• 04<
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • >06

ユウが依頼所に入っていった、私もその後をついていく。
やはりいつも通り!
迎えてくれるのは例の受付嬢さんか、流石の受付嬢さんも今回の早さには驚いているみたい。

「え!?若いのじゃないの!早いわね!!」

「どうも~」

「今回はユウがひとりでさっさとやっつけちゃったんです、私もびっくりしましたよ!」

「ふぅ~ん・・・?なるほどねぇ・・・」

ち!近いよ、お姉さん!
ユウの顔見すぎだから!私でもそんなに近くでユウの顔見たことないから!

「なに、赤くなってるのよ。ユウ・・・」

「やっ!別にそんなことねーよ!
それよりお姉さん近いって!近い!」

「・・・ふむ、、、これはお姉さんのただの勘だけど・・・ユウ・ラングレル、あなた・・・

一度作ったことがあるのね?惚れ薬。」

「「つ!!?」」

え!?なんだって!?お姉さん!?
ユウが!?ユウが惚れ薬を作ったことがある!!?

「っだっ!だからなんだってんだよ!?
わりいかよ!お姉さんにはカンケーねえだろ!?」

えっ!?図星!?本当!?

「あっはっはっはっは!
やーっぱりね?昔から若いのはお姉さんには隠し事をできないようになってるのっ!
残念だったね、ごめんね、バラしちゃって!」

「・・・お姉さん・・・すごい」

私でも知らなかった、というか気づかないことを少しみただけで言い当てるなんて・・・ただ者じゃないな。この人。

「でも、お姉さんが知りたいのはそんなことじゃないのよね。

答えは出たのかしら?
ユウ・ラングレル。」

え?答え?

「・・・お姉さんまさか・・・。」

ユウが何かに気づいたみたい。

「そう、今回、お姉さんがこの依頼をオススメしたのは偶然じゃない。
あなたのためを思ってね、進めてみたのよ?」

「ユウの・・・ため?」

「ああ、そうね、あなたはなんのことかわからないか、ティア・アルノーティス。

言ってもいいかしら?」

無言でユウは頷いてる、なに!?この二人!?

「お姉さんが今回この依頼をすすめた理由、それはね、この子が、悩んでいたのよ。

きっとタマジローさんとアイリさんをみて疑問をもっちゃったんだろうね?

『自分は何故、ティア・アルノーティスと一緒にいるのだろうか』と。
バカよねえ?ふふふ。」

「う、うるせー!」

え・・・それって・・・

「やっぱり・・・私は・・・」

「あら?あらあら、心配する必要はないわ?
答えは出てるみたいだし、彼は別にあなたのことを邪魔だとも思ってはいない。
男の子はバカで幼稚なのよ。お姉さんからの豆知識よ、メモしておきなさい?」

「その・・・答えって・・・?」

「ふふ、それをお姉さんに言わせるのは野暮ね。
本人から聞きなさい?そうすれば、あなたもきっとすっきりするでしょう。
全てが理解できるわ、今回生じたあなたの疑問もね。
ティア・アルノーティス。」

いつも思うけど、この人はなにか不思議な感じがする・・・
全てを知っているような・・・いや、私達の全てを見抜いているような。

「あなたたち、わかりやすいもんね、若いの。
あと、お姉さんは不思議な雰囲気があるほうが魅力的でしょ?」

ほら、また心を読まれた。

「さ、忘れてたアイリさんの依頼完了の手続きも含めてさっさと終わらせるわよ。
あとは帰りに2人でゆっくり話しなさいな?
お姉さんはちょっと安心したわよ。
ふふ、美しいわ、若いの。」

お姉さんの提案で、とりあえず私たちは依頼完了の手続きを済ませて帰路に就く
スポンサーサイト


帰り道、私はユウになにも聞けないでいた。
だって、お姉さんはああ言っていたけど、ほんとのほんとうにユウがそう思ってる保障なんてないでしょ?
いや、ユウは私に気を遣ったりなんかしないから・・・旅に出る前にも私は邪魔じゃないかと聞いたときの答は嘘ではないと思う。
思うけど、不安だよ。
どういう意味?
私と一緒にいる理由がわからないって・・・

「元気ねえな、毒でも拾い食いしたのか?」

なんか、心配してくれているらしい。
こういうところは、気を遣ってくれるんだよね・・・昔から。
そうだ、昔から一緒にいるんだ。
私とユウの出会いは、単にユウが決闘をしかけてきただけで・・・特別一緒にいなきゃいけない理由はない。
でも、あの日の夜、どうしても涙が止まらなかった。何故だろう?
どうしよう、私まで・・・ちょっとわからなくなってきちゃったよ・・・
でも、でも、私は・・・私はユウと───

「しょっぱい顔だな。
何をさっきから黙ってるんだか・・・珍しい。」

「ユウには・・・わかるの?」

「え?何が?」

「その・・・答え・・・」

「ああ、なんだよ、お姉さんの話気にしてたのか。
変なところで真面目だもんな、お前。」

そりゃ気にするに決まってるよ・・・
でもなんでこんなに気になるの?
じぶんでも一緒にいる理由だってわからなくなってきてるのに・・・ユウにどう思われてるかなんて・・・

「はぁ~。
・・・お姉さんの言った通りさ。
昔な、俺は惚れ薬を作ったんだ。」

「なに?急に。」

「いや、その・・・ほら、お前がらしくないんだから、俺も少しらしくない自分語りをだな・・・」

「ふふっ、なにそれ?」

「笑うな!・・・いや、笑っとけ、その方がお前らしいし。」

こういうところが憎めないんだ、昔っから。
きっと今、ユウは私を元気づけようとしてくれている。
それだけで、私の不安は無くなっていくよ。

「それで?惚れ薬を作って?
誰に飲ませようとしたの?ふふっ、ふふふ」

ちょっと意地悪かな?
でも、仕返しだ!
なんの仕返しかっていうと・・・うーんと、ほら・・・あれ!あれの!毛虫の!
なに赤くなってるんだか、やっぱりユウは面白い・・・そうか、楽しいから・・・一緒にいるのかな?

「すっ!少なくともお前じゃねえよ!俺はもっと!お姉さんな人の方が好きだよ!」

「あらあら?さっきお姉さんに惚れちゃったんじゃないのー?」

「・・・」

「ほら、語りなよ、らしくないユウを見せなさいよ!
あははっ」

「・・・っぐ、調子が戻ってきたと思ったらすぐこれだもんな・・・腑に落ちねえ。」

「でもさ、冗談抜きにして、惚れ薬なんて作って本当にどうしようとしたの?」

自慢じゃないけど、私よりユウと仲のいい女の子なんていないんだから!
・・・さっきは冗談半分で否定されたけど、実際に飲ませる相手なんて私しかいない。
・・・はず!

「作ってみたのは、ただの好奇心だ・・・当時は知識も腕も未熟だったから一週間かかった。」

「そっか、好奇心か。」

これは多分本心。
・・・のほうが私も納得がいく。ユウが目的をもってそんな物を作るほうが違和感がある。
でも、当然疑問は残る。

「でも、なんで使わなかったの?」

「そりゃ・・・あれだよ。
さっき話した薬の作用がさ・・・」

「作用・・・って?」

「薬を飲まされた人はな・・・本当に薬に入った髪の毛をもつ人間に惚れるんだ。
一生、死ぬまで。
前にさ、出来上がった魔力は魔導書にうつさないと危ないって話があっただろ?
惚れ薬は、その点を逆手に取ってあえて魔導書に魔力を落とさないことでその力を120%発揮するんだ。
惚れ薬の効果は、本当に精神を蝕む。」


「蝕むって・・・ただ惚れるだけでしょ?
大げさじゃない?」

「大げさなんかじゃない!
あれを飲んだ人は・・・朝も昼も夜も髪の毛の持ち主を思い続け、欲し続け、生活の全てがそれになる。
飲まされる前に好きだったなによりも髪の毛の持ち主が好きになり。
飲まされる前にどれだけ熱中していたことも忘れて髪の毛の持ち主を趣味にして。
良いことや、悪いことの基準も全て髪の毛の持ち主。
自分よりもまず髪の毛の持ち主。

飲まされたら最後・・・そいつは・・・そいつじゃなくなる。」

「・・・」

「最初は、幸せさ。
想いをよせて薬を飲ませた側も、薬によって惚れさせられた側も。
でもどうだ?
自分に向けられるのは好きだったそいつの眼差しではない、薬によって狂わされた眼差し。
趣味についてほどほどに語る時間が好きだったはずなのに、薬によって狂ったように話を合わせてくる。
やたらと努力しすぎる。
本当に欲しかったのは、薬なんか飲むまえの、言い合ったり、意見があわなかったら喧嘩をしたり。
間違いは間違いだと指摘してくれたり・・・そこにスパイスとしてちょっとしたドキドキがあればいいはずなのに・・・薬じゃそうはいかないんだ。」

「まるで・・・経験してきたような言いぶりね。」

それよりも、ユウの口から『スパイスとしてちょっとしたドキドキ』なんて言葉が出るとは・・・

「俺は別に好きなヤツはいなかったから・・・経験したわけではない。
でも、容易に想像は出来たんだ。

実はさ・・・薬が完成したときに、真っ先にお前の顔が浮かんだ・・・。」

そんなの、言われなくてもわかってる。
さっきも思ったけど、ユウが薬を飲ませるとしたら私しかいないじゃないの。

「そしたらさ、それまでお前と俺がそうしてたみたいに、手合わせをしてみたり、馬鹿みたいな話しを延々と議論したり、喧嘩したり、チャーハン食べてみたり・・・そんな、そんな普通なことが自然にできなくなるんだ。

俺は、お前がお前じゃないとなんかやだ。」

「・・・ばーか。」

答えなんて、そんな大それたもんじゃない。
これは、直感だ。

私も、ユウはユウじゃないと嫌だ。

簡単だ、簡単なことだったんだね。

「うふふっ、あははっ!ばーか!ばーか!」

「なんだよ!お前がらしくないとこみせろっつったんだろ!?」

「そうだ!今日!2人でご飯食べに行こうよ!
帰ったらアイリとタマジローさんに伝えてさ!
2人の時間を大事にって・・・さ。」

「そ、そうだな。おう。
確かに俺たち、アイリさんとタマジローさんの邪魔だよな。」

そうじゃないけど───

「そうそう!恋人同士の間に旅の人が割り込むのは野暮よ!
私!レストランいきたいな!」

「そうだな!俺もなんかレストラン行きてえ!
奮発しようぜ!?祝勝会だ!祝勝会!」

「なにと闘ってたのよ?ふふっ」


幸せになれるか・・・愚問だ。
私は、今が幸せだ。
全部、わかった。

またお姉さんの言うとおりだったな・・・


▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

その日、アイリとタマジローは2人の時間をゆっくり過ごし。

ユウとティアはレストランで喧嘩をした。

自然が溢れる川のほとり。
鳥たちの鳴き声、木漏れ日、せせらぎ音、緑と青と黄色のコントラスト。
清々しい空気の中、釣りをする2人の人間の姿がある。

「ばーちゃばーちゃ、どどどどどー・・・釣れない。」

小難しい顔でティアが釣り糸の先を眺める。

「あーらら、可哀想に。
それより見ろよ、またコイツだ。」

ユウが釣り針に引っかかっている魚をティアへと見せる。
なんの特徴もない、普通の魚だ。
小さな子供に『魚の絵をかいてごらん?』と言ったら八割の子供はこの魚を描くだろう。

「ふぅー、釣れてるだけマシじゃないのよ。
私も『こっ!こいつ・・・!大物だっ!』ってやりたい!」

アイリが報酬の武器を作っている間、2人は特にやることがなかった。
ユウはタマジローと魔法の研究などで時間を潰すこともできたが、ティアはとにかくやることがなかった。
ユウとタマジローが魔法の研究に没頭している間に、ティアは一人でいくつかの依頼をこなしたが、よくよく考えると無理して依頼をこなす必要もなかったことに気づき、まったり過ごすことにした。
そこで、忙しいアイリのために晩御飯の魚を釣ろうと釣りに出かけたが、コツがわからないのでユウへと救援を求めて今に至る。

「小物でも引っかかりさえすれば出来るのにな?
『コイツはでけぇっ!』ってさ。」

「うぐ、なによそれ。
釣り上げた後恥ずかしいじゃないの・・・。」

「どうせ逃げられんなら見栄張っておいた方がいいだろう?
なあ?どうせ逃げられんならさ。ははっ」

「っこの!見てなさいよ!そんな普通のヤツじゃなくて!すっごいの釣るんだから!すっごいの!」

「具体的にどんなのだよ。
まぁ、やれるもんならやってみろってな。
おっ!またかかった!

・・・

・・・・・・まただ、普通。」

「待っててね・・・アイリ、今夜はおいしいお魚料理を・・・あっ!凄い!ユウ!みて!とうとう私の竿も!!」

ティアの竿に何かが食いついた。

「お!ようやくきたか!ほら!はやく!はやく!あれしろよ!」

「え?っあ、うん!!

こっ!こいつ・・・大物だっ!」

「うん!いいぞ!雰囲気はでた!
あとはプチッとアンドリリースで完璧だ!」

「いやよ!絶対逃がさ・・・って!ユウ!!
この魚賢い!重いし賢いよ!さっきからずっと川の流れを利用して川下に向かって逃げてるよ!!」

「そんなわけ・・・あ、ほんとだ、釣り糸がずっと川下の方に張ってる!」

ティアは竿に緩急をつけつつ、それを一気に釣り上げた。

「ぬおおおっしゃああああいっ!!どやーーー・・・っえ?」

「・・・っは?」

ティアが釣り上げたものは釣り糸に引かれて宙を舞い、それを見上げたユウとティアは首を傾げる。
太陽とかぶさり、逆光でよくは見えなかったが、どう見てもそれは魚ではなかった。
数瞬後それは大量の水を吐き出し、2人は仲良く冷水シャワーを浴びる。

「「ぬわああああっっっ!!?」」

「なに!?なに!?ユウ!?何が釣れたの!?
髪の毛が邪魔で・・・っふう。・・・え?」

「・・・おい、ティア。
今晩のアイリさんの飯は皮の水煮か?
そりゃ川下に向かって逃げるし重たいだろうな。こんなの。」

2人の足元にはぐしょぐしょの革製のリュックが落ちていた。
ティアが釣り上げた時、偶然口が開き、中にたまっていた水が溢れ出したようだ。

「・・・ほ、ほら。
『海腹川背』って、いうでしょ?
脂が乗ってるのが釣れたんじゃ・・・うん、ごめん。
なんでもないの。」

「ったく、うまいこと言ったら許してもらえるとでも思ってんのか?

まあ、許す!」

「ありがたや。」

「それより・・・これ。」

ユウが辺りに散らばった物品をみる。
水と一緒に吐き出されたリュックの中身だ。

「謎の液体が入ったボトル、おそらくマナ水だな。
それから、もうふやけてるしにじんでるからわかりにくいけど、たぶんそこのぐちゃぐちゃの紙はこの周辺の地図か・・・
滲んでふやけてよくわからない写真と。
あと気になるものは・・・」

「・・・うん。たぶんだけど・・・これ、シルバーランクのペンダントじゃない・・・?」

ティアがリュックの肩紐に縛りつけてあるアクセサリーを指差す。

「これ、川上から流れて来たんだよな?
丘?滝?からか?」

「・・・うん、多分・・・」

「地図、なにか書き込んである。
乾かしてみようぜ。」

「うっかり、燃やさないでね?」

「まあ、頑張る。」

ユウは破けてしまわないよう、地図をそっとそっと持ち上げて、平たくて大きい石の上に乗せた。
そして火の魔法で石を加熱していく。

しばし乾かしながら2人は地図を注視する、そして、あることに気づいて慌てて帰り支度を始めた。


「しかしこれはすごいことになったなぁ!」

「うん!うん!まさか釣りでこんなのが釣れるなんてね!」

「しかしなんだ?さっきからみんな俺達のことみてねえか?
もしかしてコイツのことがバレたのか?」

「いや、多分、違うと思う。」

ずぶ濡れの2人の男女がボロい革リュックと釣竿、バケツ、生乾きの紙切れを持って街中を走っているのだ、注目されるのはとうぜんである。

「アイリさーーーん!」

「アイリーーー!」

「「ただいまあっ!!」」

スチャっと、2人は工房の入り口で華麗に止まった、テンションが上がりすぎている。

「っちょ!外で大声で私の名前呼ばない!みんなみてるじゃないの!
って!何よあんたら!?びっしょびしょじゃない!はやく着替えてきなよ!」

「おう!シャワーも貸してください!
それよりアイリさん!大変だ!ティアが宝の地図を釣ったんだぜ!!?」

「釣ったんだよ!!?」

「はあ・・・?宝の地図を?釣った・・・?
風邪薬用意しとくよ。きっと塗れたせいで熱があるんだね。
悪化しないうちにシャワー浴びて着替えな?」

当然である。
そもそも宝の地図という言葉ですら信じられないのにそれを釣ったというのだ。
アイリからすれば2人の言動は異常か悪ふざけかの2択である。

「違うんだよ!アイリさん!釣ったのはリュックで中身が宝の地図だったんだってば!」

「お宝が手に入ったらもう釣りなんかしなくても魚がいっぱい食べれるのよ!?アイリ!」

「・・・うーん、ユウの言ってることはなんとなくわかるけど・・・
ティアはわからないね。
なんでお宝が手には入って結局食べる物が魚だけなのよ?」

「ちーがーうーの!アイリ!魚じゃなくて地図が釣れたの!」

「そうだ!見た方が早いだろ!?
みろよ!アイリさん!」

ユウは勢いよく生乾きの地図をアイリへと差し出した。
怪訝な表情でそれを手に取ったアイリだが、地図を眺めるとみるみるうちに表情が変わっていく。

「・・・た・・・」

「「た?」」

「タマジロー!!!タマっ!タッ!タマジロー!!!!」

アイリは恐ろしい速さで工房から出ていった。

───十数分後───

そこにはタマサブローと共にソファーの上から見下ろすタマジローと、タマジローの座るソファーの前で正座をさせられてる三人と一匹の姿があった。

「・・・で?誰だ?最初にこれが宝の地図だとか騒ぎ始めたヤツは。」

「お、俺です。」

「いや、私です。」

タマジローは魔法の研究中だったようで、アイリがドアを蹴破って部屋に入ったとき、あまりのアイリの慌て様につられて慌てた。
その結果、作っている最中だったマジックアイテムは失敗、壊れてしまった。

「違うんだ!アタシも早とちりしてタマジローを驚かせちゃったから・・・」

アイリの横で座っているタマはひたすらウルウルしている。

「仕方ねえな、実質失敗したのは俺だし、アイリと、何故か一緒に怒られてるタマに免じて許す!」

「「「ありがたや。」」」

「しかしお前等もなぁ・・・なにが根拠でこれが宝の地図になるんだ?
いや、可能性がないわけでもないが、地図に赤い×印がついてたらそれは宝の地図なのか?」

タマジローがびらっと見せつける地図、丘の岩壁の奥にはっきりと太い×印が描いてある。

「いや、タマジローさん、逆にそれをみて宝の地図以外に何が浮かぶんだよ・・・?」

「あのな?ユウ・・・いいや、めんどくせえ。
とにかく、調べる価値はあるかもしれねえな、リュックと一緒に・・・というか、川上から流れてきたリュックに地図が入っていたんだな?」

「はい、私がそれを釣り上げたんです。」

「ふむ、気になった点は?」

「うーん、なんか、滲んだ写真が入っていました。
それから、リュックにシルバーランクのペンダントと思しきアクセサリーも付いていましたよ?」

「・・・旅の人の、落とし物ってことか?」

「まあ、他にもマナ水をはじめとしてそこそこ色々入ってたよ、多分旅・・・もしくは依頼の真っ最中だったと思うんだ。」

「うーん、ヒントが少なすぎるな。
手っ取り早いのは依頼所あたりに向かって、持ち主と思われる行方不明になったシルバーランクの旅の人、そして最後に受けていた依頼、
そこら辺からヒントが出ないなら、岩壁の奥の×印にあたる所に関係する依頼があるかを聞くってところか。」

「持ち主、生きてるのかな・・・もしかしたらティアはとんでもなく縁起が悪いもんを釣り上げちゃったんじゃないの・・・?」

苦い顔でアイリはティアの方を見る。

「・・・っ、や、やめてよ、さっきのテンション返してよ・・・」

「・・・うーん、とにかく、タマジローさんの言うとおりだな、依頼所、行ってみるか?」

「俺も、気になるから行ってみるか。アイリはどうする?」

「あ、アタシは工房開けとくし、早く報酬の武器を作らないといけないから待ってるよ、結果だけ教えてね?」

「そっか、それじゃあ早速いってみましょ?
お姉さんなら、なにかわかるかも・・・!!」

ティアは受付嬢の勘はよく当たると信じている。

「ついで、×印の場所にも行ってみるか。
ユウ、ティア、準備しやがれ!」

「「りょーかいでーす!」」

それからさらに十数分後、ユウとタマジローは支度を済ませて工房の入り口でティアを待っていた。
しばらくして、あまりにも遅すぎるのでユウが様子を見に行くと、パンパンのリュックをぱしぱし叩き続ける少女の姿がそこにあった。


ユウからリュックを取り上げられ、とうとうティアは小さめのショルダーバッグの使用しか認められなくなった。
それでもめげずにパンパンに物を詰めるティアに根負けしたユウは、とりあえずティアの支度を手伝い、工房を出る。

「ごめんなさい!タマジローさん!お待たせいたしました!」

「・・・相変わらずパンパンだな・・・爆竹と煙玉はちゃんと持ったか?」

「いや、いらねーから、なんなんだよもう・・・。」

適当なやりとりをかわしつつ、三人は依頼所へと足を運び始める。
依頼所へとたどり着くなり早速声を上げたのはユウでもティアでもタマジローでもなく受付嬢であった。
いつものことなので一行はいつも通りの対応で迎え返す。

「ややっ!タマジローさん!?タマジローさんじゃないですか!?
それに若いのたち!」

「「「どうも。」」」

「本当に元の姿に・・・いやぁ、良かったですねぇ、タマジローさん・・・
若いのもよく頑張った!
実際自分の目で確かめてみると感無量ですね・・・」

「おう、受付ちゃんにも色々世話になったな!
これから旅の人タマジロー稼業も再開だ!
それにただ元に戻っただけじゃねえんだ、増えた!」

「・・・へ?・・・増えた?」

「あの、魔法が失敗して・・・なぜか獣の姿と人間の姿に分裂して、しかもそれぞれにちゃんと人格?獣格?も宿ってるんだ・・・
最初に獣が出てきたときは流石に俺も青ざめたよ・・・」

「まぁ、そういうことだ!
おかげで前より賑やかさ!はっはっは!」

「あっはっはっは!何よそれ!流石じゃないのよ!
本当、若いのは面白いわねえ!斜め上をいくわー」

きゃあああと受付嬢は腹を抱えて笑っている、そして落ち着いた辺りで話を始める。

「・・・ええ、すみません、ふふ、それで、今回はどのようなご用件で?」

「ああ、その、ティアが宝の地図を釣り上げて・・・」

「はい、釣り上げて・・・」

受付嬢は再度腹を抱えて声にならない笑い声を上げる。

「お、おい、お前ら、話をややこしくするなよ。
受付ちゃんが呼吸困難で死にそうじゃねえか・・・」

「───っはっ!はぁ、はあ、ふひひ!
ぜぇ、ふぅー、ご、ごめん、ちょっ、お姉さん、ツボに入っちゃった・・・
で・・・ぶふっ!たっ!宝の?ちっちずっ───きゃあああっ!!!」

「う、受付ちゃん、すまねえ。
俺が説明するよ・・・。」

「はっ!はふっ、わかっ!お願いしまっ!はふっ、」

「その、今朝な、ティアがアイリの晩飯の魚を釣りに西の川へと出掛けて、そこで、その、あれだ、シルバーランクのペンダント付きのリュックを釣り上げてよ───

受付嬢は、椅子ごとひっくり返った。

───数分後───

「ふ、ふむ、それで、最近行方不明になったシルバーランクの旅の人はいないかを調べに来たと、いうわけですか・・・ありがとうございます、タマジローさん。
たしかにこれはシルバーランクのペンダントで間違いないですね。
・・・まったく。お姉さん、腹筋割れたわよ、若いの。」

「ああ、それからできればそのペンダントの持ち主が最後に受けていた依頼もしりてえ、お願いできるか?受付ちゃん?」

「お安い御用です、まかせてくださいな。
少々お待ちください。」

受付嬢は席をたち、カウンターの奥へと向かっていった。


しばし、嬢の帰りを待つ間、三人は妄想にふける。

「なぁ、でもよ、これが宝の地図じゃないんだったらこの赤いしるしは何を意味してるんだよ?」

「×だから・・・立ち入り禁止?」

「いや、この辺りに立ち入り禁止区域はないさ。
それにこれはどう見ても手書きだ。
公認の立ち入り禁止区域なら予め地図に記載しておくだろう?」

「そうだよなぁ・・・宝以外の何かしらか・・・ティア、なんだと思う?」

「え!?私!?
立ち入り禁止区域以外でお宝でもなかったら・・・何かが居るとか・・・
ほら、お家で飼うのを反対された動物をお母さんに内緒でこっそり×印の場所で世話してたり・・・!」

「えらくハートフルだな、オイ。
それはないにしても、何か居るって言うのは有り得ない話ではないかもな・・・
それに・・・印の場所から移動しないとなると・・・おそらく普通の何かではない。
ユウは?お前はどう考える?」

「俺は・・・何かが居るというよりは何かがあると考える。
しるしなんだ。その方が自然だろ?」

「ふむ・・・そうだな。」

「でも気になるのは、なぜ、リュックだけが流れて来たのかっていうところですよね?」

「死体は・・・沈むから?・・・沈むのか?」

「・・・っちょ、ユウ・・・やめてよ・・・」

「追い討ちをかけるようでわりぃが・・・俺も持ち主は生きてるとは思えねえなぁ・・・」

「っぐ、タマジローさんまで・・・」

「まあ、どっちにしてもリュックの持ち主が居なくなったのが、×印に向かう最中だったのか、はたまた×印から帰る途中であったのか。
そもそも×印とは関係なく姿を消したのか・・・謎は深まるな。
なんか、禁忌のニオイがしねえか?野郎ども。」

「お待たせいたしました。」

受付嬢がカウンターへと戻ってきた。
三人は、固唾をのんで受付嬢の言葉を待つ。

「結論からいうと、ペンダントの持ち主は現在行方不明ね。」

「「「・・・!?」」」

「詳しいことは当人のプライバシー保護のためにもふせるけど、その人は主に遺跡や未開の地の調査、報告などに関する依頼を多くこなしていたようね。
さしずめ探検家ってところかしら?
間違い無く、本物のシルバーランクの旅の人だったみたい。」

「マ、マジかよ、受付ちゃん・・・。
そ、それで?そいつが最後に受けていた依頼ってーのは・・・?」

「そうですね、行方不明になる直前に受けていた依頼は

『依頼主の呪いを解く』という内容の依頼だったようです、シルバーランクの。
どうやらかなり遠くの街で依頼を受け、はるばるこんなところまで来ていたようですね。

しかし、なぜ探検家に近い活躍をみせていた当人の最後に受けた依頼がそんなものだったのかは不明ですね。
そしてもちろん、行方不明になった原因も不明です。
さらに言うと、なぜこの周辺で当人の持ち物が見つかったのかも不明です。」

「・・・な、なぁ、お姉さ───

「やめておきなさい?」

「へ?」

「ユウ・ラングレル、ティア・アルノーティス、アナタたち、おそらくその地図の印の場所へと向かおうとしているんじゃないかしら?
隠さなくてもわかるわ。」

「・・・っ!!」

「タマジローさんなら大丈夫かもしれないけど、アナタたちは痛い目を見るわよ?」

「・・・そ、そんなこと・・・」

「アナタたちは若いのよ、若いの。
シルバーランクの探検家でさえもその手がかりを最後に行方不明になっているのよ?
アナタたちの若さでその手がかりに食いつくなんて、とてもじゃないけど地雷だと思うの」

「「・・・」」

「う、受付ちゃん・・・」

ユウもティアもうつむいてしまった。
受付嬢の言うとおりである、いくら実力があろうとも、先日旅の人になったばかりの2人は圧倒的に経験が少なすぎる。
さらに、行方不明になったシルバーランクの旅の人の実力は2人よりも上であった可能性もある。
なにも考えずに行方不明者の足跡を追うのはあまりにも危険すぎる。
しかしその様子を見た受付嬢は、2人に意外な言葉を放つ。

「でも、どうしても行きたいと言うのならば、アナタたちがこの依頼を引き継ぎなさい。」

「「えっ!?」」

「な、何言ってんだよ受付ちゃん!
コイツらノーランクだろう!?シルバーランクの依頼は受けられねえんじゃねえのか!?
まぁ、俺も受けられねえけどよ。

というか、なにも依頼なんて受けずに個人的に勝手に印の場所に向かえばいいだろ?
なんでそんなことをする必要があるんだ?」

「若いのの事を思ってですよ、タマジローさん。
ふふ、若いのに色々な経験をさせるのもお姉さんの仕事ですから。
つまり、お姉さんが怒られればいいんですよ。」

「・・・はぁ?・・・あの、受付ちゃん、最近まで獣だったせいで俺も頭が悪くなっちまったようだ。
もっとわかりやすく説明してくれねえか?」

「保険ですよ、保険。
ノーランクの2人がシルバーランクの依頼を受けることで、2人はもう少し安全に刺激的な経験ができるのです。」

「え?お姉さん?何言ってるんだ?」

「ふむ、ユウもわからねぇってことは、単に俺の頭が悪くなったってわけでもないみたいだな。」


困惑する2人を余所に、ティアだけはブンブン頷いている。

「つまりここはお姉さんの言うとおりにするのが最善策だということですね!分かります!」

「・・・おい、ティアよ・・・それ・・・」

「ああ、多分俺もユウと同じことを思った・・・」

「「絶対わかってねえよな・・・ティア。」」

よく話の流れがわからないままに、三人は自分たちのランクよりも上のランクの依頼を引き継ぐ事になった。
受付嬢の言葉の真意を掴めぬまま、依頼所を後にする。


「シルバーランクの依頼かぁ・・・大丈夫なのかね・・・っても、俺らは依頼主の顔も名前も住んでる場所も、呪いの情報も一切知らねえんだけどな・・・どうしろってんだよもう。」

「多分、お姉さんはこの依頼を私達に成功させようとは考えてないと思うの。私。」

「だろうな、受付ちゃんの言いぶりだと、今回俺らに依頼所のルールを破らせてまでシルバーランクの依頼を受けさせたのには、もっと違う理由があるからだろう。
だからあんまり依頼の内容は気にすんなよ、ユウ。
依頼主さんにゃわりいが、俺たちには呪いなんざ関係ねえよ、ハナから解くつもりも義理もねえ。」

受付嬢の言い方は、依頼を引き継ぐことよりも三人がシルバーランクの依頼を無理やり受けることの方が重要だとも受け取れる。
三人は地図の地点を目指しつつ、受付嬢の腹を探る。

「2人のためを思ってか・・・どうやらそこに受付ちゃんの思惑のヒントがありそうだ・・・俺には関係ねえ様だしな。」

「安全に、刺激的とか言ってたな・・・わからん・・・」

「多分そんなに悩まなくても大丈夫だよ、お姉さんが言うんだから!
それよりこの×印、岩壁を越えなきゃ行けないってことですよね?タマジローさん。」

「・・・まあ、俺もユウも魔法使いだ、風魔法の一つでも吹かしときゃ岩壁の一つや2つ、普通に登れんだろ。」

「そうだな。そうじゃなくとも土魔法あたりで階段作ったりもできるし、別に大した問題じゃねえよ。」

「・・・なるほど!流石だ!
・・・?
そういえば、タマジローさんは魔法使いなんですよね?」

「あぁ、そうだが・・・それがどうした?」

「では・・・今タマジローさんが腰に装備している双剣は・・・?」

「・・・あ、言われてみればそうだな。
なんだよそれ。タマジローさん。」

ティアが指差す先、タマジローの腰には一対の双剣がかかっている。
非常に美しい見た目で、どう見ても立派な武器である。
魔法で戦うならそんなものはそもそも必要ないし、必要だとしても使うならば杖やロッド、指輪あたりがふつうである。
どんなに変わっていてもせいぜい魔導書辺りが限界であろう。

「あぁ、そうか、俺はただの魔法使いじゃねえからな・・・これはアイリのお手製の武器。
俺専用に作ってもらった双剣 『ダブルタマジローデストロイ』だ。」

「・・・いや、名前・・・名前。」

「・・・アイリが名前つけたのかな・・・」

「まあ、名前はどうでも良いけど、双剣使うクセに魔法使いなのか?」

「まあな。というより俺は別に魔法を使うのに杖も指輪も魔導書もつかわねえ。
だから剣自体はただの双剣だ。」

「ふーん。よくまあそれで普通に魔法が使えるな・・・」

「いや、そりゃ当然俺だってなんか使った方が魔法は使いやすいさ。
というより、杖も指輪も魔導書もナシに普通に魔法使えるヤツなんてかなり少数派だろ?
俺はもともと剣士だったからその補助に魔法を使う方が戦いやすいだけさ。」

「っほおー、『マジックナイト』って奴なんですか!?タマジローさん!?」

「惜しいな、俺は戦闘スタイル的にはナイトじゃない、強いて言うなら『マジックソードダンサー』だな。」

「うげー、タマジローさん、ダンサーかよ・・・その見た目で踊り子かよ・・・」

「ちげえよ!ソードダンサーだっつってんだろ!?
ビーストウォーリアの研究をしていたのも、あの魔法と俺の戦闘スタイルの相性がよかったからさ。」

三人は他愛もない会話を続けながら歩き続け、ようやく岩壁までたどり着く。

「着いたな。さて、登るぞ。
ユウ、ティアも登らせてやれ。」

「おう、タマジローさんは?」

「先に行く。」

そう言うと同時に、タマジローの足元に周囲から風が集まる。
しばらくすると風がとまり、タマジローは一気に岩壁へ向かって跳んだ。
その瞬間、タマジローを追うように風が立ち上り、タマジローを難なく岩壁の上まで運んだ。

「・・・っと。
おーい!お前らも早く来いよ!」

それだけを言い残し、タマジローはすたこらと奥へと進んで見えなくなってしまった。

「・・・うん。思ったより普通に登ったな、タマジローさん。
つまらん。」

「い、いや、普通でいいじゃないの。
少なくとも私は普通がいい。」

「そうか?ティア、土魔法と風魔法、どっちが好きなんだ?」

「え!?い、いやそんなの任せ───」

言いかけたところでティアの脳裏に血まみれのユウが浮かんだ。
自分に使っても自滅したのに、他人に使ってうまく行くはずがない。
ペールタウンに入る前の悲劇をティアは覚えていた。

「・・・そんなの、土魔法に任せるにきまってるじゃない・・・」

「そっか、じゃ、自分で登ってこいよ。」

ユウは少し岩壁から離れて杖をぐるりと回して地面を叩いた。
すると岩壁へ向かって一定間隔で徐々に高くなっていく形で数本の円柱が飛び出した。
その様子にティアはほっとする。

「ありがとう、ユウ。
あなたのおかげで一本マナ水が節約出来たわ。」

「は?なに言ってんだよ、じゃあ、俺は風魔法で一気に登るぞ。」

それだけを言い残してユウは恐ろしい勢いで岩壁へ向かって飛んでいった。
数秒後はるか上空から一人の男の声が聞こえ、その声を聞いたティアは土魔法を選んだ自分を心の中で誉めた。

「うわっ!高すぎた!
ぬわあ!コノヤロ!鳥!邪魔だ鳥!焼き鳥にすんぞこのやろ!!突っつくなよ!痛えんだよ!」

「・・・バカね。」

ティアは岩壁から少し離れたところの一番低い円柱からゆっくりと岩壁の上を目指した。2人が無事に岩壁の上で合流を果たした時、岩壁の上に広がっていた光景に言葉を失った。

「おう、やっときたのか。
おせえんだよ、もう片付いた。
それより見ろよ、見渡す限り草原でなんもねえぜ?」

タマジローである。
岩壁の上はさらに草原になっていて、見渡す限り遠くまでずっとただの草原であった。
しかし、ユウとティアが驚いたのはそこではない。

タマジローが登ってからユウとティアが登るまで、さほど時間はかかっていなかった。
にもかかわらず、芝生の上で胡座をかいて待つタマジローの周りには十数頭の魔物の死骸が転がっていた。

「・・・っな・・・これ、タマジローさんが・・・!?」

「こ、こいつらって、結構強くなかったっけ?・・・ユウ・・・」

「なんか知らんけど群で襲ってきたから全滅させといた。
ほれ、行くぞ。」

「「・・・」」

三人は地図上の印の地点を目指して歩き始める。


「くらいやがれ!フレイム=───

「おっせ。タマジロー挽き肉アタック!!」

ユウの魔法が発動するよりも速く、狙いの魔物の側頭部にタマジローの右かかとがめり込み、抜けきると同時に左手の刃が抜け、最後に右手の刃が魔物の頭を縦に割る。

「っの!また!
おいおい!タマジローさん!さっきから俺の獲物横取りすんじゃねえよ!」

「俺の担当はもう片付いたからな、ついでだよ。」

「っ、退きなさい!
・・・ふう、これで最後か・・・」

ティアが魔物を流れるような3連撃で仕留め、剣をしまう。

「タマジローさん7匹、私6匹、ユウ2匹・・・だね・・・ぶふっ!きゃあああっ!もっと働きなさいよー!あははは!」

「うるさい!
それにしてもペールタウンの周りの魔物がすくねえと思ってたら、ここいらにこんなに集まってたんだな。
もう四回目だぜ?襲われたの。」

「うん、最初はびっくりしたけど、もう慣れたよね・・・
それにしてもタマジローさんの戦い方、派手ですね・・・」

「派手だし、なんか、格好良すぎてタマジローさんにはミスマッチだぜ。
その体型でなんて動き方しやがる。猫みたいだな、猫背だし。」

「そうか?俺は長い手足をうまく使いたいからこういう戦い方になったんだがな・・・むしろかなりマッチしてると思うぜ?」

「ティアみたいな体型のほうがそれっぽいと思ったけどな、俺は。
チビで小回りがきいてしなやかな感じ?」

「なによそれ。バカにしてるの?」

「っと、そろそろ地図の地点の辺りだぜ?お二人さんよ。」

「「っ!?」」

タマジローが地図を開いて印をとんとんと叩いている。
ユウとティアは周りを見渡す。

「・・・なにもないぜ?タマジローさん。」

「・・・そっちもないの?こっちも何もないわね。」

「ッチ!掴まされたか。この地図、ただの紙切れだな。」

「うーん、みたいですね。釣った本人としては大変遺憾です。」

「まぁ、まてよ、タマジローさん、ティア、そう断定するのはまだ早いと思うぜ?
どういう経緯かはしらねえけど、その地図の持ち主が行方不明になっているのは間違いねえんだ、なにもないってことはないだろ?」

「・・・勘違いで地図に印つけて、挙げ句油断して魔物にパクッとされちまったんじゃねえのか?」

「まぁ、そうだとしても、地図は川を下ってきたんですよね?
もっと草原をこっちに進めば川と滝があるはずですし、その辺にまだ手がかりがあるかもしれませんよ?」

「そうだな、行ってみるか。」

三人は滝の方へと向かって足を運んだ。
途中、思い出したかのようにティアが話を始める。

「あ!そういえば!」

「どうしたんだ?ティア。」

「ティアが何かを思い出した時は大概重要なことなんだよな。
ほんと、いっつも大事なことを忘れるから・・・」

「っち!ちがうよ!思い出したっていうより、思いついたの!
あの!タマジローさん!たしか、行方不明になった人は遺跡や未開の地の探索が得意だったんですよね!?」

「いや、俺は知らねえけど、受付ちゃんはたしかそんなこと言ってたな。」

「で?それがなんだってんだ?ティア?」

「ふっふっふ、バカね、ユウ。
おそらくその印は古代遺跡の位置!そして遺跡は!その印の地下にあるのよ!」

自信満々でティアは地図の印を指差す、その様子に一瞬ユウとタマジローは豆鉄砲を食らった鳩のような表情で固まる。

「・・・っぶふ!だっはっはっはっは!!バカはお前だろ!そんなわけある───

「・・・なるほど・・・妥当だな!」

「えっ!?マジかよタマジローさん!?」

意外なタマジローの反応にユウはティアの考えに聞く耳を持つ。

「タマジローさんもそうおもいますよね!?
そして、最後に受けた依頼。
呪いに関する情報がその遺跡に関係しているから地図の持ち主はその依頼を受けたのでは・・・!?」

「おもしれえ!ティア!その発想はかなり良い線いってると思うぜ!ユウも少しはみならいやがれ!」

「・・・な、なるほど・・・理にかなってやがる、ティアのくせに。」

「ティアのくせには余計よ!」

「でも、そうだとすると・・・リュックは何故川から・・・?」

「・・・そうだな・・・リュック・・・ふむ、なんか、嫌な予感がしてきたぞ、おい。」

「どうしたんだよ、らしくねーな、タマジローさんが嫌な予感なんてさ」

「・・・SOS・・・じゃねえのか・・・?
滲んだ写真はおそらく自分の行る場所を写したものだったりよ・・・
だってそうだろ?遺跡に向かうなら普通、遺跡の入り口を印として地図につけるだろ?
それをあえてこんな半端な位置に印をつけたんだ・・・」

ティアは青ざめた顔で両肩を抱いて震えた。

「逆に言うと、水が続く場所から遺跡に入れる・・・さらに言うと、水場をたどっていけばリュックの持ち主の元へとたどり着けるってことか・・・?」

「今までの仮説が全て正しければ・・・な。」

先ほどよりも気まずい雰囲気で三人は滝をめざし始める。


「あーもう、遺跡なんかなくていい!地図だって紙切れで良いから普通にリュックの持ち主さん生きててください!」

ティアは川にたどり着くなり両手を絡めて神に祈る。

「生きてるのが一番だけどな・・・しかし、リュックだけ流される状況ったら・・・」

「タマジローさーん!ユウがまた持ち主さんを殺したがる~!」

「いや、すまねえ、ティア。
ユウの言うとおりだ。」

「ぬぅわああーー!イヤだ!私死んだ人の遺品なんて釣り上げてないもん!
ユウもタマジローさんも人殺しだあああ!」

「お、落ち着けよティア、俺も悪かったよ。
じゃあ、早速なにかしらの手がかりを探してみようぜ。
タマジローさんはとティアはこっち岸、俺はあっち岸を辿るよ。」

そういうなりユウは川から頭を出す石を跳び継ぎ、向こう岸へと行ってしまった。

「そうだな、頼んだぜ、ユウ。
ほら!ティア!いつまで頭抱えてやがる!」

「ぬわあああん!!殺されるー!!!」

「ッチ!ユウの野郎、仕切るフリして俺にティアのこと押しつけやがったな!」

しばらく三人は滝の方へと向かって一人を除いて適当に手がかりを探った。
ティアだけは、どこから持ってきたのかよくわからないルーペでひたすら地面を探り続けていた。

「お、おい、ティア・・・それ、逆に手がかり見つけにくいんじゃねえのか・・・?」

「私はどんな小さな手がかりも見逃しません!
持ち主は絶対に生きてますから!」

「おい・・・おいおいおい!ティ───

盛大な水しぶきが上がる。
どんどんどんどん前のめりに手がかりを探しつつ、川へと近づいていったティアはタマジローの注意に気づかずに川に転落した。

「うわあああっ!!冷たっ!タマジローさん!タマジローさあああん!!」

「バカやろー!足元しか見てねえから・・・つか足元しか見てないにしても気付きやがれよ!!」

「お!溺れ───ない!?
タマジローさん!?足が!底に足がつきます!」

「いいから、早く上がってこいよ、風邪引くぞ。」

バシャバシャと水音をたて、ティアは川岸へと上がってくる。

「ユウと合流したら火の魔法で一旦乾かせよ、休憩もかねて乾くまで作戦会議だ。」

それから三人は滝壺のそばで合流、予定通りに作戦会議に移る。

「───で、見事に川に転落したと。
・・・アホ。」

「ユウよりも切れ者だと思ってたんだがな・・・間抜けだ。」

「・・・ひどい。」

ユウのローブにくるまりながら、肌着とスパッツ姿のティアは焚き火にあたる。

「・・・まあいい、休憩は必要だし、どうせティアだ。
何かやらかすとは思ってたし、もうこういうのにも慣れてるからな。」

「そうだな。そして、残す怪しいところは・・・」

三人は滝の裏側に目をやる。

「やだよ、結局手がかり見つからなかったよ。
なのに滝の裏に洞窟なんて嫌な予感しかしないよ・・・」

「もうあきらめろよ、ティア、どうせこの洞窟の奥になんかあるんだろ・・・こればっかりは間違いねえだろ。」

「そうだぞ、ティア、ユウの言うとおりだ・・・この洞窟、かなり広そうだし、これならきっと×印の位置まで続いてるぞ。」

「そ!そうだ!きっとリュックの持ち主は今も洞窟の中に家をもっていて!そこで幸せに───

「「いや、ねーから。」」

「・・・遺品・・・かぁ。」

ティアの服が一通り乾いたのを確認し、三人は洞窟内へと足を進める。

「・・・それにしても、真っ暗だぜこの中・・・一旦街にもどってちゃんと準備してきた方が・・・」

「ふっふーんここはティア先輩におまかせね!」

「「・・・?」」

「こんなこともあろうかと私!魔導ライトをしっかりと───

「奇遇だなティア先輩、こんなことがあろうかと俺もマジックフェアリーを持ってきておいたんだよ、しかも、3つ。」

「わりい、ティア、俺タマジローさんにマジックフェアリー借りるよ。」

「そ、そうですね・・・私もそっちにします・・・」

マジックフェアリーとは一般マジックアイテムの一つで、使用者の魔力を吸収して輝く直径約十センチ程度の玉である。
この玉はただ輝くだけではなく、使用者の思い通りに動かすことができ、使っても両手がフリーになるのが長所である。
短所は得手不得手があり、使えない人はうまく使えないし、人によっては魔力を消費する感覚に慣れていないせいで体調を崩したりもする、これはマジックアイテム全般に言えることでもある。
そういった特性から、今市場は普通の品とマジックアイテムとが7:3くらいの割合で流通している。

「で?聞くまでもねえと思うが、お前らマジックアイテムは使えるのか?」

「タマジローさん、それ、競輪選手相手に自転車に乗れるのか聞いてるのと同じだぜ?」

「一般人向けの物ですから・・・多分、使えますよ。」

タマジローからマジックフェアリーを受け取るなり、2人はそれを輝かせてみせる。

「明るさは・・・こんなもんかな・・・」

ティアは手のひらの上で明るさを調節し、それを前方頭上の辺りに移動させる。
ふわふわと浮かび、輝くそれは正に妖精の様である。

「もっと明るく、もっと明るく・・・うわっまぶしっ!
結構容量ある奴持ってんだな、タマジローさん。」

「まあ、一応魔法を研究してる身分だからな、こだわってんだ。
だが、いくらなんでもあんまり調子にのって光らせると割れるぜ?」

ユウは自分の周りをくるくる回すように飛ばして遊んでいる。

「これで暗さは解消だな、行くか。」

タマジローは先陣をきって洞窟内を進み始める。

洞窟内の道は幾重にも上へ下へ、右へ左へと枝分かれをしていて、少しでも道を間違えば二度と出てこられないのではないかと感じるほどに複雑である。
三人ははぐれないよう、慎重に洞窟内を進む。
ずっとずっと洞窟内の川を沿って歩いていた最中、タマジローはふと足を止める。

「・・・お、おい、見ろよ・・・あれ・・・!!」

異様に明るい。

タマジローが指さす先、今までの洞窟の壁とは全く質の違う壁。
青白く光を放つ建物が、川を跨ぐようにして建っている。
それはその巨大さ故に、まるで洞窟と一体化しているような錯覚すら覚える。
青白い光の正体は、建物の壁で青く輝く炎。
だれが灯したわけでもなく、壁からせり出たカップ状のホールから延々と炎が上がり続けている。

「ほ・・・本当に・・・遺跡があっちゃった・・・」

ティアは目を丸くして生唾を飲み込む。
自分自身、まさか本当に遺跡が埋まっているなんて思いもしなかったようだ。

「しかし、あの炎はなんだ?・・・青い・・・誰が灯したんだ・・・?」

三人はその建物の入り口に進む。

「・・・なるほど、強力な魔力を感じる、おそらくその炎も魔力でずっと保っているんだろうな。
・・・どうだ?ユウ、結界とか、封式は破れるのか?」

「・・・ちょっと自信ねえな・・・」

「そうか、俺もだ・・・幸い入り口の封式は破られている。
魔力で無理やり破ったというよりも、ちゃんとした手順でしっかりと『解除』されてる。
考えられるのは・・・」

「お願い・・・生きてて」

三人の頭に、嫌なことがよぎる。
間違いなく入り口の封式を破ったのはリュックの持ち主だろう。
タマジローがゆっくりと入り口を押す。

「「「・・・!!?」」」

「こっ!これは・・・アイリにも見せてやりたかったな・・・!」

「き、綺麗・・・」

「なんだよ!すっげえ明るい!!すっげえ広い!!」

三人の眼前には恐ろしいほどの広さと美しさ、そして明るさを持つ建物内が目に入る。

「・・・これは、迷ったらマズいかもしれねえな・・・直径数キロぐらいはあるんじゃねえのか?この建物・・・
作りは、神殿遺跡っぽいな・・・」

「で、でも、行き先は・・・」

「だな、取りあえずこの細くなっちまってる川を辿るしかねえよな。」

神殿遺跡の内部で川は急激に細くなっている。
美しい装飾の溝の中を通るように調節されている。
所々、それを跨ぐように小さい橋がこれまた美しい装飾でかかっていたりと芸が細かく、見る者を飽きさせない。

「川は右奥の通路へ続いているのか・・・」

「で、でも、壁の所で川が切れちゃってますよ!?」

「なるほど、見せたいところだけ川が顔を出すように、それ以外の場所では川は床下を流れるように設計されてるんだな・・・
これは、せせらぎの音をたどっていくしかないかもな。
タマジローさん、どうする?川を辿ってリュックの持ち主を探すのもいいが、骨が折れそうだぜ。
普通に奥に進んで行くって手もありそうだけど・・・」

「ふむ、そうだな、無理に川を辿っていってもリュックの持ち主は見つからない可能性が高い。
川が神殿底で色んな方向に流れていたら、音をたどっていくと行き止まりにたどり着く可能性もあるしな、取りあえず、まずは普通なら進んで行きそうな方へ足を向けるのがいいか。」

三人は神殿入り口正面の巨大な階段先にある巨大な扉を見上げる。
部屋も通路もたくさんあるが、どう見ても最奥方面にに続いているのはその扉である。