでこに向かってタマがポコッと頭突きを見舞い、跳ね返されてコロコロと芝生を転がる。
かわいい。

「あっははは!タマー、だめだよちゃんと踏ん張らないと、あはは!」

「・・・」

そうだ。
俺はティアにばれないように背後に回り、ほんのすこーしだけの魔力でタマを強化してみる。
ムキムキっ!と、タマが少しだけたくましくなる。
ふふ、なんかタマも誇らしげだな。

「わっ!すごい!タマがレベルアップした!?」

あきれたぜ。

「・・・そんな露骨なレベルアップがあるかよ・・・」

「あっ!・・・なんだぁ、ユウか・・・」

ネタばらしもそこそこに、タマを元にもどしてやる。
なんだよ・・・タマ・・・そんな目で俺を見るなよ・・・

「なんだとは心外だな、ほれ、リリーナも目を覚ましたし、帰るぞ!」

「ほんと!?リリーナ!大丈夫だったの?!」

「ああ、問題ない。
お前が負けを認めたってことには、少し納得がいってなかったみたいだけどな。」

「そっかぁ・・・ねえ、ユウ。」

「なんだ?」

「・・・もし、今回・・・」

「??」

なんだ?なんか、ちょっと寂しそうだな・・・どうしたんだ?

「あ、いや、いいや。
やっぱりなんでもないよ、帰ろっか。」

「・・・?
おう、なんだよ、言いたいことがあるなら───

「ない!・・・少なくとも、今はね!
さっ!行くよ!タマ!」

もうすぐ、日が沈む。

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結局外食がめんどくさくなった俺達は、いつも通りの雑談をしつつホテルへと戻る。
ホテルと言えば夕食バイキング!
早くたべたいな、ティアがシャワーを浴びた後に2人とタマで食堂に向かう予定だ!
腹がなる!

「そうなんだぁ・・・ユウが憧れの剣士って・・・うん・・・まぁ、アリかも知れないけど・・・」

「まさかな、俺もそこまで噂が広がってるとは・・・」

「そのことはやっぱりラン───

ティアが、自室のドアノブに手をかけた途端・・・固まった。
何やってんだ?こいつ。

「何やってんだよ、ほら、開け───ぐはっ!?」

「あっ!ごめっ・・・大丈夫!?」

固まるティアに代わって俺がドアノブに手をかけようとしたらだ、ティアがいきなりドアとは逆の廊下の壁に俺を押し付けた。
痛い・・・そして近い。
そしてなぜひそひそと謝る?
ティアにつられて俺もひそひそ声で理由を問う。

「ってて・・・どうしたんだよ・・・急に・・・!」

「っしーーー!静かに!!」

ティアはっしーーー!のポーズで俺を征し、目を白黒させつつ赤くなったり青くなったりしている。
今になってリリーナに殴られた後遺症がでたのかな・・・?
なんか、変だ。
ちょっとばかし心配する俺を余所に、ティアは目でちょいちょいと俺をドアの前へと誘導する。
それに促され、俺はドアの前にそっとたった。
───声が聞こえる。

「───っ、はぁ、ランスっ、んっ───

!?!?!?!?!?!?!?
ワッツ!?

───も、ん、もうちょっと・・・ん、下───」

「・・・こうか?」

「・・・あっ、気持ちいい・・・」

・・・oh
なんてこった・・・俺が部屋を空けたばっかりに・・・やってしまった。
くそっ!ティアとの闘いでリリーナはランスへの気持ちを吐いた!!
ランスはランスでティアに説教されてリリーナに対する見方が変わった!!
リリーナ、風呂上がり。
パジャマ、ベッド、2人きりの男女・・・くそぉ!!!なんで気がつかなかったんだ!!!

ティアは尚もわたわたしつつ、赤くなったり青くなったり。
すまねぇ・・・お前の部屋なのにな・・・これから一月先まで借りる部屋なのにな・・・

「・・・ごめっ・・・ティア・・・」

「いや、うん。
・・・これは・・・どうしようかねぇ・・・ユウ。」

どうしようかって・・・ことが済むまで───

「───痛っ!?・・・ランス、もっと、ん、優しく・・・」

「あっ、わりぃ・・・」

やばい。

興 味 が わ い て き た !

「お、おおお、おい、ティア?」

「な、なによっ!今いいところでしょ!?静かに!」

さすがティアだぜ、わかってやがる!

「そうだ、良いところだな・・・なぁ・・・」

俺がある提案をしようとしたときだ。
ティアが俺に向かって握り拳を向けてきた。

「私!パーね!ユウはグー!」

「そうか・・・もちろん負けた方が───

「ちがっ!勝ったら開けるの!私の勝ちなの!」

「しかしランスのヤツ、たいしたことない剣士に見えたが、あいつの『夜の剣』・・・俺も見誤ったかもしれん。
よし、それじゃあ拝け───

「ずるいよ!私だってリリーナの『夜の大爆薬』の威力がみたい!」


「───っちょ!ランス・・・ふふ、くすぐったいよー・・・ん。」

「お前がもうちょっと・・・ふ。」

顔が・・・熱い。
何故か俺の頭にはお姉さんの顔が浮かんだ。

「『意にそぐわなくても、やらなくてはならないときがあるの。
時には悪が正義であり───・・・

ティアも、どうやらお姉さんが浮かんだらしい。
自分を落ち着かせるようにぶつぶつぶつぶつとお姉さんの言葉を念仏のようにとなえている。
なんなんだろうな、あの人。

・・・───』さぁ、行くわよ、若いの!」

うぉぉおお・・・!!
やる気か!!ティア!秘密の花園への扉を・・・っ!!
夜の大爆薬で濡れたリリーナに、ランスで出来たタマサブローが・・・超大作だぜ。

「おう、状況なんて───感情一つで変えてやる!」

俺とティア、2人での共同作業。
一時のランスとリリーナの愛の巣に、ほんとの意味でのお邪魔します。

───勢いよく、ドアを開ける───

そこには、リリーナに乗り、一定のリズムで身体を揺らすランス。
ランスが動く度に、肺から息が漏れて艶っぽい声を上げるリリーナ。
俺達は、見てしまった。現実を。

「───っふ、ん。
あっ・・・ん、おかえり。ユウ。
それと、ありがとね、ん、ティア。」

「ふぃー、帰ってきたな、2人とも。
よし、リリーナ、一旦おしまいだ。」

「・・・ユウ。」

「いや、先に勘違いしたのはお前だぞ?」

「・・・そっか、マッサージか。」

「ああ、腰のマッサージだったな。」

秘密の花園の一時の愛の巣では、夜の剣士も夜の大爆薬もなく、タマサブローだっていない。

また、お姉さんの顔が浮かんだ。

「『強くなりなさい・・・若いの。
そうすれば見えてくるものも───

「おいやめろティア・・・なんか、やめろ。」

ティアは黙って自分の荷物の元まで行き、シャワーを浴びる準備を始めた。

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「まったく・・・わ、私が・・・そっその!?ランスと・・・?
いっ!いかがわ・・・しい・・・その、ことをしてたのを想像してたなんて・・・!
あんたたち!その!
あっ!あとでちゃんと事情というか・・・ふ、深く!・・・内容、話してよね・・・」

顔を真っ赤にしてぶつくさ言うリリーナと、話を聞いて同じく真っ赤な顔でそっぽを向くランスをみて、俺とティアはニヤニヤがとまらなかった。
ランスのマッサージ(?)もしっかり効いたみたいで、リリーナは依頼所で会った時よりも元気そうだ。


「うふっ、うふふふふ・・・リリーナ・・・可愛いわね?ユウ?」

「うふっ、うふふふふ・・・可愛いな・・・うふふ・・・」

「その笑い方やめてよ!!怒るわよ!」

「「ぬふふふふふ・・・」」

「それよりあなたたち、そんな状況を想定しながら普通に入ってくるなんて・・・
常識的にどうなのかしら・・・?」

「「・・・」」


ばかなことやってるのは俺とティアもわかってる。
自覚があっても面白いからやめられねえんだよな、リリーナいじり。
人間って、業が深いよな。
そんなバカなことをしつつ、俺達は夕食を取りにバイキングルームに向かう。

「ここがバイキングルームね。
さ、食べるよー!」

「ぬふっ、リリーナ?ランスに愛の盛り付けをだな・・・ぬひひっ!」

「ランスはね、リリーナと愛の咀嚼を・・・むふふ・・・っ!」

「「・・・」」

俺達はバイキングルームへと足を踏み入れる。
・・・これは・・・!!
さすが高級ホテルのバイキング!!すごい!
見渡す限りの長テーブル、その先のバイキングコーナーの食品の数々!
思いつく適当な料理名をあげたならば、まず間違いなくそれはあそこにあるだろう。
そう思わせるだけの一目で魅せる料理の山々!
俺達は一瞬声を出すことも忘れて生唾を飲み込んだ。

「・・・すごい・・・!!
ユウ!みて!なんか!チョコレートの噴水があるよ!!
タマもみてごらん!お肉がたくさんあるよ!」

「っ!?デザートコーナーだけであれかよ!?ふざけんな!!」

「お、おい、ユウ、ティアさん・・・周りの人たちに見られてるぞ?
驚きすぎなんじゃねえか・・・?」

ワクワクしながら俺達が席を探し始めたとき、リリーナが一言

「ランス、あなたの分も私が盛ってきてあげるよ!
ランスは私の分の席もとっておいてね?」

とだけ言い残し、てこてこと料理コーナーに向かって行ってしまった。
まったまた悪い顔をしたティアが俺をのぞき込んできて話しかけてくる。

「ねえねぇ、ユウ?
リリーナの愛のフルコースをみてから私達も取りにいこうよ!
リリーナが戻ってくるまで待ってみよう?」

ふっひひ、ゲスいなぁ・・・流石ティアだぜ。

「・・・そうだな、ランス、どんなもんが盛り付けられてきても喜んでやれよ?ふひひ・・・」

「ああ、リリーナに関してはその辺は心配いらねぇよ。」

あっさり答えるランス。
なんだ?なんかこれに関しては当たり前みたいな反応だな。
それから数分後、俺とティアは、ランスの言葉の意味を知る。

「お待たせ、ランス!
さ、食べましょう!?
あれ?ユウとティアはまだ盛り付けにいってなかったのかしら?」

リリーナが沢山の皿をカートに載せて運んできた・・・
それはいいんだが・・・

「「 ・ ・ ・ 」」

これは・・・驚いた。
ティアも驚いたようで口を金魚みたいにぱくぱくさせながら言葉を探している。
すごい・・・リリーナ、盛り付けうますぎだろ・・・。
リリーナが持ってきたカートに載った皿の料理。
バランスがよく、彩り、ボリュームの配置も完璧。
絵に描かれたような美しい盛り合わせでありながら、その三次元的に盛られている料理たちはまるで光の反射まで計算されて置かれたかのように輝いている。
・・・くそが・・・なんで・・・高級ホテルのバイキングなはずなのに・・・!
高級ホテルのバイキングのはずなのに!なんでリリーナの盛り付けを見せられた瞬間から
『所詮はホテルのバイキング』
と思わされてしまうのか!?

リリーナが盛ってきたのだってここの料理のはずだろ!?
なのに・・・リリーナの盛り付けをみてからだと、さっきまであんなにすごく感じたバイキングコーナーがまるで屋台の総菜だ!
解せねえ!!

「うははっ!流石リリーナだな!うまそうに盛ってくれる!!
ほらな!?ユウ!ティアさん!俺の言った通りだっただろ!?」


俺はその時に気づいた、いや、気づかされた。
俺が気づいたのだから間違いなくティアも気づいただろう。
ランスに誉められ、顔を赤くしつつカートからテーブルへと皿を並べているリリーナが一瞬

ティアに向かって最高のどや顔を見せつけた。

俺はそっとティアの顔へと視線を移す。
・・・やばい、ティアのヤツ、笑ってるけど・・・

目が笑ってねえ!

「ふーん、すごいねぇ、リリーナ!」

冷や汗をかいた。
ティアの声が・・・重い、冷たい!
悔しさがにじみ出ているようだ。

「あ、ユウはここで待ってなよ?
私も、『ユウの分』を盛ってくるから。」

「あ・・・ああ・・・た、頼むよ、ティア。」

ものすごい威圧感だった。
バイキングコーナーへときびすを返すティアの後ろ姿を見て、さっきの俺には選択肢が「はい」か「イエス」か「ああ頼む」しか許されていなかったかのように感じた。
・・・2人の『決闘』はまだ終わっていなかったか・・・
しかし今回はティアが分が悪すぎる、あんな反則的な盛り付けのリリーナにどうやって対抗するつもりだ!?
悪いがリリーナほどの盛り付けを見たのは産まれて初めてだ!
ティアにはこの決闘に勝ち目はねえ!

俺がティアの勝算を考え続けてややしばらく。
ティアが、帰ってくる。

「・・・ほら!ユウ!食べなよ!」

「・・・!?」

「ぶっ!ちょっ!ティア!?
あなた、どういう教育を受けたのかしら?
ふふふ、ユウもかわいそうね・・・せっかくの高級バイキングなのに、そんな盛り方されちゃってさ、ふふふ。」

「もぐもぐ、なんだよそれ!?
・・・俺のティアさんのイメージとちょっと違ったな・・・もぐもぐ。」

ランスもリリーナも言いたい放題なのもそのはず。
ティアの盛り付け、絶望的だ・・・

地獄絵図───そんな例えが適用出来てしまう。
だが俺はそれ以上に驚いた。
ティアは俺が知る限りでは食い物の盛り付けは上手なほうだ。
こんな盛り方は初めてみたけど、その思惑は盛り付けの内容から察した。

まず第一に、内容がすべて俺の好物ばかりだ。
皿に盛ってあるものだけじゃねえ、大きめの二つのコップに入ったウーロン茶、氷は入っていない、これは食事中にはウーロン茶が基本で、且つ、多めに飲む俺のために二杯持ってきてくれたのだろう。
氷があえて入っていないのも、俺の好みだ。

次に、この一見乱雑にみえつつも綺麗に区画分けされている盛り付け。
一番下に唐揚げがいくつかあって、その上には俺の好みのサラダ。
そのサラダの上にはあえてなんのソースもかかっていないただのパスタ、さらに上には少しテカリのあるフライドポテト・・・ふむ。

次、ご飯からは湯気が少ない、俺は熱いご飯は苦手だ、あえて先に盛って冷ましたのだろう。
それについてる納豆は・・・すでに混ぜてある・・・決まりだな。
まぁ、これはリリーナとランスにはわからんだろうな。
流石ティアだぜ。

「ほら、ユウも固まっちゃってるじゃないのよー。
それはもうティアが食べたら?
もしよかったらユウの分も私が───

「いや、いい。
さんきゅ、ティア。」

「ふふ、どういたしまして。ユウ。
ちゃーんと『感想』を聞かせてね?」

「ふ、ふんだ、なによユウまで!
そんなまずそうなのよりも、私の盛り付けの方がいいに決まってるんだから!
きっと後悔するからね!」

いいや、しないね!
リリーナからしたら、妙に満足げな俺と、妙に自信がありげなティアが気に入らないだろうな。
だが、間違いない、このティアの盛り付けは、この上なく最高の盛り付けだな。

俺は不満げなリリーナを余所に、一番上のフライドポテトに手をつけた。

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わかってはいた・・・けど。

「んまいっ!」

予想以上!やっぱりな!
ティアはちゃんと俺の好みを考えて盛り付けしてきてくれたみてえだな、見た目はともかく・・・だけど。
ただのフライドポテトかと思いきや案の定俺の好きなバターポテトだ!
バターの味付けが絶妙に俺の好みすぎて、ポテトの下のホテル料理への期待も大きく膨らむ。

「ふーん、そんなに声に出すほどうまいか?
このフライドポテト。」

自分の皿に美しく盛ってあるフライドポテトを拾いつつ、ランスが不思議そうな顔をしている。
たぶん・・・

「ランスのは普通のフライドポテトなんだろ?
ほら、こっち食って見ろよ!」

リリーナはバターポテトを選んでこなかったんだろうな。
仕方ないから俺のバターポテトを分けてやる。

「・・・普通?」

ん?なんだ?
リリーナも不思議そうな顔してるな。
不思議そうなリリーナを横目に、ランスも俺のポテトに手を伸ばし───口へとほおり込む。

「・・・うまい!?
なんだよこれ!バターポテトの方がうめえじゃん!
リリーナ!なんでこっち盛ってきてくれなかったんだよ?」

そうだろうそうだろう!
うまいよな、バターポテト。
リリーナはシンプルな方が好きなんだろう、きっと。
だから普通のポテトをもってきたんだろうな。

「はっ!?バター!?」

ん?なんだ?なにリリーナのヤツは慌ててんだ?

「おう、リリーナも食ってみろよ。
バターポテトの方がうまいぞ。
いや、俺は普通のポテトの方は食ってねえから知らねえけど。」

皿を、リリーナにも向けてやる。
リリーナが火傷の瞬間を逆再生したかの様な速さでポテトに手をつけ、口にほおり込む。
みるみるうちに表情が変わり、早送りのような速さでティアをみた。
・・・ティア、すっげえどや顔だな、お前が作ったポテトじゃないだろうに・・・。
と、俺はその時は思うも次のリリーナの言葉を耳にして度肝を抜かれた。

「ちょっ!?えっ!?
ティア!バターポテトなんてどこにあったの!?」

「は?何言ってんだよリリーナ、そりゃポテトなんだからポテトのコーナーにあるんだろ?
ティアさんはよく気がつくな。」

ランスの言うとおりだろ。
きっとリリーナが見落としてただけでコンソメやら海苔しおやらいろいろあるんだろうな。
俺はそっとポテトのコーナーへと視線を向け、言葉を失う。
同時にティアがリリーナの質問にケロッと答えた。

「そんなもん、あるわけないでしょ?」

「「・・・え?」」

ランスとリリーナが固まった。
いや、俺も固まってる、だってそうだろ?
確かに今の俺の視線の先、ポテトのコーナーはどう見ても一種類のポテトしか置いてねえ。
調味料らしきもんも見当たらない・・・
バター味のポテトなんて・・・どこから───

「私が作ったからね。
ユウ、バターポテトが好きなの知ってるし。」

続けざまのティアの言葉に、はっとさせられた。
・・・なるほどな、こいつ・・・

「は!?作った!?
あなた何言ってるの!?」

依然慌てた様子のリリーナ、ランスもオロオロしてるな。
ちょっと煽ってみるか。

「・・・流石だ。やるじゃん!ティア!」

「うふふ、ありがと。
でもね、ユウ、食べて欲しいのはポテトだけじゃないよ?
ほら、次、食べていってよ。」

ティアは・・・パンのコーナーにあったパン用のバターを使ったんだな。
しかもただ乗せただけじゃねえ、バイキングだからポテトが冷めるのは仕方の無いことだ、そんなポテトに普通のバターを乗せたんじゃあとてもじゃないけど融けきらない。
こいつ、そこまで考えてバターを何かしらで一度溶かして上からかけたみたいだな・・・いや、細かく刻んでから乗せたのか?
どちらにしても、まるでもともとバターの味がついてたかのような自然なバター味!
俺も・・・騙された。

「な・・・なによ・・・どういうことなの・・・?」

まだわからねえのかよ、リリーナは・・・
ランスは勝手に人のポテト食ってやがるし・・・
俺は目配せで、リリーナに説明すべきかをティアに問う。
俺の視線に気づいたティアはゆっくり首を横に振り、最高にゲスな表情でリリーナに自ら説明を始めた。

「パン用のバターよ、リリーナ。
そんなことにも気づかないの?
それより私は『バター味のポテトを作った』ことよりも『ちゃんとユウの好みを考えて盛り付けた』ってことを考えてほしいんだけどねぇ・・・?」

「・・・!?
どういう意味!?」

固唾を呑んで冷や汗を流すリリーナの横で、突然ランスが声をあげる。

「うおっ!パスタがうめえ!
バター味にポテトが混ざったみたいな!!」

「うふふ、そうでしょ?ポテトの下に敷くためにあえてなにもソースはかけなかったの、おいしい?ランス?」

おお・・・なるほど・・・
バターをかけるのを前提にしてたから味付けしてなかったのか!

「それにね───

ん?まだなんかあんのか?
つか、ランスの野郎、なに人のメシ食ってやがる!
俺はランスから皿を取り返して残りのパスタに舌鼓を打つ。
シンプルな塩味にバターのコクが乗っかったパスタもうまいな!
で、それに?なんだ?

───パスタを敷いた理由は、その下のサラダの水分がポテトに移っちゃわないようにするためよ。
サラダの水分でポテトのサクサク感が死んじゃったら美味しくないでしょ?
そして───

ティアの言葉を待たずして、俺はティアの言いたいことに気づかされた。
───パスタの味が───変わった!?

───パスタはサラダからの水分を吸ってなんぼよ。
パスタはサラダにかかったドレッシングを吸って、シンプルなバターポテト味に飽きる辺りで・・・あっさりドレッシング味に変化するわ!」

「んなっ・・・なんですって!?
ユッ!ユウ!?どうなの!?今のあなたのパスタはっ!?」

驚き、且つ悔しそうに顔を歪めるリリーナ。
リリーナはすごい勢いで俺に感想を求めた。
いや、まてよ、俺だって驚いてる!
だって、この味・・・!

「うめえ!これ!俺の・・・!!」

「そうだよ!
ユウの一番好きな味になるようにちゃんと梅ドレッシング2対しそドレッシング1でブレンドしてあるの!
ふふ、リリーナ?あなたは見た目ばっかり気にして
果たして『ランスの好み』は気にしてたのかしら?
あーらら、ランスがかわいそうね?」

ティアを・・・信じてよかった!
おれはこいつのおかげでいま、高級ホテルの料理を自分が一番好きな味付けで食べれている!
そりゃ料理の味わい方としては邪道かもしれねえけど、俺にとってはこれが一番うまいからどうでもいい!

「うっ・・・!な・・・なによ!私だって!・・・私だってランスの・・・っ!ぐすっ!」

あ、ティアのやつ、またリリーナのこと・・・

「うげっ!リリーナ!これ貝入ってるじゃん!
俺貝嫌いなのに!」

・・・っのランスは本当に・・・こいつぜってえ馬鹿で空気読めねえだろ。

「・・・っ!?ランスまで!?
・・・ぐすっ、うぇ・・・
うわああああん!!」

それみろ、リリーナのやつまた本気で泣き出しちまったじゃねえかよ!
リリーナのこと泣かしたくせに、ティアはまだどや顔してるな・・・女、怖えな。

「あと!ユウ!下の唐揚げもたべてよ!
ドレッシングがいい感じについててあっさり食べれるんだよ!
それにね!納豆!
ユウのこだわり通りに混ぜ始めて10回目にからしを入れて、35回目に醤油をひとまわし!全部で40回かき混ぜたんだよ!完璧でしょ!?」

「うえええええん!!私だってランスの好みぐらい!ランスの好きなものぐらい!!
びええええええ!!!」

・・・ティア・・・こいつ・・・リリーナのこと完全に

 ラ イ バ ル 視 

してやがる!!
さっきの戦闘の時にも思ったけど・・・やりすぎだな。

「ま、リリーナは『女の子』としては完璧よね?
でもそれじゃあね、絶対に『いい女』にはなれないわね。
はいはい、この決闘は間違いなく私の勝ち。
ほら、泣き止んで?ね?まだ一勝一敗でしょ?
ぬふふふふふ」

「うあああああん!ばかああああああ!!」

・・・最っ低な女だ、ティア・アルノーティス。
でも・・・悔しいけど・・・認めたくねえけど・・・盛り付けは・・・ティアの勝ちだ、俺からみればだけどな。
そして・・・いい女か・・・

こんなこと、おかしい、絶対におかしいんだ、わかってる、わかってるけどな───

この状況でティアかリリーナのどっちが嫁にほしいかったら・・・ティアだな・・・

おかしいよな。
世の中。
リリーナのほうが絶対まともなのに・・・そう、思わせられるんだから・・・

その後のティアはいかにも
『ユウの盛り付けはわざとああなりました』
と言わんばかりに手際よく上品にその場で即席サンドイッチをホテル料理から作り、優雅に口へと運んでいた。
ついでにタマの分も作る手際の良さだった。

それをみてリリーナはさらに泣き出し、悔しがっていた。

女の子と女・・・それは、きっと別の生き物なのだろうと、2人を眺めて俺は思った。

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───

「あ、ババだ。
ユウよ、さっきの話について考えてくれたのか?」

「くそ、ババか。
あぁ、それは結局仮契約の内容次第ってことで俺の中で落ち着いた。
ほれ、ティア。」

「ん。
・・・あらら、ババじゃない。
私はもうユウに任せるよ。
あ、でも仮契約の話は私はパス、すくなくとも一月先まではタマの特訓で手一杯。
・・・さぁ?リリーナ?あなたの番よ?
さっさとババを引きなさい!」

「ふふ・・・ばかね、ティア!私がババを引くなんてことは絶対に・・・
・・・うーん、ババだ。
それじゃあとりあえずは有翼虎の依頼からかな。
はい、ユウ。」

激闘の夕食を終えて部屋に戻ってきた俺達は、今後の予定会議を兼ねてババ抜き大会中だ。
相変わらずティアとリリーナの間には熱い対抗心が燃え続けてて俺とランスは置いてけぼり、まぁ、すくなくともこの段階では俺とランスは仲が悪くはないと思う。
人って、第一印象が大事だもんな。
第一印象に関してはティアもリリーナも悪くなかったはずなんだけど・・・ランスのせいだな、ティアとリリーナがこんなんになっちまったのは。
それにしてもなぁ・・・俺もティアとはライバルでもあるつもりだったけど、なんか違うな、俺とティアと、ティアとリリーナだと。
女同士っていうかなんというか、ドロドロしてる、ライバルってもっと爽やかで清々しいもんじゃねえのか?
でもこうやってみてるとリリーナだけは本気で、ティアの方は遊びに見えるな。
リリーナを見てるとパペートさんと遊んでたタマを思い出す。

「おう。
・・・はいはい、ババババ。
そうそう、さっき依頼所ではランスとリリーナは有翼虎について知ってそうな言いぶりだったけど、ふたりとも有翼虎とかみたことあるのか?」

ランスは確か初めて会ったときに
『有翼虎は危険』
とか言ってた気がする、うろ覚えだけどな。
その『危険』っていうのがあくまでもランスとリリーナからみてなのか、それとも他人から得た情報なのか・・・この違いは大きい。

「・・・なんだよ!このトランプ全部ババなんじゃねえのか?!
有翼虎なら狩ったことがあるよ、俺とリリーナで力を合わせてな。
いやぁ、強敵だったぜ!
はい、ティアさん。」

「・・・ねぇ、思ったんだけどさっきから順番滅茶苦茶じゃない?
・・・あ、ババが・・・揃った!!?私!ババもう一枚持ってた!?」

「「「!!?」」」

「・・・で、ランスとリリーナはその、有翼虎?
を何頭狩ったわけ?
はい、リリーナ。」

「あなた、ババ揃えて捨てたくせに私に何を引けっていうのよ・・・
虎の数は一頭で限界だったに決まってるじゃないの、あなたが考えてるほど翼の生えた虎は甘くないわよ?
・・・え・・・ババ!!?」

「そう、ババ。
甘いわね、リリーナ、虎の苦さを語るあまりに私がババを一枚しか捨てなかったことに気づかなかったようね・・・あなたには、道化がお似合いよ。」

「・・・っぐぬぬ、小癪な・・・!!
はい!ランス!
で!?いつ狩りに行くわけ!?虎!!」

「どうせババなんだろ!?ちくしょう!
・・・ほらな。
俺はいつでもいい、ユウ、決めてくれ!」

ランスが、俺にトランプを向けている。
正しい順番・・・?

「そうだな・・・
ふむ。3か。」

揃った。
あがり。
俺はトランプを三人の前へと投げ出し、日にちを決めた。

「リリーナも病み上がりだし・・・
3日後で・・・どうだ?」

「「さんせーい」」

「3だけに?」

俺の上がりを見届けて、ランスとリリーナはトランプを投げた。
ティアだけが小難しい顔でトランプを眺めつつくだらないことを言っている。
夜も更けたな、今夜は結局リリーナはティアの部屋に、ランスは俺の部屋に泊まることになっている。
ティアとリリーナが問題を起こさなきゃいいんだけど・・・。

「ふわぁーぁ、それじゃ、日にちも決まったし寝ようぜ。
ユウ、部屋何号室?」

「案内する。
お開きだな、ふたりとも喧嘩しないで早く寝ろよ?」

「「わかってるよ」」

同時に声があがり、同時に「はっ」とし、同時ににらみ合ってる、なんなんだよこいつら。
ほんとは仲いいんじゃねえのか?
部屋の空気がよどんできた、面倒なことになる前に俺とランスはティアの部屋を後にし、俺の部屋へと移動する。

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ジャージのごわごわ感、嫌いじゃないぜ。

朝だ、ティアだ、タマトレだ!
ということで3日後の虎退治までは俺もティアのタマトレを手伝うことにした。・・・いや、なった。起こされたんだ、日が昇る頃に。
ランスの野郎は一回は起きたくせに二度寝しやがった・・・裏切り者だ。
早朝の砂浜で俺は何故かタマと一緒に走り込みをさせられている・・・靴に砂が入ってきて気持ち悪い。

「はい!あと10往復!!獣王だけに!!」

「俺、人間。だからあと二往復。」

「ずるいよ!私も人間になりたい!!」

「お前も人間だろ?
つか、なんでコーチが一緒になって走ってんだよ。」

俺の隣では真新しい白いジャージが走っていた。

「違うの!今の私は鬼コーチなの!鬼なの!
まずはコーチがやる気をみせないとだれもついてこないでしょ!?
それに見てるだけじゃ私も一緒に涙を流せないじゃない!ずるいよ!」

鬼も10往復らしい。
もう獣王でもなんでもいいや、ひとりで泣いてろばかばかしい。
俺は走るのをやめて砂のお城を作り始める、せっかく海に遊びにきたんだ、このぐらいしたって罰はあたらんだろ。
あー、楽しい、今日はトンネルだって作れそうな気分だ、城にトンネルなんてロマンすぎてタマトレどころの騒ぎじゃねえ。

「ユウ!さぼっちゃダメだよ!タマだってつらい思いして走ってるんだよ!?
そんなんじゃ闘技場の砂持って帰ってこれないよ!!」

そんなもんいらん、ぺしぺし。
ほーら、大きな大きな───!?
・・・俺の砂のお城が破壊された・・・タマだ、タマがブルブル震えながら俺の砂のお城の残骸をてしてし踏んでる。
もしかして・・・怒ってる・・・?

「すごい!タマ!ストレート一発でユウのお城が粉々だよ!!
これなら一月後には砂のお城の城主も粉々に・・・」

褒めて伸ばすタイプらしい。
いや、それよりだ、こいつほんとうに俺とタマを闘わせる気なのか!?

「ふざけんな、俺をこんな砂粒と一緒にすんじゃねえよ!
しかしティア・・・その、ほんとに俺はタマと闘わなきゃいけないの?」

「ん?なに言ってるの?ユウ?」

あっはは、そうだよな、冗談だったんだよな?

「いや、なんでもない、そうだよな、俺がタマと闘わなきゃならな───

「闘いにもする気は無いわよ、私は。
ユウはタマの餌になるのよ!!」

「・・・」

拝啓、メロス殿

ご機嫌いかがですか?
私は元気です、ええ、少なくとも一月後までは。
あなたは、こんな気持ちで走っていたのですね?
いいんです、いいんですよ、セリヌンティウスがなんですか、王様がなんですか、この世に神などいないのです、いるのは鬼と獣王のみです、もうすぐ私も立派なパペートさんになって、あなたをお空の上から───

「ああ、それよりね、ユウ?」

───そう、あれは寒い寒い冬の日、私はマッチを売りに凍える真冬の空の下、右手に大きなカゴと左手にはセリヌンティウスの形見の───

「ねえ!ユウ!!きいてるの!?」

───その時だ、俺の世界が第七世界まで広がり、全てを超えて神となった暁に凶暴なタマを一撃でタマサブローしつつ───

「ユウ!なにぼーっとしてるの!!?」


「うるせえな!聞いてねえよ!!なんだよ!?
お前にメロスの気持ちがわかるのか!?ふざけんな!!
もうすぐ俺は神になってメロスと一つになってだなぁ!!第八世界の───

「まーた男の人とのえっちな想像して!
なによメロスと一つになってって!
それより私の話も聞いてよ!ホモばっかりしてないでさぁ!」

「お前の話・・・?」

俺は現実に引き戻された。
どうやらティアが少し真面目な話を始めるらしい。

「そう、やっと聞く気になったの?
あのね、3日後の有翼虎の話なんだけど・・・」

「・・・?
お前は虎狩りには参加しないんだろ?」

「うん、そうなんだけど・・・」

「・・・なんだけど?」

難しい顔をしている、言葉を選んでいる様にも見える。
タマを・・・ちらちらと見ている。

「あのさ、タマも連れていけないかなー・・・って。
ほら、獣祭りはあくまでも獣対獣の試合になるんでしょ?
それならタマには一度ぐらい獣との戦いをさせておいた方がいいと思うの。
ダメかな・・・?」

それは・・・構わないけど。
どういうことだ?

「・・・いや、だってお前さ、タマトレで忙しいから参加しないって・・・」

「うん・・・ごめん、正直に話すよ。
建前並べてごまかそうとした・・・」

「・・・?」

「昨日の晩、少し話してたんだけどさ・・・
リリーナの獣嫌い・・・タマで治せないかなって・・・思って・・・」

あぁー、なるほどな。

「確かに・・・そうだな、一応は『仮契約』だもんな・・・」

そうだ、もしかしたら俺たちはこれからランスとリリーナも仲間に入れて旅をする事になるかもしれない、そうなればもちろん必然的にタマとリリーナが一緒に旅をする事になる。
そうなるかもしれない上で、リリーナの獣嫌いはマイナスにしかならないよな・・・
でも・・・

「でもさ、話・・・聞いただろ?
そう簡単には治せないと・・・俺は思う。」

「・・・」

ましてや変身後のタマの姿があれだ。
よくよくタマを見知っている俺達ですら威圧感を感じるのに、リリーナがあのタマをみて獣慣れなどするはずもない。

「うーん、そっか・・・そうだよね。
ごめん、やっぱりその日も私とタマは別で特訓してるよ。
・・・でも、トラウマとはいえただの誤解でさ、仲間になる人間に好かれないなんて・・・タマがかわいそうだよ・・・
リリーナの気持ちもわかるけどさ・・・」

無邪気にフナムシを追い回しているタマを見て、俺もなんとも言えない気持ちになる。
こいつは・・・言葉を話せないんだもんな・・・
なのに・・・
・・・確かに、ちょっと理不尽かもな。

「うーん、そうだな。
まぁ、その日まではあと3日あるんだ、2日でもう少し考えてみようぜ。
・・・タマが、リリーナに好かれる方法。」

タマも遊び始めたし、俺とティアの間にも妙な空気が流れてしまう。
・・・朝トレは、とりあえず終わりだな。

「戻ろうか、朝ご飯たべよ・・・?」

「・・・おう。」


フナムシをくわえたタマを抱えて俺達はホテルへと足を向ける。
この何も語らない潤んだ瞳は、一体何を思うのだろうか?
タマは、嫌われているということを自覚できているのだろうか・・・
自覚しているにしても、そうでないにしても・・・なんだかもどかしい気持ちで胸が締め付けられる。

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