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「っぐっ!くそ!」

「おいタマジローさん!?この遺跡!封印されてたんじゃねえのかよ!?
なんで普通に魔物が出やがる!」

「しらねーよ!俺に聞くんじゃねえ!!」

事の始まりは数十秒前に遡る。
三人は巨大な扉を抜けて、大きな通路をしばらく歩いていた。
その途中でティアが突然天井近くの壁を指差す。

「わぁ!みてみて!あのトカゲの彫刻!すごい!」

そして今に至る。
三人は大トカゲに追われている。
ティアが白くて美しい彫刻だと思っていたそれは、紛れもなく生物であった、それは三人をみるやいなや動き出し、襲い始めた。
あまりに突然の出来事に驚いた三人は戦意を削がれて大絶賛逃走中である。

「トカゲのわりには動きがトロイからまだなんとかなるものの・・・このままじゃ・・・
ユウ!なんとかしやがれ!」

「は!?俺!?・・・くそ!見てろよ・・・!!

秘技!『壁祭り』!!」

ユウは杖に魔力を込めて魔法を放つ。
トカゲと三人の間に瞬時に火、氷、竜巻、石の壁が現れる・・・が。

「うわあああ!ユウ!あいつ全部普通に突破してきたよ!?」

効果はイマイチ薄かった。
トカゲは側壁、天井とをつたって全て魔法の壁をやり過ごす。

「やる気あんのかよ!?もういい!俺がやる!」

タマジローは振り向いてトカゲと向き合い双剣を構えた。

「タマジロー竜巻タイフーントルネードマキシマム!!」

などと叫びながらタマジローは風魔法の発動と同時に剣を振り回す。
若干大トカゲの体が浮き上がり、次々にその体に切り傷が刻まれていく。
竜巻の風魔法が切れる頃合いでタマジローは指示を出す。

「いまだ!やりやがれ!」

「「おあああああっ!!!」」

どべっと、地面にひれ伏した大トカゲに2人の人間が襲いかかった。

「フロスト=メイス!!メイスメイス!も一つメイス!」

「轟槌剣打!!剣打剣打!も一つ剣打!」

何かに取り憑かれたかのように2人は大トカゲをタコ殴る、殴る。ひたすら殴る。
冷気を帯びた杖と斬れない剣の豪雨をひたすらに浴びせ続ける。


「よしよし・・・

・・・ちょ、お前ら、もういいだろ?」

「「・・・」」

「おい!もうやめろ!トカゲさん死んじまうだろ!?」

「「・・・」」

2人はタマジローを無視して無言で殴り続ける。
しばらくすると、大トカゲは動かなくなった。

「・・・よし、勝った!!」

「っちょ!ユウ!寒い!なんで氷の魔法ばっかり!」

「・・・あのな?おまえらには戦闘における美学っつうもんがねえのか?
あれじゃあ俺が子悪党で、おまえらが子分Aと、子分Bみたいだったじゃねえか。」

「悪夢のナイトメアみたいなこと言ってた人に、美学がどうとか言われたくねえぜ。」

「どちらかというとフルムーン満月みたいな感じじゃなかった?」

「・・・どうだっていいだろ?
ったく、おまえらが殴りすぎたせいでトカゲの生態がわからなかったじゃねえかよ。
原型とどめてねえし。
このトカゲをよくみることでほかにどんなのが遺跡に潜んでるのか推測も立てれたかもしれねえだろ?」

タマジローはそっとトカゲだったものに近付いた
───その時───

「っ!?」

「うわっ!タマジローさん!?」

「と!トカゲが!」

それは突然青色の炎を上げて燃え、煤も残さず消えてしまった。

「・・・なるほど・・・」

「な、なんで、急に燃やしたりなんてしたんだよ・・・タマジローさん?」

「いや、ちがう、勝手に燃えた。
このトカゲ野郎、魔力で出来てやがったんだ。」

「魔力?」

「ああ、外部の人間か、それとも遺跡の関係者の術か・・・魔力の質や状況から見るに、後者の方が確率は高えな・・・」

「た!タマジローさん!そ!それって!つまり!!?」

「・・・そうだ、ティア。
お前さん、もしかしたら本当に本物の宝の地図を釣り上げちまったのかもしれねえな・・・」

タマジローは不敵な笑みを浮かべ、ユウとティアは生唾をのみ込んだ。
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「宝ではないにしても、今のが本当に遺跡の関係者の仕掛けた監視、排除用のトラップだったとしたら・・・あまり公にしたくはないなにかがこの遺跡にはあるようだな。
おそらくだが、リュックの持ち主の狙いもそれだろう。」

「マジかよタマジローさん・・・しかしティア、たぶんお前の想像してるようなもんはないと思うぞ?」

「え!?なんで考えてることわかったの!?」

「長く一緒にいるからな、表情でわかる。
どうせ虹色に輝くなにかしらでも想像してたんだろ?
だいたいお前の考えるお宝ったら、虹色の水晶みたいな鉱石ばっかりだもんな。」

「・・・まえにアイリにも考えてることバレたし、お姉さんにもバレたし・・・
もしかして私の考えてることって頭の上に浮かんでたりするのかな・・・それ、他人に見えちゃったりしてるのかな・・・」

「とにかく、それを探すのを目標にするか、なんだ?虹色の水晶でもいいや。
早く行こうぜ。」

タマジローは足を遺跡の奥へと進めようと振り返る。
そして、固まった。

「・・・」

「どうしたんだよ、タマジローさん。」

「なにかあったんですか?」

ギギギギと音が聞こえてきそうなぎこちなさでタマジローは振り向く、その表情は焦りとも混乱ともとれるようなもので、冷や汗までかいている。
そして、口を開く。

「・・・なあ、こんなにたくさん・・・道があったか?」

「え?」

「はい?」

タマジローを視界から除けるように2人はタマジローの左右へとそれぞれ身を出し、また、絶句する。

道が三つに分かれている。
三人の記憶では、道はずっと一本道で、トカゲに出くわしてから逃げてきた道も間違いなく一本道であった。
しかし

道が三つに分かれている。

「あの・・・タマジローさ・・・」

「右だ!」「左だ!」

ティアの言葉を遮り、ユウとタマジローは全く正反対の言葉を同時にはなった。
内心真ん中が怪しいと思っていたティアはとりあえずそっと黙ることにした。


「はぁん!?右だと!?普通3択なら左が正解だと相場が決まってるんだよ!」

「何言ってんだよタマジローさん!この状況で左を選ぶなんてふつうじゃねえよ!」

「・・・」

「・・・」

2人は無言で向き合い、頷く。
そして突然声を荒げる。

「「多数決だ!ティア!決めろ!」」

びくりとティアは肩をすくめた。

「えー・・・っと、その・・・」

「右だろ・・・?」

「左だよなぁ・・・?」

「・・・ま・・・まんな───

「「はぁん!?」」

「ひぁあっ・・・!!ごめんなさい!」

「・・・おう、ユウよ。」

「ああ、俺も同じこと思ったぜ」

「「真ん中だな。」」

女の勘はよく当たる。
2人は同時にそんなこと考えた。
間をとるという意味でもそれが一番ちょうどいい気もしていた。
「ほぅー」と一息、ティアは溜め息を漏らし、真ん中の道へと足を進める2人について行く。

しばらく歩き進め、三人は足を止める。

「・・・またかよ。」

「なんだよこれ、造りもさっきとほとんどおなじじゃねえかよ。」

「当たったの?ハズレなの?」

三人の前にはまた先ほどと同じ様な道が広がっていた。
その状況に三人は首を傾げ、作戦会議に移る。

「なあ、タマジローさん、これ・・・どこまで分かれ道になってるんだ?
仮にこの分岐が数カ所あるとすると、最終的にたどり着く部屋の数は膨大な数にならねえか?」

「これはきっと、決まった順番で進まねえとうんたらかんたらなパターンだな。
二度あることは三度ある、おそらく、このうちの一つを選んだとしてもまたその先には同じ様な分岐がある可能性が高い。」

「じゃ!じゃあ!正解の道を間違いなく選び続けないと・・・!!」

「そうだ、どこへたどり着くのかわからねえ。
そもそも正解なんてあるのか?これ・・・」

三人はその場に座り込んでさらに話し込む。

「そうだ、リュックのなかに、なにかヒントのようなものは?」

「ああ、なるほど・・・ティア、どうだ?」

「えーっと・・・」

ティアはずるりとショルダーバッグの中から『リュックの中身セット』を引きずり出し、床へと広げる。
そして三人は無言でそれを眺める。

「・・・なぁ、タマジローさん・・・」

「・・・ちくしょう、詰んだな・・・」

「そんな・・・」

リュックの中にそれらしき手がかりは見あたらなかった。
三人は引き続き作戦会議にふける。

「・・・そうだ!水の音!
水の流れ始めの方へと向かっていけば少なくともリュックの持ち主の手がかりはあるかもしれない!
それが正解ではないにしろ、なにかしらのヒントにはなるんじゃねえか!?」

「ふむ、なるほど、で?
どこから水の音が聞こえるんだよ、ユウ。」

「・・・いわれてみると、聞こえなくなりましたね・・・水の音・・・」

三人は辺りをぐるぐる見回し、水の音を探る・・・が、その場に響くのは三人の息づかいと衣擦れの音のみであった。
そこで三人は諦める。

「・・・まあ、仕方ないな、この際勘に頼るしかねえな!左だ!」

「いや、次こそ右だろ!」

「また真ん中だと思うんだけどなぁ・・・」

三人は己の勘を信じて足を進める。

───一時間後───

「おかしい!おかしいだろこれ!ふざけんなよ!?」

「そうだよ!おかしいよ!なによこれ!?」

「お、落ち着けよ、2人とも・・・しかしまあ、長ぇなあ。」

三人はもう何度目になるのかもわからない分岐点の前にいた。
心身共に疲れきり、ユウもティアもイライラを隠せない。

「こういうときこそ、な?
まずは考えるんだ。確かにこれはおかしいな。」

「そうだよタマジローさん!タマジローさんもおかしいと思うだろ!?」

「思いますよね!?」

「だああ!!から落ち着きやがれ!!
一通り全ての道は数回通った。
何度も同じ道を選んだり、順番に選んだりもした。
しかし今目の前の道はさっきとなにひとつかわらねえ3択・・・おい、ユウ。」

「なんだよ。」

「目印つけとけ。」

「目印?」

「適当に魔法でなんか作れ。」

「・・・?
うん、わかった。」

ユウは杖尻を床に置き、魔力を込める。
同時に前方の地面がせり上がり、石の柱が出来上がる。

「アース=ポール。
こんなんでいいかい?タマジローさん。」

「上出来だな。さぁ、行くぞ。」

満足げに頷き、タマジローは歩き始める。
その様子にポカンとしていたティアは慌ててついていく。

「はっ!はい!・・・どの道にするんですか?」

「どこでもいい、単なる実験だ。」

「「??」」

2人はタマジローの後ろにつき、真ん中の道へと入る。

───数分後───

「おっ・・・おお!!」

「なるほど!こんなふうに!!」

「ここまでは予想通り、あとはこれからどうするかだな!」

三人はまた同じ分岐点にたどり着く。
そう、ユウがアース=ポールを立てた分岐点に。

「じゃ!じゃ!じゃあ!つまり・・・!」

「そうだな!やってみるか!?」

「お前ら、なにをするつもりだ?」

「俺右!」

「私真ん中!」

ユウとティアはそれぞれ別の道に消え、タマジローは無言でそれを見送る。

───さらに数分後───

「おおっ!?ティア!!」

「ぬぁっ!?ユウ!!」

「「そしてタマジローさん!!」」

2人はまぶしい笑顔でタマジローを見る。


「・・・わかったろ?そう、ループしてたんだよ、道が。
糞が、小賢しいぜ。」

タマジローは吐き捨てるように言い、アース=ポールをけり砕いた。

「つーことは、これも罠か?さっきのトカゲみたいな!」

「ああ、そうだな、あのトカゲは監視用でも排除用でもなくフェイクだったようだな。
この無限の通路の罠にはめるための・・・」

「それなら!あとはここからどう抜け出せばいいかを考えるだけですね!」

「そうだ。そうなんだがな・・・破るための方法が見当たらねえ。
ヒントの一つでもあればいいんだが・・・
おそらくこれは結界やらなんやらの類の空間だろう。
ちゃんとした手順を踏めばそれこそ一般人でも抜けれるんだろうが・・・わからねえ」

「だよなぁ、どうすればいいんだか・・・」

ユウとタマジローは頭を抱えて座り込んでしまう。
そんな様子をティアは不思議そうに眺める。

「どうしたんですか?結界なんですよね?これ。」

「そうだ、だから破る方法をだな・・・」

「ティア、なんか、心あたりねえか?なんでもいいんだ、なにか・・・」

「もう!ユウまで!私のことなんだと思ってるのかしら?
ちょっと杖かしてよ!
自分の魔法じゃないし、これはちょっと素手じゃあキツいかも。」

「はぁ?何を言ってんだか・・・ほらよ。使えよ。」

プンスと頬を膨らませるティアにユウは杖を渡す。

「おい、ティア、なにするんだよ?杖なんかもって。」

「見ててください、タマジローさん。
私、いまでも毎晩封印関係の魔法は使ってますから、この手のことはユウよりすごいんですよ?」

ティアは自慢げに頭の上で杖を回し、ついで勢いよく杖尻を地面に突き立てた。

「っ!?・・・なっ・・・!!」

「・・・ちっ。才能か、こればっかりは努力じゃ追いつけねえか・・・」

ティアが杖尻を突き立てた直後、ガラスが割れるような大きな音が鳴り響き、周りの景色が『砕けた』。
そして、それらが全て崩れ落ちて消える頃、三人は大トカゲと遭遇した地点よりも少し手前の通路にいた。

「私達、『一般人』じゃないじゃないですか。タマジローさん?」

ティアはユウへと杖を投げ、ユウはそれをキャッチしつつ不満げに言葉を吐く。

「なんだよ、毎晩封印関係の魔法を使ってるって・・・」

「日記よ。日記。
誰にも見られないように毎晩自分で強力な封印をかけては解いて、またかけては破ってで日に日にこの手の事が得意になってるの。
どうしても私の日記が見たかったら破ってみなさいよ、こんなのよりも、ずっとずっと強力なんだから。」

「なっ・・・おい、ユウ・・・?」

「ああ、タマジローさんは知らなかったっけ?
コイツ、昔っから異様に魔法が得意なんだよ、使わないだけで。」

「・・・そ、そういえば、そんな話もあったっけか?
・・・しかしコイツは驚いたな・・・
正直、魔法を研究している身分としちゃあ嫉妬もんだ・・・
ティアからしたら俺の部屋の封印なんて障子に穴を開けるように破れるのか・・・」

「まぁ、そうだろうな。
アイリさんでも蹴破るだけでOKなんだ、ティアならペールタウンの外からでも破れるんじゃねえの?知らねえけど。」

ユウの言葉聞いたティアは難しい顔をする。

「・・・そうか・・・そうすればわざわざアイリに頼まなくても開けれたんだ・・・あのドア・・・」

三人は引き続き遺跡探索に戻る。


「こうか?」

タマジローがユウから借りた杖を振る。

「それじゃあダメですよ、もっとこう、ソイヤ!って感じで」

「ふむ・・・ソイヤ!」

「それじゃあ豆ですよ、もっとこう、セイヤ!って感じで」

「ああん?・・・セイヤ!」

「それじゃあクリスマスですよ、もっとこう・・・」

「あきらめろよ、タマジローさん。
ティアのアドバイスじゃよくわからねえんだ、俺も昔はがんばったけど、結局参考になったのは魔法の形だけだよ。
ほとんど我流だ。」

「そうなのか。
まあ、確かにわからんな。なんだよソイヤって・・・」

「これ以上に説明のしようもないんだよなぁ・・・
魔法はちょっと本を読んでからすぐ使えるようになったから、理論とかはよくわからないし・・・」

タマジローはユウに杖を返して本題へと話を戻した。

「それにしてもこの遺跡、なんもねえな・・・もっと面白そうなものがあるかと期待してたんだが・・・」

三人は結界を破ってからいくつかの部屋を見つけ、それぞれ全てを探索した。
しかしあったのは巨大な食卓と思しき石の机や椅子。
浴場のような広く浅い掘り。
空の石棚が入口を除いた三方に据え付けられた四角い部屋など、特に興味を引くものもなかった。

溜め息を漏らしつつタマジローは正面の大きな扉に足裏を押し付け、そのまま押し開ける。

「お?ここは・・・」

ユウが声をあげた。

「・・・うわ・・・」

ティアも苦い顔で声を上げる。

「気味がわりぃな・・・ここは何かの実験か・・・宗教か・・・そんななにかの施設だったのかもしれねえな・・・」

三人の眼前に広がるのは大きな檻。
その中にはいつのものか、何のものかもわからない謎の骨。
そして、あまり用途については想像したくない形状をした器具の数々・・・

「嫌なもんをみたな。長居する必要もないし、別の部屋に向かうか。」

タマジローが振り返り、部屋を後にしようとしたその時。

「ん?待ってくれよタマジローさん。」

ユウが何かに気がつく。

「・・・これは・・・」

「どうしたの?ユウ?」

「鱗だ・・・と、思う。」

「うろこ?」

しゃがみこんだユウは、床で輝く小さな破片を拾い上げた。

「ふむ、確かにそれは・・・ん!?
おい、ユウ。
まさかそれ、飛竜の鱗じゃねえか?」

「ひりゅう?」

ティアが首を傾げた。

「ドラゴンだよ。非常に希少で、かつ自然界のヒエラルキーの頂点。」

「ああ、童話とかでよく王様に退治される・・・って!ええ!?
あの生き物!実在するの!?」

「一応な・・・図鑑にも載ってるし・・・体の一部は魔法研究の貴重な材料にもなる。
でも、そうなのか?これが・・・初めて見たよ。
・・・タマジローさんは見たことあんのか?」

「まあな。一度だけ行商人が牙やら鱗やらを売ってたのをみた。
一度しかみてねえから確証はもてねえ。
しかしなんだってそんなもんがこんなところに・・・」

ユウが眉間にシワを寄せて話を始めた。
その様子はどこか嫌な雰囲気を醸し出していて、いつになく不安そうである。

「なぁ、まさか、その檻のなかの骨って・・・」

「ま、まあ、普通に考えればそうなるよね・・・」

「そうだな・・・この遺跡に隠された秘密ってのは・・・」

「「「ドラゴンについてのなにか・・・」」」

「っぽいな」「ですよね」「だろうな」

ティアが青い顔でさらに想像を膨らませる。

「ま、まさか、リュックの持ち主さんはこの遺跡でドラゴンに関する何かを得ようとして・・・その・・・ドラゴンに・・・!!」

「ま・・・まさか!・・・まさかな・・・」

「仮に、ここがドラゴンを人工的に生み出すための研究をしていた施設だったとして・・・さっきのトカゲはそいつの失敗作だったとして・・・

あれだな・・・ドラゴンの素材からはあらゆる魔法が作れるんだ・・・例えば・・・呪いを解くための魔法もドラゴンの素材から作れるとしたら・・・」

「やめろよタマジローさん・・・」

「そ!そうですよ・・・そんなことが・・・
そ!そうだ!だとしたらどうしてリュックが川から・・・」

「・・・まあ、リュックはしらねえけど・・・あまりいい予感はしねえな・・・」

「「・・・」」

「行くか・・・お宝、探すんだろ?」

「「・・・」」

2人は無言で頷き、タマジローに続いて部屋を後にする。

例の部屋を出てからしばらくしてのことである。

「でも、童話で読んだドラゴンの姿はもっともっと大きいもので・・・とてもじゃないけどさっきの大きさの檻には・・・」

「図鑑に載ってるのもそうさ。
普通に前にティアが倒した魔獣くらいの大きさはあるはずだし・・・それに、そんじょそこらの魔物とは比べものにならないくらいに強い・・・ああも簡単?かはしらねえけど、すっぽり檻に収まるもんかねえ?」

「しっ、まて、2人とも。
一旦静かにしろ。」

タマジローがあることに気づいた。

「「・・・?」」

「聞こえねえか?水の流れる音がする!」

「「!!」」

ユウとティアもタマジローに倣い、耳をすます。
そして表情が変わる。

「・・・あっちだな!タマジローさん!」

「確かに・・・水の音ですね。」

三人は音のする方へと向かう。

「「「っ!!」」」

「ビンゴだな!しっかり流れてやがるじゃねえか!」

タマジローが指差す先、太めの溝を川が流れている、三人はその川の流れてくる先を見る。

「お・・・おお、今まで見てきたどの扉よりも派手だな・・・」

「・・・うん、無駄に豪華だね・・・」

川は扉の十数メートル両横の壁にそって流れ、扉の前の踊場を越えた所で直角に折れて、先ほどタマジローが指差した箇所へと繋がっていた。

「いかにもな扉だな・・・しかも、封印がまた破られている・・・リュックの持ち主か!」

タマジローは人差し指で扉を撫でる。

「リュックの持ち主が・・・この奥に向かったのか・・・」

「生きてて・・・ほんとに・・・」

ユウが右、タマジローが左の扉を押し開け、扉の奥へと視線を向けたティアは声を漏らした。

「・・・お、おわああ・・・すごい・・・」

明らかに今までとは雰囲気の違う部屋。
幅は三十メートルほどもあり、奥行きは百メートルはあろうかという広さ。
灯りは今までの青い火ではなく、かなり眩しく白く輝く美しい球体がいくつか浮いていて、まるで陽光が差し込んでいるかの如く明るい。
床には古めかしくもほとんど劣化の見られない真っ赤なカーペット、そして、部屋の両端には深さ五十センチ、幅一メートルほどの堀、そこを流れる川、そのさらに外側には武器を持った数十体の立派な鎧が並んでいる。

「どうした?ティ・・・おわああ・・・すげえ・・・」

「なんじゃこの部屋!?ここだけ力入りすぎだろ!
・・・アイリにも見せてやりたかったな・・・」

三人はそのあまりにも美しすぎる空間を眺めて立ち尽くす。
一足先に部屋をみていたティアは他の2人よりも先に我に帰り、気がつく。

「・・・あっ!!あれは・・・!!!」

ティアが部屋の真ん中へ向かって走り出す。
そして立ち止まり、膝から崩れ落ちた。
その様子に慌ててユウとタマジローも駆け寄る。

「お!おい!どうしたんだよティア!」

「待て!ユウ!」

ティアのもとへと駆け寄った2人も言葉を失う、青い顔をしたティアはかたかたと震えながら2人の方へと振り向く。

「・・・やっぱり・・・遺品だったよ・・・」

ティアの正面にあるもの。
血のついた布が絡まった、白骨化した遺体。
それだけでは断定できないものの、それ以外には選択肢もない。

行方不明だった、リュックの持ち主。

「・・・」

「・・・ティア、ユウ、落ち込んでる場合じゃねえ。
おかしいぞ・・・やべえかもしれねえ。」

「「!?」」

タマジローは遺体のそばにそっと片膝をつき、胸で十字を斬ってから遺体の状況を確認する。

「見ろ、服に血の痕。
・・・これは武器だろうな、錆びたダガーだ。
それに、肋骨もやられている・・・間違いねえ、争った末に葬られている。」

「・・・たしかに・・・でも、いったい何と・・・」

ティアが突然立ち上がり、剣を構えた。

「まった!ユウ、タマジローさん。
今、何か、魔力が・・・」

「俺も気づいたぜ。」

タマジローもそのままの姿勢で剣の柄に手を添えていた。

そしてユウの声があがる。

「っな!なんだよコイツら!?
来たぞ!!気をつけろ!!!」

三人は床へと荷物を放る。


荷物が床に落ちる音と、金属が硬い物に当たる無機質な音が響き、水音が至る所からあがる。

部屋の両端に飾ってあった鎧が───



───武器を構え、ゆっくりと動きはじめた。



「まぁ!ある意味お約束っちゃあお約束か!
古い魔法の遺跡!異様に綺麗な部屋!飾ってある鎧!
うごかねえ方がおかしいって・・・なっ!!」

ユウは川を凍らせて川を渡ろうとしていた数体の足止めをする。
その上をさらに歩いてきた鎧をティアとタマジローが二手に別れて掃討する。

「数が多ければ良いってもんじゃない!!」

切影と飛爪刃を利用してティアは次々と鎧をはじき飛ばす。

「疾風!切れた双剣タマジロー斬!!」

タマジローは一人だけ浮いたテンションで暴れている。
しかしその異様な手数の連撃により、砕ける鎧すら出ている。

「アース・フレイム=ヴォルケーノ!!」

「ぬあっ!?ユウ!危ないって!止めなさい!!」

「っのやろ!!ユウ!俺達まで巻き込むんじゃねえ!!」

ユウの周囲から燃え盛る高温の岩がはじけ転がる。
直撃した鎧はへこみ、吹き飛び、凍った川まで押し戻され、沈む。
川は表面しか凍らせていないようだ。

「秘技 『火山でまさかの鎧水葬』!どうだ!今考えた!」

「今後一切使用禁止!!」

鎧の首をはね飛ばしつつティアが叫ぶ。

「しかしこいつら・・・」

タマジローは双剣を構えて鎧の集まっている一角に走り込む。
その場の鎧の数は六。
風の魔法で追い風をふかせて加速、その風を受け、一瞬鎧の動きが鈍る。
そのまま追い風とともに勢いを殺さず一体目の頭を後ろ回し蹴りで吹き飛ばし、二体目、三体目の足元で即座に身を低くしながら身体を回しつつ双剣によってそれらの足を刈り取る。
抜けきると同時にそのまま高く跳び、錐揉み一回転をのせた勢いで四体目を二刃で頭から叩き潰し、着地後反動を利用してもう一度跳ね、同じように錐揉みを加えた縦の回し蹴りで五体目もつぶしつつ踏み台に、逆手に持ち直した双剣を巨大な犬歯の如く六体目へ向け、鎧の胸部へと着地、と同時にそのままその両首筋に当たる位置へと突き立てた。

「・・・雑魚じゃねえか。」

金属同士が擦れ合う音をたてながら、タマジローは六体目の鎧から双剣を引き抜き、倒れ始める鎧の胸部を蹴り跳び、バック宙を経て地面に着地をする。

「ほんと無駄に派手に戦うよな、タマジローさん。」

「うるせえ!無駄じゃねえ!
てめえの魔法と一緒にすんなよ!」

「ああ!?誰の魔法が無駄だって!?」

ぎゃんぎゃん騒ぐ2人にティアは声をかけた。

「・・・!!
ユウ!タマジローさん!!油断しないで!
こいつら!壊した奴も含めて復活してるよ!」

「は?」

「え?」

ガシャガシャやかましい音をたてながら、鎧が元の姿に戻っていく。
まるで磁石が引き合うかのように、跳ね飛ばした頭も、砕いた武器も、壊れた部分全てがはり付き、また動き始める。

「マジかよ・・・なんだよコイツら・・・」

「わからん・・・が、やるしかねえだろ。
ユウ、ティア、長期戦になるかもしれねえ、ヘマやらかすなよ!?」

「はい!」

三人はそれぞれの武器を構え直して引き続き襲いかかってくる鎧を迎撃し続ける。
倒しては復活、また倒しても復活。
鎧は一向に減らないし動きにも変化はない。
しかし、人間である三人はそうはいかない、数セットも撃退を続けると徐々に疲れが見え始める。

「っぐ、おい、タマジローさん、変化ねえぞ!何回目の復活だよ・・・」

「・・・くそ!しらねえよ!
・・・しかししつけえな・・・」

「タマジローさん!危ないです!」

タマジローの背後で斧を構えていた鎧をティアの飛爪刃が吹き飛ばす。

「っ!すまねえ、ティア。」

「タマジローさん!私、思うんです!
こいつらみんな、魔力で動いているなら、魔力の供給源を絶たなっうわっ!
・・・った!絶たないと・・・」

ティアが横目で床に横たわる亡骸をみる。

「そうだな・・・あのダガー、錆びちゃあいたがなかなかの業物だった。
武器にこだわりがあったんだろう、そこそこ腕にも自信があった証拠だ、そんな人間がこんな奴らに殺された・・・こんな雑魚どもにだ!
おそらく俺たちと同じようにひたすら粘ったんだろう・・・が体力は有限だ。」

襲いかかってくる鎧たちの武器を的確にさばきつつ、タマジローは思考をめぐらす。

(しかしおかしいだろう、そこで死んでるおそらくリュックの持ち主は・・・ちゃんとした手順でこの部屋にはいったんじゃないのか?
ならばなぜ襲われた?
正解の方法でこの部屋に入ったにもかかわらず侵入者とみなされ、襲われた。)

「・・・ティア!
なんでもいい!この部屋の封印、魔力をため込んでるもの、全部ぶっこわせねえか!?
そのなかに多分こいつらのスイッチが混じっている!
俺らが部屋にはいってから鎧が動き出すまでに少し時間があっただろう!?
おそらくその間になにかするべきことがあったんだ!
怪しいのは上で光ってるいくつかの玉!この先の出口の封印!
どれでもいい!とにかく!さっき結界破ったみてえにぶっ壊せ!」

「・・・っ!わかりました!
ユウ!!戦ってる最中に悪い!杖!貸して!」

ティアはユウに向かって自分の剣をぶん投げる、それをユウは取らずに避ける。

ユウの背後に立って剣を振りかぶっていた鎧にそれは直撃し、その場で上空へと飛んでいく。

「もっと丁寧によこせよ。」

それをみたユウは自分の杖をアンダースローでティアへと投げ返す。

「お前ら!あぶねえ!」

タマジローの声が響く。
と同時にユウは落ちてくるティアの剣を掴み、ティアは飛んでくるユウの杖を受け取る。

「───!!」

数瞬後、タマジローは目を疑った。

「ふう、久しぶりでちゃんと使えるかどうか不安だったけど・・・当たり前か、魔法だろうと剣だろうと、子供の頃よりは強くなってなきゃおかしいよな。」

「危ないじゃないの!あと一秒受け取るのが遅かったら大怪我してたじゃない!」

ユウの周りにいた三体の鎧の武器が全て砕けていた。
そして、ティアの周りにいた五体の鎧は、ティアの周囲の地面より突き出た氷の刃で貫かれ、武器を振りかぶったままの姿でその動きを止めていた。


「・・・どっちが本業なのかわからねえな、お前ら・・・」

「もちろん俺は魔法使いさ!
ただ、やっと剣に魔法が追いつきそうなだけのな。」

「私は剣士ですよ!
元魔法使いなだけで!」

言い終わるとユウは一瞬で周りの鎧を砕き飛ばす。
ティアはぐるりと杖をふる。
ティアの周囲からさらに地面が突出し、氷の刃から鎧を抜き飛ばす。

「よ、よし、取りあえずティアを守るぞ!ユウ!
ティアは鎧を気にしないで思いっきりぶっこわせ!」

「OK、タマジローさん!
ティア、任せた!」

「出口のそばで壊しにかかります!2人ともその辺りを固めて!」

ティアは即座に風魔法で上空へ離脱、そこから出口付近で固まっている数体の鎧へ視線を向ける。

「退いて!」

杖の先に魔力が集まり、同時に塵や小石が集まる、それらは渦を巻き、みるみるうちに巨大化し、そこらの鎧の破片すらも吸い寄せる。

「ウインド=スフィア!!」

杖先から放たれた風玉は出口付近の鎧たちの中心へと落ちる。
直後辺りに暴風が吹き荒れ、鎧たちは見事に出口付近よりかなり離れた所まで吹き飛ばされる。

「張り切ってやがるな、ティア。」

「ほれ、行くぞ、ユウ。
今のうちにティアに続いて盾になるぞ!」

ユウとタマジローはそれぞれの武器を構えて出口へと駆ける。

「来たぞ!」

「もう俺の獲物横取りしないでくれよ?」

先に武器を振ったのはタマジロー
右、左、上、下、変幻自在に流れる刃に加えて予測のつかない足技、身のこなし。
まるでタマジローが通るために道をあけるかのように鎧はタマジローの通過と共に飛ぶ。ユウも負けじと加速する。
横凪一閃、駆け抜けと同時に裂いていく。
タマジローとは対照的な直線の動きで確実に鎧の動きを止めていく。

一方ティアは部屋の魔力を破壊するために力を振るう。

「とりあえずね、出口の封印・・・っから!!」

出口の前で先ほどの結界破壊と同じように勢いよく杖尻を地面に落とす。
風船が割れるような音、扉の封印は壊れなかった。

「・・・む、ダメか、ちょっと封式が違ったのかも・・・」

ティアはもう一度杖に魔力を込め、次は杖先で扉の封印そのものを突く。

乾いた竹が割れる様な音がして、結界にヒビがはいる

「おお、いけるかも・・・あれ?」

一瞬、次で壊せるかと思ったティアであったが、あまりの出来事に首を傾げた。
その場にユウとタマジローも到着する。

「・・・っと!雑魚は一通りのして来たぜ、どうせ復活するけどな!
で?なかなか良い音だしてたけど・・・どんな感じだ?
まさか俺の杖が折れた音じゃねえだろうな?」

「くそっ!一足遅かったか!ま、俺の方が壊した数は多かったけどな!」

「あ!ユウ!タマジローさん!
それが・・・あっちが正解みたいで・・・」

天井付近で浮かんで光るいくつかの玉にティアは杖を向けた。

「ほう?あれが?出口の封印と連動してんのか?」

「はい、出口の結界にヒビを入れたんですけど、すぐに魔力が供給されて塞がってしまいました。」

「ふーん・・・って!あ!おい!またあいつら復活したぞ!
ティア!こっからでもあの玉壊せんのか!?」

「問題ないよ、そもそも出口付近で壊そうとしたのは後ろが壁の方が囲まれる心配もないし、終わった後にすぐ部屋から出れるからだし。」

「そうか!じゃあこのままここで俺とタマジローさんが壁やるから、さっさと壊してくれよ!
来たぞ!」

「インターバル終了か・・・めんどくせえ。」

ユウに続いてタマジローもしぶしぶ武器を構えた。

「っし、やるか・・・そりゃ!」

杖を向けたそのままの姿勢でティアは玉の破壊にとりかかる。
玉は全部で7、ティアはとりあえず一番手前の玉を壊そうとする・・・が。

「っ!!なによ!ちょっと丈夫じゃないの!」

狙いを定めた玉にティアの魔力は届いたが、破壊に至るどころか小さなヒビ一つしか入らなかった。

「・・・てい!」

もう一度魔力を飛ばすが、さらにヒビが大きくなっただけで破壊には至らない。

「・・・っく!うううあああっ!!」

三度めにして、ようやく玉は一つ砕ける。

「・・・っう、はぁはぁ、、、無駄に・・・強い・・・」

「お!おい!ティア!大丈───っぬあっ!?
っのやろお!邪魔だ!」

鎧が振った剣が、少しユウの腕をかすめた。
僅かだが、1つ、怪我を負った。
これが意味することを知る三人は少しずつではあるが焦りを感じ始める。

「ユウ!?」

「かすっただけだ、大丈夫、とにかく、さっさとあの玉潰してくれよ。」

「このくらいでユウが落ちねえのはお前さんが一番よくわかってるんだろ?
こっちは任せておけ。ティア。」

ユウとタマジローは引き続き壁になる。

その後ろ姿を眺め、ティアの脳裏には数年前の出来事がよぎる。

ユウが囮役を買って出て、生死の境をさ迷ったこと。

ユウの死。
それが、僅かであるが現実味を帯びてきている。
部屋の真ん中で倒れるシルバーランクの旅の人の亡骸をみて、ティアの頭に恐怖が攻め入る。

「・・・だめだっ!
もしかしたら・・・あの玉だって全部壊しても鎧は止まらないかもしれない・・・!

ユウとタマジローさんを・・・死なせたりはしない!絶対に・・・!」

ティアは杖を掲げて魔力を溜める。

「っやあああ!!!」

ティアは地面に向かって思いっきり杖を叩きつける。

「ぬっ!?」

「うおっ!?」

ティアを中心にして、風が吹く。

「お!おい!ティア!?何してんだ!?
玉!なんともねえぞ!?」

「・・・大丈夫だろ、タマジローさん。
あいつが意外と切れ者なの、タマジローさんだってわかってんだろ?
壁、やろうぜ。
・・・おりゃっ!」

ユウとタマジローが鎧と対峙し、ティアはもう一度杖を叩きつける。

「・・・っ!
電気を・・・一つ一つ消すのが大変なら・・・」

さらに叩きつけ、また、叩きつける。

「ブレーカーを・・・落とせば!!
・・・どこだ・・・ブレーカー!」

もう一度叩きつけたところで、ティアは魔力の大元を突き止める。

「・・・ん?今、魔力の響き方が不自然だった・・・守られてる何かが・・・封式は・・・」

ティアは杖を持ち替え、杖尻を地面に突き立て、そのまま魔力を送り続ける。

「いって!野郎!
タマジローリフレクトカウンターゼロ式!!」

(っ、タマジローさんも怪我を・・・早く、早くブレーカーを・・・!
・・・封式はこれでよし、蓋は開く。
後は・・・壊す!!)

「ユウ!タマジローさん!準備が出来ました!
暗くなるかも!!」

「え!?暗く!?」

「・・・なるほど、やっぱりユウより切れ者だな・・・」

ティアは一度地面から杖尻を離し、再度渾身の魔力で突き立てる。

「ユウ!念のためだ!マジックフェアリー用意しとけ!」

「うっす」

「壊れなさい!!」

次の瞬間、鎧の動きが止まる。
部屋の明かりも消えた。
しかし、所々で青い炎が一瞬上がり、消える。

ユウとタマジローがマジックフェアリーで部屋を照らすと

「・・・っはあ、終わった・・・サンキュー、ティア。」

「少し休憩しようぜ、よくやった、ティア。
アイリは連れてこなくて正解だった。」

鎧の姿も、浮いていた玉もなくなっていた。
全て大トカゲと同様に、燃えてなくなった。
魔力が尽きた証拠である。

「しかしこれだけ厳重な魔法がかかってたんだ、次の部屋には本当のお宝があるかもな・・・」

「ふう、あ!
お菓子持ってきたんだけど、食べる!?」

「え!?本当か!?ティア!食う!
・・・あれ?俺が手伝った時はそんなの入れた覚えないんだけど・・・ま、いいや!食う食う!」

「お前らあんだけ焦った後に・・・遠足気分かよ・・・アイリの手作りなら俺も食う!!」

ティアは三人の荷物を拾いに部屋の真ん中へとかけていく。

───休憩開始から数十分は経ったであろうか、三人の疲れがとれてきた頃。

「俺も詳しくはしらねえが・・・アイリの料理はな?」

「「うん!うん!」」

「あらかじめ下味の時点で───

遺跡の奥で巨大な音が響いた。
地震のように遺跡全体が揺れる。
同時になにかが恐ろしい勢いで崩れる音、巨大な翼の音も聞こえてくる。

「ぬおっ!?なんだ!?人がアイリの料理について語ろうとしてるときに!!」

「すっすぐ!隣の部屋じゃなかったですか!?」

「なっ!?なんか!?暴れてねえか!?なんか!?ギャースギャース言ってねえか!!?」

三人はすぐさま立ち上がり、隣の部屋へと足を運ぶ。
そして扉を開けたとき、三人はすぐさま戦闘態勢に入る。

「はあん!?聞いてねえぞ!?こんなの!
つか!・・・やべえぞ・・・俺たちだけでなんとかなるのか・・・?」

「こ・・・これが・・・!
でも、どうしてこんなところに・・・?」

青ざめ、少し震えるティア。
三人が扉をぬけた時に広がったのは広大な部屋、奥には何かあったのだろうが瓦礫で埋もれていた。
瓦礫が落ちて来たのであろう天井を見上げると、そこには大きな穴が開いていて、そこから差し込む陽光により部屋の中は外より薄暗い程度に明るさを取り戻していた。

そしてそんなものよりも三人の目を引いたもの
・・・瓦礫の上で暴れる巨大な生物。

恐ろしいトカゲに翼がついていると言ってしまえばそれまでだが、決してそんな簡単な言葉では片付かない威圧感を放つそれに、三人は命の危機を覚える。

「ず、図鑑でしか、みたことなかったけど・・・なんだよあれ、本当に生き物なのか・・・?
どんな進化したらあんな羽生えるんだよ・・・飛ぶんだよ・・・化け物だ・・・角なんて・・・悪魔じゃねえかよ・・・!」

飛竜が、遺跡の天井を外部から突き破って侵入していた。
そしてそれは三人に気づいて巨大な咆哮をあげる、その声を聞いたとき、三人は確信する。

「・・・っ!勝てねえ!
やべえぞティア!タマジローさん!?どうする!?逃げきれるのか!?」

「いっ!一旦遺跡の内部に!!」

「だめだ!仮にアイツが追ってきたとして、遺跡の中で暴れられたら遺跡自体崩壊するかもしれねえ!
そうなりゃ俺たちみんなぺしゃんこだ!」

「じゃあどうするんだよ!?」

ゆっくりと、巨大なそれは三人に近づいてくる。

「飛竜ってのは・・・賢いからな・・・かろうじてまだ俺たちのことを敵とはみなしていねえ。
油断してるウチになんとか足止めして・・・天井の穴から逃げるぞ!」

「で!でも!足止めって!?どうやってやるんですか!?」

「・・・、ビーストウォーリアを・・・使う!
未完成だからな、俺の身体がどうなるかはわからねえが、時間ぐらいは稼いでみせるさ。
その隙にてめえら揃って逃げやがれ!」

「「!?」」

「いいか、俺がビーストウォーリアを使って奴に対して───

「フロスト=ジャベリン!!」

「切影飛爪刃!!」

飛竜の頭部で氷塊が砕け、翼には数連の斬撃が直撃する。

「っ!?お前らっ・・・!?」

「またタマサブローみたいになられちゃ足手まといだからな、そのままで頼むぜ、タマジローさん・・・!!」

冷や汗を拭いながら、ユウはタマジローを諭す。
しかしその声は震え、表情は緊張と開き直りの色をしていた。

「タマジローさんにもしものことがあったら・・・!!
もうアイリを泣かさないでください!!」

ティアの構える剣も、切っ先が震えている。

「っの馬鹿野郎共!今ので奴は完全に俺らを敵とみなしたぞ!
さっさと逃げやがれ!」

「へっ・・・へへ、、、餌か、敵か・・・ならな・・・」

「う、うん・・・窮鼠猫を噛むって・・・」

飛竜が再び咆哮をあげる、しかし先ほどとは違う、明らかな怒りと、敵意をもって。

「ひっ!・・・うわああっ!!
フレイム=メテオールっっっ!!!」

巨大な火球が飛竜の頭上に現れ、落下する。

「うわあああ!!」

ティアがそれに続いて剣を構えて飛竜へと向かう。

「ティア!突っ込むな!!」

タマジローが風の魔法でティアを押し戻した。

「ユウみたいな遠距離から攻撃できる魔法ならともかく!接近戦は危険だ!
落ち着いて・・・隙をみてたたみかけるぞ・・・!!」

「・・・なっ!?」

「そらみろ、突っ込んでたらどうなってたことか・・・」

確かにフレイム=メテオールは直撃だった、にも関わらず、飛竜はブルブル首をふるだけでのしのし歩いている。
効いていない。ほとんどダメージがない。
次の瞬間、飛竜が駆ける。

「うっ!うわっ!きっ・・・!」

「ビビるな!避けろ!」

「わああああっ!」

間一髪、全員飛竜の突進を避けた。
後ろの扉は無惨にも崩れ落ちていた、三人は天井の穴の下へ向かって走る。

「うっ、あ、あんなの・・・まともに食らったら・・・」

「今すぐ逃げてもいいが、すぐ追いつかれるだろう・・・」

「せめて、片方だけでも翼を潰せれば・・・ですね・・・」

飛竜は大きく息を吸っている、その様子を見たタマジローは慌ててユウに指示を出す。

「あっ!アイツ、まさか!
ユウ!壁だ!急げ!!」

「フッ!フロッス!!ト!!うおおお!!」

言い切る前に三人の前に巨大な氷の壁が張られる。
と、同時に飛竜は炎を吐いた。

「わっあああ!火吐いた!!?
ユッ!ユウ!フロスト=ウォールじゃ溶けちゃっ!わああああっ!」

「落ち着け!ティア!数秒なら俺の風で押し返せる!
ユウの壁は時間稼ぎだ!」

宣言通り、タマジローはユウの張った壁が溶ける頃に炎を風魔法で抑える。
しかし炎が掃け、視界が開けた瞬間、三人の目の前にはすでに巨大な顎が迫っていた。

「ひっ!」

「きゃあ!」

「っの!!」

ユウが杖を前に突き出し身を守ろうとし、ティアが頭を抑えてしゃがんだ時。
タマジローは前へと出た。

そして2人の前に、大量の血が飛ぶ。
飛竜が口からダラダラ血を流して後ろへと飛び退いた。

「っ!ちょっといてえ!」

「「タマジローさん!?」」

「問題ねえ!それよりわかっただろ!?お前らにコイツは早え!
黙って俺に任せて逃げろ!」

タマジローは飛竜の口の中に双剣を構えて腕を突っ込んでいた。
歯の裏まで入った双剣は上下に向けられ、かみつこうとしていた飛竜の歯の裏の柔らかい部位と舌を貫いていた。
が、飛竜が痛みを感じて口を開くまでに微妙なラグがあり、牙が少しタマジローの腕に食い込んでいたようだ。
タマジローの傷は大したものではなかったが、双剣を使うタマジローにとって、強敵を相手にするときには食らいたくない部位に攻撃を受けてしまった。

「・・・万事休すってか・・・いや、まだ、俺には・・・」

飛竜が狙いをタマジローに絞った。
飛び上がった飛竜はタマジローを目掛けて爪を落とす。

「「タマジローさん!!」」

血が、またも噴き上がる。

「アイリがいるんだ!死ねるか!」

飛竜の腹に十字の傷が入っていた、タマジローはうまく爪をかいくぐるだけではなく、カウンターのおまけをいれて無傷で攻撃を抜けた。
しかし飛竜が大きく尻尾を振り回し、タマジローは吹き飛ばされる。
吹き飛んだタマジローを追うように、飛竜は身体を翻し突進を繰り出す。

「まちやがれ!ウィンド───

「っ!飛爪───

((間に合わない!!))

何とかして飛竜の注意を自分達に向けさせようとするが、タマジローへと突進で向かう飛竜に対して、追いかける形で攻撃をしても間に合うはずがない。
ユウが絶叫し、ティアが目を閉じたその時。

「ふふふ、『赤棘』」

冷たく、重く響く声。
タマジローの目の前に真っ赤なロープが縦横無尽に張り巡らされる。
飛竜はそのロープに突進すると、それに身体を巻かれ、焼かれる。
肉が焼ける匂いと、飛竜の叫びが辺りに広がった。

「こっ!これは・・・!?」

「えっ!?」

「っぐ、いてえ・・・生きてるのか?俺は・・・」

もがく飛竜、見るからに高温な炎のロープ。
三人の内、1人もこの魔法を見たことがあるものはいなかったが、先ほどの声は三人とも聞き覚えがあった。
混乱状態の三人の目に、一人の女性が映る。

「感心しませんねえ、タマジローさん?
アイリさんのことあんまり泣かせるようなことをすると、怒りますよ?」

その女性はそっと炎のロープの上に立ちタマジローを見下ろす。
その姿に、ユウとティアが声を上げる。

「「おっ!!お姉さん!!?」」

「うふふ、遅くなってごめんね?若いの。」

「う・・・受付ちゃん・・・どうして・・・こんなところに?」

ペールタウンの受付嬢、三人にリュックの持ち主が受けていた依頼を勧めた人間。
受付嬢は炎のロープで軽く反動をつけてそこから飛び降りた。
飛竜が一瞬蛙のような声を上げる。

「受付ちゃんじゃありませんよ、今は『救援ちゃん』・・・いや、これも正しくはありませんね。
何を隠そう、わたくし、依頼の中止をあなたたちに告げにきたのです。」

「えっ!?お姉さん!!なんて!?」

「あっ!・・・なるほど・・・」

受付嬢は後ろ髪を手で払いつつ話を始めた。

「焦るんじゃないの、ユウ・ラングレル。
実はね?お姉さん、『ある失敗』をしてしまってね、さっき所長さんに大目玉を食らったのよ。ふふふっ。」

「ある・・・失敗?」

「そうなの、お姉さんね、疲れてたみたいで『間違えて』ノーランクとブロンズランクの旅の人達にシルバーランクの依頼をうけさせちゃったのよ。ごめんね?」

「さっ・・・さすがだ・・・お姉さん・・・」

ティアは目を丸くして受付嬢の話に耳を傾ける。

「あなたは出来る子ね、ティア・アルノーティス、うふふ。
それでね、お姉さん『たまたま』あなたたちの行き先を知っていたから所長さんにお願いしたの、『すぐに依頼の中止の連絡に行かせてくれ』ってね?
神様は優しいのよね、お姉さんの今日中に終わらせなきゃいけない仕事がその時点で『偶然』終わっていたから、特別に外出許可をもらえたのよ。
どう?ここにお姉さんが今いること、『全然不思議じゃない』でしょ?
納得してくれたかしら?」

ユウとティアは生唾を呑み込み、嬢の話に頷く。
しかし、タマジローが気になったのはそんなことではなかった。
タマジローはヨロヨロと立ち上がり、受付嬢へと話しかける。

「うー、いてて、助かったぜ、受付ちゃん。
しかしその魔法は・・・はは、驚いた、驚いたぜ・・・」

タマジローの額に冷や汗が光る。

「その姿は美しい少女で爪を隠すのがうまいと噂だったな。
十年くらい前か、王国の魔導士試験で試験官を杖も指輪も魔導書も無しにボコボコにし、止めに入った他の王国魔導士も全員ボコボコにし、無条件に試験は合格、見事史上最年少王国魔導士になる資格を得るもあっさり蹴り、姿をくらました。
そいつの使う魔法は異常なまでに高密度、高温の炎魔法。
理論的には不可能な密度まで魔力を圧縮して、触れるものの全てを焼き尽くす。
全く、嫌になるよな、ティアといい、受付ちゃんといい・・・天才か・・・憎たらしいぜ。

『無杖のマリエッタ』

お前さんで、間違いねえだろ?」

「ご想像にお任せしますよ、タマジローさん。」

飛竜が大声を上げ暴れまわり、炎のロープは千切れ、消える。
飛竜は解放された後も地面を転がり暴れまわる。

「いい子ね、ちゃんとお姉さんの話が終わるまで待ってたのね?

タマジローさん、手伝ってくれません?
私ひとりでもなんとかなりそうですが、骨が折れます。」

タマジローは無言で頷く。

「若いの達は見ていなさい。
終わった後で全部説明するわ、地図の赤い印の意味、この遺跡の正体、飛竜が突然ここに攻め入ってきて暴れた理由・・・。

しかし・・・ここの魔力を全て落としたのは驚いたわね・・・そのことについては後で教えてね?」

「来たぜ、受付ちゃん!」

起き上がって咆哮を上げる飛竜に、二本の剣を構えた男と、丸腰の女が向き合った。

「・・・本当は・・・」

「・・・ん?どうした?」

「いえ、なんでも・・・
それにしても恐いわね、恐い竜って書くと恐竜って読むんですよ?タマジローさん。」

「知っている・・・ふざけてる場合じゃねえだろ。」

「ふざけているわけではないですよ。」

飛竜が2人に向かって炎を吐こうと息を吸っている。
その様子をどこか悲しそうな目で眺めながらマリエッタは話を続ける。

「この竜は、人を襲う恐い竜になってしまったんです。」

「話してる場合じゃねえぞ!あぶねえ!」

タマジローは一足先に火炎の射線から抜けるよう、風魔法を使って飛竜の正面から逃れる。
直後、その場を炎が飲み込む。

「お姉さん!」

「っ!直撃じゃねえか!お姉さんは!?」

三人はマリエッタの立っていた場所を注視し、様子を確認しようとする。
その場所に、火柱が上がる。

「人を襲ってしまった以上、殺処分は避けられない。
タマジローさん、逃がさないでください・・・。」

「「「!!」」」

火柱が渦を巻いて空中へと昇り、巨大な火球の形に集まる。
その下には、左手一本でそれを制御するマリエッタ、彼女が手首に右手を添えると、みるみるうちに火球は小さくなっていく。
初め直径三メートルはあったであろうそれは、彼女の手のひらに吸い込まれていくように縮み、紅さを増し、ついにはピンポン球のような大きさになってしまう、しかし、三人はそのピンポン球サイズの火球に得体のしれない恐怖を覚える。
飛竜もそれを見るなり動きを止め、おずおずと後ずさりをする。
本能に訴えかける恐怖の熱、赤い輝き、美しいはずのそれは、命を奪うための輝きであることを、その場の全員が思い知らされる。


「ごめんなさい。
人間の勝手であなたの命は無駄になってしまう。
本当は・・・あなたは優しい子なのにね・・・

・・・炎魔『蛇苺』」

つかつかと、靴の音をたて、後ずさりを続ける飛竜にマリエッタは歩み寄る。
苦しそうな表情で、マリエッタはタマジローに声をかける。

「タマジローさん・・・後ろを、後ずさりを止めてください。」

「お・・・おう・・・。」

タマジローは飛竜の後ろにまわって、切っ先を向けた。
飛竜は後ずさりをやめ、妙にか細く高い、震える悲鳴でマリエッタを威嚇する。
ティアは声を漏らす。
瞳に涙を溜め、目をがっちり閉じて首を振る。


「・・・めて・・・やめて・・・あげて・・・」

「ティ・・・ア?」

ティアの様子に、ユウもハッとする。

「・・・逃がしてやってくれよ・・・お姉さん・・・怯えている・・・」

しかしその願いは聞き入れられない。
悲しそうな表情のマリエッタは、ゆっくり首を振り、話し始める。

「逃がしたところで、やはりこの子は人間を襲ってしまう。」

「そんなの!」

「わかるのよ。」

「!!」

「事情はあとで・・・説明するわ。」

一瞬だった。
いま、四人の目の前には黒い煙を吐きながら動かなくなった飛竜が横たわっている。

命の儚さに対する物悲しさと、そこにあったものがなくなった喪失感に、誰一人口を開かない。

そんな中、冷たい目をしたマリエッタが事の全てを説明する。

「儚いものね・・・時に若いの。
なぜあなた達は最後に竜を逃がそうとしたのかしら・・・?」

「・・・」

「・・・それは・・・」

ティアはうつむき黙り、ユウは視線を泳がせつつも答えを探す。
実際のところ、ユウにもティアにも本当の理由はわかっていない、単に『かわいそうだった』と言ってしまえばそれまでだが、どうもしっくりこない。
仮にマリエッタが魔法を発動した後も竜が暴れ続けていたら、2人には飛竜を逃がそうという発想すら出なかった。
もちろんユウもティアも初め飛竜に襲われたときは死を覚悟し、できることなら飛竜を殺してでも生き延びようと考えていた、結局、命を奪おうとしていたことに変わりはなく、土壇場での心変わりに対し、気持ちの整理がつかない。
殺生に対する嫌悪とも違う、事実2人は自覚の有無はともかく今までに多くの命を奪ってきた、それの数が一つ増えただけでなにも大きな変化はない。
しかし2人の胸は今、締めつけられる感覚でいっぱいであった。

「まぁ、思うところはたくさんあるでしょうけど。

気まぐれでしょ?」

「「・・・!!」」

「図星ではないにしろ、一番しっくり来たようね。
そう、どうせ、どんな理由をつけようとも、どんな奇麗事を並べたにしても・・・行き着くところはそこなんでしょ?
今のあなた達にはこの子の命の生殺与奪権はなかった、でもお姉さんの助太刀によってあなた達はその権利を得た。
怯えている、可哀想・・・さっきはそんなことを思ったのかもしれない。
けれど普段はそんなことも考えずにあなた達は生き物の命を奪ってきた、または見逃してきた、ここへ来て自分達以外の手でまさに今奪われようとしているの命を目の前にしてあなた達はそのことに気づかされた。
今少し複雑な心境かもしれないわね。」

「お・・・おい、う、受付ちゃん・・・」

「あ、いえ、別に責めているわけではないですよ?
そんな必要もなければ、そんな権利も私にはありませんから・・・

命を奪うことに正しいも間違っているもない。
ただ、心地の良いことではない。
だから少し冷静になって考えれば無益な殺生なんてない方がいいと考えるのは当然ですよ。

気まぐれで見逃せるならね、私だってそうしたかった・・・

でも、その場の気まぐれで一つの不幸を潰しても、それによってまた新たな起こらぬはずであった不幸が生まれるかもしれない。

どんな強さを手に入れても、全てを守るなんて絶対に無理なのよ。

あなた達はまだ若いの、その場の感情一つで状況を右にも左にも変化させる。
それが悪いこととは言わない、でも、大人になるなら、感情だけで状況を変えてはいけないことだってたくさんあるの。
意にそぐわなくても、やらなくてはならないときがあるの。
時には悪が正義であり、正義が悪にもなりうる、何が正しくて、何が間違っているのかは自分で判断しなくてはならない。」

「「・・・」」

「強くなりなさい・・・若いの。
そうすれば見えてくることもあるわ。
そしてその時、お姉さんのようになれとは言わない。
正義の味方になれとも言わない、全てを救うヒーローになれとも・・・言わない。

ただ・・・後悔だけはしないようになりなさい。
正しく、生きなさい。」

2人は黙って、深く頷いた。

「話がそれたわね。
こんな話をしてしまうなんて・・・ふふ、お姉さんも若くないわね。

それじゃあ、まずは地図の印について───



──────────


辺りは暗くなり、ペールタウンにも灯りがともる
タマジローは武器工房の明かりを確認して顔を出した。

「ただいま。アイリ、待たせたな!」

「あらおかえりー!タマジロー!遅かったじゃない!

アタシとご飯にする?

アタシとお風呂にする?

それとも・・・ア・タ・シ?」

「全部頼む。」

「きゃあああ!やだもう!ティアとユウも・・・って、あれ?2人は?」

アイリはタマジローの後ろに視線を向けるように身を乗り出す。

「ああ、あいつらはな・・・まったく若えよ。
色々と薬を盛られてな、『久々にやるぞお!』とかいいながらペールタウンの外で手合わせ始めたよ。
最初は黙って眺めてたけどな、飽きて帰ってきた。
まだしばらくは帰らねえかもな。」

「ふーん、よくわからないけど・・・それで?結局お宝は見つかったの?」

「なかったよ。
いや、あったのかもしれねえが、瓦礫の下にでも埋まっちまったんじゃねえか?
ひどい目に遭ったぜ。」

「え?なにそれ?」

「順を追って説明するか。
めんどくせえとこはアイリもめんどくせえと思うだろうから簡単にな。受付ちゃんから聞いた話だから、どこまで本当かはわからねえ。」

「ふむふむ。」

「地図の印の場所にはな?二百年前くらいに竜族を神として信仰していた集落があったらしいんだ。
しかし、その集落の人間の中には竜族を恐ろしいと思っていた者も少なくはなかった。
いずれ自分達は力では圧倒的に及ばない竜族に滅ぼされると考えた奴らが、竜を信仰している奴らに隠れて竜を研究する施設を信仰施設にカモフラージュしつつ作ったんだ。
その遺跡は実際滝の裏の洞窟の奥にあったぜ!」

「おお!すごいじゃない!」

「んでよ、それが厄介だったんだ。
受付ちゃんの話によると、その施設を作った連中はある日、幼竜を研究用に捕獲してきてその施設で監禁していたらしくてな・・・
らしくてというか、それと思しき骨と檻も遺跡内で見たな。
うっかり殺しちまったらしい、その幼竜を。
竜族ってのは自分と血の繋がりがある者の死にやたらと敏感らしくてな、幼竜を殺してしまった後、間もなくして集落の周辺で人間がおそらく幼竜の親と思しき飛竜に襲われる事件が多発したんだと。」

「まぁ、当然よね。自分の子供が殺されたとあったら。」

「だよなぁ。
そしてその被害の出る場所は徐々に幼竜の亡骸の場所に近づく。
施設の人間は焦った。
『このままではいずれここは親竜に見つかり滅ぼされる』と。
そして、結界を張ったんだとさ。かなり強力なヤツを。
しかし被害はおさまらず、結局集落は壊滅。
隠され、結界で守られた施設のみがのこった。
幼竜の亡骸と共に。

それからだ、色々あってティアがその結界をぶっこわしちまってな、結界が壊れた気配を察知した親竜は二百年待ち続けた復讐の時だと、今こそ我が子の亡骸を取り戻す時だと、俺たちの前に現れてな・・・」

「え!?ちょっとまって!?
二百年前の話からいきなり今日の話で、なんで二百年前の親竜が今日の話にでてくるわけ!?」

「竜ってのは長いので数千年生きるからな・・・なんか、千年以上生きると人間の言葉を話すとか・・・話さないとか。
それで俺達大慌て、命がけで飛竜を相手にするも圧倒的に不利。
やられそうなところでこの話を調べてきた受付ちゃんがババーンと現れて、ババーンと飛竜をやっつけたのさ。」

「はぁ!?なに!?受付ちゃんってそんなに強かったの!?え!?
うそ!!?」

「あれだよ、十年くらいまえに王国で話題になった暴れん坊魔女ちゃんがいただろ?

・・・行方不明になったはずだった。

それがな!まさかの受付ちゃんだったんだよ!!
いやぁ、さすがに俺も腰を抜かしそうになったぜ・・・」

「膝から崩れ落ちたんじゃなくて?」

「ああ、腰だ。」

「ちょっと、その話、もうちょっと詳しく教えてよ!」


しばらくしてボロボロのユウとティアもアイリの家にたどり着き、騒動は幕を閉じた。

今回の出来事はタマジローにとっては骨折り損のくたびれもうけであったが、2人にとっては貴重で刺激的な体験となった。

その日のティアの日記は、日記の封印が封印魔法の練習になっていて、練習の成果が遺跡の魔力破壊という形で花開いた。
という話聞いてとうとう笑いすぎで気を失ったマリエッタの話と。
結局マリエッタの言うとおりにことが進んでマリエッタがすごいということと。
マリエッタにはなにか秘密がありそうだというティアの考察。
マリエッタの魔法の破壊力に度肝を抜かれたことと。
自分たちの好奇心が竜をも殺してしまった後悔、それに対するマリエッタの洞察力、アドバイス。
とにかくマリエッタの話で埋まっていた。

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